【エッセイ】2023年6月 ドルフィンスイム練習編

行きつけのダイビングショップからドルフィンスイムのお知らせがあった。ドルフィンスイムというのはシュノーケルでイルカを見るツアーのことである。場所は三宅島だった。

私は三宅島に行ったこともないこともあり、かなり興味を持った。また水族館じゃなく野生の親子いるかを見たいという願望があった。あまり親子イルカを水族館で見る機会もないので結構このツアーは貴重な体験ができるんじゃないかなと思った。私はインストラクターに参加の胸を報告した。後日タイピングに行った時にインストラクターとドルフィンスイムについて話し合った。

「ドルフィンスイム当日までに1分息を止められるようにしといて。」

「1分半て長くないですか。」

「だから練習しといて。」

「多分私1分もできないですよ。」

「1分は誰でもできるよ。」

今回はダイビングではなくシュノーケリングになるので、空気ボンベを背負わずにいるかを見る必要がある。そのため当日までに1分半息止めをする必要があった。

私は家に帰り部屋の中で息を止めてみた。苦しくなって息を吸いタイマーを見てみると1分を既に超えていた。意外とできるもんなんだな私は続けて3回連続で息を止めてみた。1回目より2回目、2回目より3回目の方が息を止める時間が短くなっていた。おそらくインターバルが短いせいだろう。私は大きく3回深呼吸したその後息を止めてみると1分10秒まで伸ばすことができた。割と1分半簡単なんじゃないだろうか。そう思い1週間続けてみると案の定2分まで止めることができた。これならドルフィンスイム余裕なんじゃないだろうか。私は油断していた。

ドルフィンスイム当日まであと3週間というところで私は気づいた。いくら空気中で息を止めていても意味がない。本当に水中で1分半息を止められるのだろうか。私は桶にお湯を貯めて顔をつけ息を止めてみた。1分するかしないかのところで苦しくなり顔を上げた。空気中で息を止めるのと水中で息を止めるのでは全然苦しさが違った。おそらく空気中で息を止めていても知らず知らずのうちに無意識に息を吸っていたのだろう。水中だと無意識にすることができなくなる。

私はもう一度桶に顔をつけ今度は自身の脈拍を測りながらどれくらい時間が経っているかを確認することにした。顔を水につけている状態だとどれだけ時間が経ってるのか分かりにくいためだ。目標は脈拍100回したくらいがいいかなと思っていた。しかし50から60回くらいのところで苦しくなって顔を上げてしまう。また数回息止め訓練をしているうちに脈拍がどんどん小さくなっていって何回だかよくわからなくなってしまうことがあった。

ドルフィンスイム1週間前に私はいつに行きシュノーケリングの練習をした。この時の平沢ビーチの透視度は約1m。正直海のコンディションが酷すぎた。一緒に組んで練習したダイバーが水に潜った瞬間、どこにいるかわからなくなってしまうレベルだった。海の中があり得ないほど濃いバスロマンに覆われているようだった。

今回の練習はダイバーがバディの周りを泳いで周回するというものだった。
イルカはくるくる回って泳ぐ動物に興味を持つらしい。そのためにこちらもくるくる泳いで興味を持ってもらう作戦になる。聞いたことないんだけど、この習性は本当だろうか? 何かインストラクターに嵌められてるような気もした。

先に私のバディが海へ潜り、私の周りをくるくる泳ぎ始めた。すぐそばを泳いでいるはずなのに、どこにいるかわからない。30秒ほどすると私の背後からバディの顔が現れた。急にでてくるので心臓がバクバクした。

次は私がシュノーケリングで海に潜る番だった。私は息を止め体を垂直にして海に沈む。浮力が頭のてっぺんにしかかからない状態になり僕に力を入れなくてもすっと体が海の中に入っていく。その瞬間、透明度1mの世界になる。かろうじてダイバーが突っ立ってる足を確認することができた。

私はその周りをくるくる泳ぎ始めた。息を止めながら泳ぐ。風呂で練習した時よりもよっぽど苦しい。私は30秒もしないうちに顔を上げた。本当に私は満足しているかを見ることができるんだろうか。




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