見出し画像

「トルネード竜巻」というバンドについての記憶(2020年10月)


はじめに

2018年に登録してから、定期的に使ってはいるものの、ある時期だけ集中的に書いては、また1年近く放置しているという状態を繰り返してたnoteですが、急に思い立って「トルネード竜巻」という2000年代の前半から中頃にかけて活動していた大好きなバンドについて、朧気な記憶を掘り起こしながらまとまった文章を書いてみることにします。

そのきっかけというのも、僕がtwitterで新しい刺激的な音楽についての情報筋として一方的に尊敬し、信頼している「よろすず」さんのツイートでSpotifyにトルネード竜巻のほぼ全音源があることを知り、翌日の休日の午後半日かけて、Spotifyで聴ける音源を時系列に聴き直した際にツイートしてたら、140文字では収まり切らずに割愛したことが沢山あった気がしたので、不慣れなnoteと1か月前に購入したばかりで、ほとんど長文を打った事のない新しいノートパソコンと格闘してみます。

現在インターネット上で検索できる情報について

とりあえず、書き始める前にネットで「トルネード竜巻」と検索して、得られる情報がどのくらいあるか調べてみたところ、下記の3つくらいしか見つけられませんでした。

①メンバーの曽我さんが作成されたと思われるバンド公式サイト

2009年2月7日のバンド活動休止のお知らせと、2009年12月7日にインディーズ時代の所属レーベルcolla discのコンピレーションアルバム発売記念ライブで、活動休止中ながら1回だけのライブをやります、というお知らせが最後の投稿になっている様です。インディーズ・メジャーを通じた正式なディスコグラフィーはここでしか見れないと思います。特に2006年にライブ会場で発売されていたコンピレーションアルバム「OK!"one night robot Kicks the rock" Theme Music Compilation」については、Wikipediaにも記載が無いので、このアルバムの内容については、ここでしか情報が無いと思われます。

②JVCビクター SPEEDSTAR RECORDSの公式サイトのバンドページ

ここではバンドの略歴、メンバープロフィールなどを読むことができます。公式写真や当時制作されたMVなどもリンクされてたら、アーカイブとしてはもっと嬉しいことですが、こういうnoteの記事やtwitterでの掘り起こし再評価がきっかけになって、高画質のMVや当時のライブ動画などが発掘されると嬉しいなと願って、この記事を書いております。

③Wikipediaのバンドページ

こればっかりは公式な情報では無いので、不正確な記載なども入り混じるかもしれませんが、初期の参加コンピレーションアルバム情報などは、ここでしか分からないものがあったし、時系列でまとまった情報を把握するには役立つので、参照・引用させてもらいます。

僕と「トルネード竜巻」との記憶(というか2000年代中頃の思い出)

ここは非常に個人的な記憶の思い出しになるので、純粋に楽曲やアルバムの情報だけ読みたい方は、先に飛ばして読んでください。

Wikiによれば、バンドは「1998年6月、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの音楽サークルにて結成された」とのことですが、僕が初めてトルネード竜巻のライブを観たのは、2004年2月の青山CAYで行われたライブイベントだったと思います。

「やすの」さんという方のはてなダイアリーに、おそらくこの夜の記事ではないかと思われるポストがありました。

この方も書いてらっしゃる様に、この日のメインアクトは菊地成孔さんの第二期SPANK HAPPYだったので、僕もSPANK HAPPYを目当てに行ったのですが、いくつか出演者の名前が記載されている中に、「トルネード竜巻」という変わった名前のバンドがあるのに気づき、まだ自宅にガラケー以外のネット環境が無い時期だったので、会社のパソコンで残業時間に「トルネード竜巻」という名前で検索し、YouTubeで「ナノマシン」のMVに辿りつきました。

みなさん若い!フタキさんはこの頃からあのギター使ってるんだ!などの発見もありましたが、名嘉さんの一回聴いたら忘れられない印象的な歌声と、ポップでキャッチーな楽曲とひと捻りあるアレンジ(キャリアの中ではめちゃくちゃシンプルな方でしょうが)は、初見でも惹きつけられるものがありました。もっと他の曲が聴いてみたくて、当時はJR御茶ノ水駅のお茶の水橋口の交差点近くにあったディスクユニオンで「Analogman fill in the blanks」のCDを購入して、青山CAYでのライブを楽しみに向かいました。

まだSNSやブログなどをやっていない時期なので、記憶の中でしか思い出せんませんが、メジャーデビューシングル「ブレイド」が出たばっかりのライブだったので、ブレイドと「ナノマシン」、Analogman fill in the blanksに入ってる「Water Tracks」「風向きアンブレラ」などは演奏されてた気がします。ライブで観ても、ボーカルの名嘉さんの歌声は伸びやかで、なにより名嘉さんが「めちゃくちゃかわいい」、これはその後ずっとこのバンドにのめりこんでいくにあたって大きな大きな要因だったと思います。クールな表情も、「ベストタイトトリコロール」や「one note robot」みたいなユニークで楽しい曲を歌う際のチャーミングな表情も全てがめちゃくちゃかわいかったのは間違いないです。

ライブでの名嘉さんの歌のうまさと、チャーミングなパフォーマンスが観れる貴重な動画。おそらく2004年くらいの時期だと思われる。「恋にことば」「ローカルメトロ」「ブレイド」を演奏。

その素晴らしい最初のライブを体験した後は、割と頻繁にトルネード竜巻のライブを観に行くようになったと思います。2004年当時の僕は、渋谷BALLというクラブで月1回やってた「Leaf」というダンスミュージックを軸にしながらもかなり振れ幅の広く深い音楽をかけるDJイベントにレギュラー参加させてもらっていて、オープン後の早めの時間にゆるめの音楽をかけていたり、磯部涼さんと古川耕さんがやっていたHP/JPというネットラジオ(?)やblast誌での連載「Homebrewer」をきっかけに当時の日本語ラップ現場に通ったりしていた時期なので、特定のバンドを追っかけてライブに行くのは第二期DCPRGかクラムボンくらいだったはず。2004年以降トルネード竜巻目当てに色んなライブハウスに通うことで、当時の魅力的なインディーズバンドを観れたのもよい経験でした。

※余談ですが、今「磯部涼」「古川耕」で検索しても、「HP/JP」や「Homebrewer's」の情報には全然辿りつけないですね。その後、それぞれの道でご活躍の両氏だけど、昔のインターネットの記憶は、誰かがテキストで残さないと、当時の参加していた人たちだけの記憶だけで消えていってしまうんだな、とこの記事を書きながら思いました。

メジャーデビューアルバム「アラートボックス」が出るあたりの2004年6月あたりはレコード会社のプロモーションもかなり力が入っていたと思われ、渋谷のタワーレコードの地下で、2004年5月に素晴らしいアルバム「ニュースタンダード」(今はSpotifyには無いですね)を出したニルギリスとツーマンリリースイベントをやってたのを覚えてます。プロモーション用として、「アラートボックス」のダイジェストCDがついたプロモキットも配布されていたはず。アラートボックスのアートワークと連動した透明な12cmCDに音源部分だけ印刷された凝ったデザインだったような。(現物は倉庫のどこかに眠っているはず...)

あとは音楽雑誌「MARQUEE」誌松本編集長による猛烈なトルネード竜巻プッシュは、当時のトルネード竜巻を知る一番有効なテキストになると思います。

こんなに詳細に過去のバックナンバーの見出しが見れることに驚くと共に、松本編集長の嗜好がディケイド毎に知れる貴重なサイトだな。トップを飾る坂道系の人達をのぞけば、今のMARQUEEって普通の本屋に並んでるのが奇跡の様なニッチかつアンダーグラウンドなアイドル見本市になってるから、逆にメジャーから超アングラまで網羅する姿勢は全くぶれてないのかも。

これによれば、トルネード竜巻が大きくページを割いて特集されたのは、2004年6月10日発売のvol.43、2004年8月10日発売のvol.44、2004年12月10日発売のvol.46、2005年4月10日発売のvol.48の4冊らしい。全部我が家の倉庫には眠っているはずなので、これを発掘すれば、更に詳しい記事が書けそうですが、これからトルネード竜巻について研究したい人達にはマストで入手すべき資料ですね。

前述のSPEEDSTAR公式サイトのプロフィールによれば「2005年4月より「楽しい音楽をもっと聴かせたい!」という想いから自主イベント「One night robot Kicks the rock」をスタートさせる。第1回目は4月7日に下北沢 club Queにてon button down、travelling pandaを迎えて行い、大盛況となった。
「未来に価値のある音楽を繋いでいけるイベント」というテーマのもと現在進行中!」ということなので、2005年4月以降約10回開催された定期イベント通称「OK!」が開催されている間は、毎月下北沢QUEでトル竜を観てたはずです。

このイベントは毎回メンバーと親交があるミュージシャンやバンドがゲストで出演してて、初回にゲスト出演してた「on button down」のアチコちゃんはトルネード竜巻のバックコーラスもやっていたことがある、とは後にアチコちゃんから聞きました。

他のゲストバンドもあんまりハッキリは記憶してないけど、後に名嘉さんと「ぱいなっぷるくらぶ」を結成する「常盤ゆう」さんのバンド「you&me together」や、名嘉さんと常盤さんと54-71のBingoさんが3人でシンセを演奏するユニット「うしろ髪シンセ隊」を観たのは覚えてるな。

古のインターネットの海からmixiの「うしろ髪シンセ隊」mixiコミュニティが発掘されてビックリしました。2000年代中頃の出来事を検索すると、個人ブログかmixiに辿りつく割合が多いけど、これらのサービスのいつまでもインターネット上に存在するわけではないから、大事な物は保管しとかなきゃ、って一時期mixiブログが消えるのでは?みたいな記事が出た時に思ったな。

定期イベントOK!では過去曲のリアレンジも頻発されていて、それもとても魅力的だったけど、毎月テーマを決めて、イベントのテーマ曲を曽我さんが書き下ろして発表されるのが恒例になっており、それをまとめたコンピレーションアルバムが「OK!"one night robot Kicks the rock" Theme Music Compilation」でした。ライブ会場限定発売だったかどうかは失念しましたが、そんなに沢山流通しているCDでは無いはずなので、コレクターの方はみつけたら確保しておくべきCDです。確か歌詞のあるボーカル曲は少なくて、名嘉さんはコーラスやスキャットで歌ってたんじゃないかな。

うしろ髪シンセ隊コミュニティのライブスケジュールを観ると、確かOK!には2回出演しているはずなので、2回目の出演となる2006年12月24日の下北沢QUEまではOK!は続いてたはずですね。個人的にも、2007年以降はフィールドワークの現場が変わってきた時期になり、当時より仲良くさせていただいてる先輩Riow Araiさんが出演されるライブやDJイベントだったり、横浜のラップコレクティブ「ZZ PRODUCTION」のみなさんとの交流が深く、毎週末ZZプロと一緒に色んな日本語ラップの現場を回ったり、未だに現役感バリバリでblock.fmのレギュラー番組でも活躍しているDJのカンタカヒコくんやHOMECUT望月くんが出演する東京エレクトロシーンの現場や、マルチネレコードやLBTレコード、逆襲レコードや鯖缶レコードなどのネットレーベル界隈のイベントなどで忙しく、トルネード竜巻のライブを細かく追った記憶は薄くなってしまいました。

トルネード竜巻のライブの記憶をもう少し深く思い出すと、やっぱり回数を多く観た下北沢Club QUEの印象が一番深く思い出されます。当時は、メンバーのみなさんはおろか、お客さんの知り合いがいるわけでも無かったので、ほとんどトル竜のライブは一人で観に行ってたな。いつも割と早めに入場していたので、お気に入りの位置は上手のギター フタキさんの前あたりでした。トル竜のライブは音楽性からして、最前でモッシュが起こるような激しい現場では無かったのですが、ど真ん中の最前最中でボーカルの名嘉さんの見上げ続けるというのは嬉しくも恥ずかしかったので、照れ隠しなのかフタキさんの前から斜め前に名嘉さんを見上げる、というのがちょうど良かったのです。とはいえ、ズラッと並べられたフタキさんのエフェクターケースを眺めるのは毎回ライブ前のお楽しみでもあり、CD音源では表現しきれないアンプリファイされた美しいギターの音色を堪能できたのはライブならではだと思うな。

ハッキリ思い出せるわけじゃなくても、名嘉さんの伸びやかな声の記憶やフタキさんのギターの残響が、個人的な体験としてのトルネード竜巻の記憶になるのは、偶然だけど後年になってから、その二人と知り合うきっかけがあり、その後も個人的に親しくさせてもらってる事もあり、個人的な思い出補正がかなりかかっていると思います。

二人と知り合うきっかけを作ってくれたのは、Riow Araiさんが複数の女性ボーカリストとコラボレーションした素晴らしいアルバム「R+NAAAA」に参加してたアチコさん(当時はon button down、その後は「石橋英子×アチコ」やART SCHOOLの木下さん戸高さんもメンバーだった「KAREN」、現在は戸高さんとのユニット「Ropes」で音楽活動を続けてる大好きなボーカリストであり、大切な友人のひとりでもあります)で、アチコちゃんが出演するライブを観にいった際に、お客さんとして来場してた名嘉さんやフタキさんに紹介してもらったのがはじまりでした。

Spotifyでは「石橋英子×アチコ」や「KAREN」の2枚のアルバムはまだ聴けないようですね。そのどれもが2000年代日本語ポップスのマスターピースだと思うので、トルネード竜巻がきっかけでこの記事を読んで下さった方が「石橋英子×アチコ」や「KAREN」「Ropes」、もちろんRiow Araiさんの「R+NAAAA」をはじめとした素晴らしいディスコグラフィーに辿りつくきっかけになってくれたら嬉しいと思います。

下北沢QUEでの定期ライブOK!というホームイベントにトルネード竜巻らしさが詰まってたとは思いますが、それ以外で思い出せるライブをあげるとセカンドアルバム「ふれるときこえ」のレコ発ワンマンライブがあった原宿アストロホールと、フジテレビ「FACTORY」出演時のライブかなと思います。

「osamuito」さんという方の2005年12月2日のウェブサイト日記に、このワンマンライブについてのポストがあったので、引用させていただきました。この方も書かれているように、セカンドアルバムの「おなじあなのムジアナ」にゲストボーカルで参加してるロマンポルシェ。の掟ポルシェさん、前述のアチコちゃんがゲスト参加している以外は、ひたすらトルネード竜巻の音世界に浸れる素晴らしいワンマンライブだったと思います。あと、この方も名嘉さんが「ただの美人」なだけではない、チャーミングなボーカリストだということに触れていてくれて嬉しいです。


フジテレビ「FACTORY」のライブは現地まで観覧しに行った記憶がありますが、何年か前までYouTubeにもビデオ起こしの動画があったので、それを貼れたらよかったのですが、現在は削除されてるみたいで残念。いつの日か公式なアーカイブとして観れるようになることを願います。「夜明けのDAWN」の不穏なアレンジをライブでノイズギター全開で演奏してて、他のバンド目当てのお客さんをドン引かせてたのをなんとなく覚えてます。

MCを務めてたムーンライダーズ鈴木慶一氏のコメント「エディットされたのを生でやるというのは,すごい画期的だと思いました.今っぽいと.CDと全然違うスタイルで演奏するというのも,またおもしろいと思います」というのはおそらく「夜明けのDAWN」を聴いての感想だと思われます。

名嘉さんとは、その後も「ぱいなっぷるくらぶ」の出演しているイベントや、お仕事で関わってるイベントに誘っていただいたり、普通のプライベートでご飯を食べにいったりさせてもらってますが、いつ会っても美しいだけじゃなく(本物の名嘉さんはマジでかわいいです)、人間的にも優しく、かついつも面白い事が大好きで、いつも笑ってる笑顔が素敵な女性だなと思っております。数年前に法政大学のイベントにゲスト参加した「ぱいぱっぷるくらぶ」のライブを撮影した動画がハードディスクのどこかに埋もれているはずなので、問題無ければどこかで観られるようにしたいなと思います。

「bwalker」さんという方のブログで、名嘉さんが参加した音源まとめというポストがあったので、こちらも引用させていただきます。


フタキさんもデザイナーとしてだけではなく、ギタリストとしての活動も継続されており、トルネード竜巻とも親交のあったバンド「メカネロ」のギタリストだった塚原さんがオーガナイズされてるイベントに、「Stefanie」でも活動されている小貫早智子さんと張替智広さんが参加されているバンドでギタリストとして演奏しているフタキさんのギターの音色を聴いた瞬間に「コレコレ」と下北沢QUEの最前エフェクターケース前の風景が思い出されたのは、僕だけの思い出です。「Stefanie」もボーカル・ギターの小貫早智子さんがめちゃくちゃ美しく好きな顔ランク上位の才女(ご本人様にもずーっと言ってるので公認状態)なので、2010年代の過小評価されている名盤として「Stefanie」のアルバムもレコメンさせてもらいます。

トルネード竜巻メンバーの参加音源としては、2006年のOK!でもMCで曽我さんが告知していた岡山のシンガーソングライター「こうもとあい」さんの2枚のアルバムがあります。こちらも引用できる音源や動画があまり無いので、CDJournalの記事を引用します。

ここまでで既に7500字書いてるので、もうディスコグラフィーの紹介はいいんじゃないかなという気持ちになってますし、楽曲分析や録音物としてのデータ分析が出来るわけでもないので、ほとんどtwitterのコピペになってしまいますが、最後に申し訳程度にSpotifyで聴けるトルネード竜巻の全音源と、ひとくちコメントを書いて終わります。

Spotifyで聴ける「トルネード竜巻」音源(2020年10月現在)

1.One night robot kicks the rock (2002年11月13日発売 colla disc)

正規のCD音源としては、2002年9月19日発売のコンピCD「喫茶ロック now その2」に「A GIRL KILLING FLOWERS」が収録されたのが初音源(ミニアルバムとバージョンが違うかどうかは未確認)の様ですが、トルネード竜巻の単体音源としては、初の作品となるミニアルバム。

SNOOZER世代的な90年代後半デビューのバンドがおおよそ出尽くした後の時期なので、ルックスやハイプな話題性以外の純粋な音楽性や楽曲で個性を出すというのは、かなり難しい00年代の初めだったでしょうが、そこを敢えて「いい曲、いい歌、いいアレンジといい演奏」で最後まで押し切ったところがトルネード竜巻の素晴らしさであり、10年20年経っても色褪せず新鮮に聴ける耐用年数の高い音源として結実してる魅力だと思います。

曽我さんの書く楽曲の構築度の高さとアレンジの練られ具合は、1曲目の「glass elevator」から既に仕上がっており、それを更に強くしているのが名嘉真祈子さんの唯一無二の歌声だと音源を再生してすぐに気づかされます。

僕がトル竜を初めて聴いた2曲目「ナノマシン」もめちゃくちゃキャッチーなコーラスのメロディーと、サビ後のコード展開や、ギターのノイズ成分多めな音色、エディット的に差し込まれるSEなどに「トル竜」ブランドの最初の雛形が詰まってる名曲。

その後、何度もリアレンジを繰り返され、主催イベントの冠にも使われるモチーフになる3曲目「one note robot」も初期バージョンながら、曽我さんのキーボードとフタキさんのギターのフレーズに、普通のロックバンドでは出てこない様なアイデアにあふれてて、名嘉さんのちょっと遊んだ歌い方も含めてトル竜がユーモア成分をたっぷり含んだバンドだと気づかせてくれる。

4曲目「lit,let,lost」は逆に今聴くと意外なくらいにストレートなエモ・ロックという感じがして、恥ずかしいくらい。後に名嘉さんがコーラスで参加してたSCHOOL FOOD PUNISHMENTなんかにこういう路線は遺伝子として継承されていったのでしょうか。続く5曲目「ホワイトフィールド」6曲目「a girl killing flowers」もまだ90年代の洋楽嗜好オルタナティブ・ロックの薫陶を受けたような印象だけど、「a girl killing flowers」の終わりかけ数十秒のアレンジにそこからはみ出して行こうとしてる意志表示を感じる。Lo-Fi(て書くと2020年の現在だとLo-Fi Hip Hopを連想されそうですが、90年代マナーとしてのLo-Fiです。)な小曲「シマウマライズド」で締めくくり。

2.Analogman fill in the blanks (2003年6月11日発売 colla disc)

個人的にも、ここからリアルタイムで聴いたので思い入れもひとしおですが、初っ端の1曲目「Water Tracks」の名嘉さんの「あのこ~ろ~は」という歌いだしで既に名曲なのが分かる良さ。ここから歌詞の部分でも耳に残るフレーズが多くなっていく気がする。サビの「いつも走り去る君は美しい」ってフレーズが喚起する映像感。サビ後のお決まりの様に歪むギターフレーズ、これぞトル竜。2コーラス目はストレートにサビに行かずに、一回ウィスパーで歌ってから、大サビに入る展開とか細かいアレンジも効きまくり。

2曲目「風向きアンブレラ」も度々ライブで聴いた大名曲。ガーッと音圧の上がるサビ終わりの、ふっと静かになるCメロ部分に曽我さんの楽曲の強さがある。「悲しい訳は聞かないでいて、でも少しだけは聞いて」の「少しだけは」って言い回しがとてもいいと思う。

エモ曲が2曲続いた後の、3曲目「ベストタイトトリコロール」でフッと息が抜けるのも楽しい。オノマトペな言葉遊びと、サビで転調・アレンジ変化が起こる仕掛けの多さも、ニューウェーブっぽいというか、ムーンライダーズやナゴムの時代から連綿と受け継がれる「楽しい日本語ポップス」の系譜っぽい。特にこの曲のチャーミングな歌い方の名嘉さんはチャクラ時代の小川美潮さんぽいなと連想したり。

一転4曲目の「I've been watchig distorted bass」はアンビエントなイントロから、音響的なポストロック風味のアレンジが気持ちいい。曽我さんのエレピの音とフレーズがいい。ここまで触れてこなかったけど、トルネード竜巻は音源もライブも、サポートベーシスト御供信弘さんが担当している。

https://ja-jp.facebook.com/nobuhiro.mitomo

僕は東京女子流のライブ(銀河劇場か、日比谷野音が忘れた)で御供信弘さんがベースを弾いてるのを観て「あっ、トル竜のベースの人だ!」と心でつぶやきました。

5曲目「ノーウェア・カーネリー」は再び王道トル竜節という感じのポップソング。6曲目「シグナル ディストリビューター」も2コーラス目のサビ後からのインストパートが、曽我さんと柿澤さんがやってた母体のインストバンドってこんな感じでセッションしてたのかなって連想させるアレンジ。7曲目の「When Doves Fly」もこのアルバムのエンディングという感じの、落ち着いたAメロ・Bメロから雪崩れ込むサビのメロディーとリフレインされる「次に泣くのは君だ」という印象的なフレーズの強さ。曲名は曽我さんが好きだというプリンスのもじりかな。この聴き終わると、また「Water Tracks」から聴き直したくなったら、もうトル竜沼の始まりです。さあ、スタートです。

3.ブレイド (2004年2月18日発売 SPEEDSTAR RECORDS)

まるで安室ちゃんの様な黒髪をなびかせたエキゾチックな名嘉さんがこれだけドーンとジャケットに出ているのも、このメジャーシングルだけかな。表題曲「ブレイド」はかなり分かりやすくシンプルな構成に削ぎ落したのでは、と思われるのはこの後に続くポップと実験を繰り返す歴史を知ってしまっているからかもしれない。作詞は名嘉さんと曽我さんの共作になってるけど、2コーラスサビ後の「泣くのは構わない 今更なんて思わないで ひとりじゃないからね」ってフレーズがとてもいい。

2曲目「サイクリング」はここでしか聴けない落ち着いたアレンジのポップソング。キャリアの中でも最もジャズっぽいアレンジかもしれない。そのジャジーな雰囲気を続けて、3曲目「One note robot」のリアレンジバージョンへ。この当時、自作曲をこんなに短いスパンでリアレンジしまくるバンド(特にポップバンドでは)珍しかった気がします。ブラジル音楽っぽいスキャットやコーラスアレンジは、ジョアン・ジルベルトやイヴァン・リンスが好きだという名嘉さんのアイデアなのかな。

4.恋にことば (2004年5月19日発売 SPEEDSTAR RECORDS)

当時のMARQUEE誌の曽我さんインタビューでもかなり時間をかけて解説されてた気がする完成までに紆余曲折を経たセカンドシングルの表題曲「恋にことば」。こうやって、16年後に聴くと、コンパクトな4分間に収まったポップソングとしての強度はかなり強く、キャリア屈指の名曲だと思います。Aメロの「きりがないでしょうがないでしょうじきに言って」とか韻を細かく踏んだフレーズの連発とかでリズムもつけて、サビでパーッとヌケの良い爽快感がある感じが良いです。これも名嘉・曽我共作詞ですが「恋にことば 胸に憂いを ほら花を土に還す光」ってフレーズが光ります。

なんとかMVが生き残ってるので、今の人にすぐ伝わるのはこういうシングル曲のMVが重要だと思うので、なんとか高画質で保管してもらえないですかね。MVはイントロに数秒ノイズパートが加わってますね。フタキさんの髭面が珍しい感じするのと、名嘉さんはよくこういう動きしてたな、ってのが伝わる動画の情報力。

2曲目「クロッシングテイルズ」も3曲目「Balaskana Island」も、ほとんどライブで聴いた記憶が無いから、けっこうレア曲なのかな。J-POPのこういうマキシ・シングルのc/w曲って、サブスクリプション化される時にスポイルされることも多そうだから、今回トル竜はほとんどの曲が漏れずにアップされて良かったなあと。後年プレイリストされることで、陽の目があたる埋もれた名曲もあるでしょうよ。

こんなにガッツリ書く予定なかったのに、もう11000字超え...このペースで最後まで書き終えるか自信無いけど、今日書かなかったら二度と書かない気もするので、頑張って書きます。

トルネード竜巻2

5.アラートボックス (2004年6月16日発売 SPEEDSTAR RECORDS)

記念すべきメジャーファーストアルバム。1曲目「低空飛行」の始まりが既に緊張感ある静のパートから、ノイジーな動のパートへの展開にスケールの大きなアレンジになっている感がある。2曲目「ブレイド」への繋がりとして、この1曲目が引き立つ。

一転、静かにうねるエモーションが溢れる3曲目「ラジオ」。曽我さんのエレピ、柿澤さんのタブラの静けさを、フタキさんのギターが切り裂く感じ。そして静かな曲ほど、名嘉さんの歌の素晴らしさが引き立つ。表情も含めて、本当に素晴らしいボーカリストなので、またこの曲をライブで歌う名嘉さんをガン見したい。ガン見ですよ。

ポップな4曲目「恋にことば」に続き、トル竜のアルバムではバランス的に絶対欲しくなる楽しいキッチュポップ「Mega Bite」。そして前半のハイライトになる超絶エモ曲「春風吹いて」。この曲は名嘉さんの作詞曲だけど、本当に歌詞が素晴らしい。悲しいサビ後のCメロの「これが最後の恋のお話 また出会うまでを描いた話 そこにちょっと期待を持たせて 巡る毎日は続いてく」ってフレーズがいいよなあ。御供さんの繰り返されるベースラインのフレーズまでも愛おしい。続く7曲目「アトム」も「春風吹いて」のエモい余韻が、心地良く繋がるコード感があって、ここまでがA面って感じの折り返し地点感がある。

柿澤さんのタブラが光る小曲「Wombats」を挟み、「春風吹いて」「アトム」のムードを繋ぐ適温エモ曲「クエリー」。こういうミディアムテンポの曲こそ、ライブが映えるバンドだったなあとは、美化しすぎな思い出語りかもしれません。「再会の扉は開かれず」とか諦観を感じる歌詞が意外と多いのも、今の若者にはフィットしやすいのかもしれないよな。

一転、下品にならずにポップに明るく展開する10曲目「ユウグレデスカ」。2コーラス目Aメロの名嘉さんがアイドルっぽくてめちゃくちゃかわいい。かわいい人は何をやらせてもかわいいからズルいよな。アレ、これもうレビューでもなんでもないな。でもこういう曲を歌う名嘉真祈子さん、本当にかわいかったんだよな~。スキャットが可愛いインスト「snowflake」は確かメディキュットのCM曲として使われてて、かなりの頻度でテレビから聞こえてたはず。立て続けの楽しく爽快感のあるファスト・ポップ・ロック「Road to Montreux」。これもライブが楽しい曲だったな。タイトルのMontreuxはモントルージャズフェスティバルかな。「どけちったコーヒー屋でもカフェ気分さ」。ちょっとアイロニー多めの言葉遊びが楽しい歌詞と、1分38秒から急にはじまるキング・クリムゾンばりのバカテク・プログレパート、からのスタジアム・ロックのサビ前みたいな展開、MARQUEE松本編集長はこれ聴いて表紙特集決めただろうなあ。

続けてテクニカルな変拍子ポップス「さあゆこう」も、この後に続くミニアルバム「Fairview」でリアレンジバージョンが再録されるくらいだから、バンドにとって重要なレパートリーだったんでしょう。ライブでも、重暗エモ曲(それも大好物なんだが)の後にこういう曲が来ると、いいアクセントになってたな。

ここからエンディングへ向かう雰囲気が強まる変拍子名曲「ローカルメトロ」。この記事を書く前にtwitterで「トルネード竜巻」で検索をかけた時、この曲の変拍子アレンジに触れてる人が多かった気がします。変拍子を、そう感じさせず、聴かせる力量は素晴らしいボーカリストとそれを支えるバンドの演奏力が伴ってこそ。当時20代半ばの4人がそれをこなしてたのは、本当に凄いな。そして最終曲「スタートです」。最後の曲なのにスタートとは、と思いきや「さあ、スタートです」「再スタートです」と歌われる歌詞は、やはり諦観がベースにあるけれども、それでも後ろを向いてない感じがトル竜ぽくていいなあ。

6.Fairview (2004年12月16日発売 SPEEDSTAR RECORDS)

素晴らしいファーストアルバムから半年のスパンでリリースされたミニアルバム。表題曲「Fairview」はライブでもよく聴いた印象はあるけど、今聴くとトル竜の色んな曲をコラージュして繋ぎ合わせたキメラみたいな印象もあるな。

むしろ2曲目「アンサー」や3曲目「ヴィンセント」の方が、トル竜らしい自然なポップソングという感じがする。「アンサー」はtwitterでこの曲がいちばん好きと書いてる人も居た。名嘉さんの書く歌詞がこの曲もいい。「僕はいつも答えを待って ひとり今日も道を急いで」「穏やかにゆけるかな 足取りはこのままで どこまでもゆけるだろう」って言い回しが名嘉さんぽい。

このミニアルバムはどうしても後半2曲のリアレンジと別バージョンに耳が集中してしまう。「恋にことば」のプリプロダクションアレンジ「夜明けのDAWN」。Aメロの不穏すぎるノイズパート、Bメロからサビに移行すると思いきや、再び不穏なAメロパートに戻る。これがよくあのキャッチーな展開のサビに展開したものだな。将来、トルネード竜巻再評価がブチあがりまくって、再始動・リマスターDELUX版が発売された時は、こんな感じの全曲デモとかプリプロ、別アレンジテイク集が聴きたいな、絶対。前述フジテレビのFACTORYでやった最後のパートの名嘉さんの「ドーン!」がめちゃくちゃかわいかったので、またやって欲しい。そればっかり。

さあゆこう」のリアレンジバージョンは御供さんのベースと、柿澤さんのリズムが際立つAメロから、曽我さんのキーボード、フタキさんのギターがパーッと展開するBメロ、それらが一斉合体して名嘉さんが歌い上げるサビが素晴らしい。

トルネード竜巻1

7.パークサイドは夢の中 (2005年5月21日 SPEEDSTAR RECORDS)

ここからトル竜ストーリーが最終章に入る入口だと思うと、もうなんか寂しいな。やはり諦観含みな歌詞がいい。最後に「けど会いたいよ君に 今すぐ会いたいよ君に なんて言えるかな 言えないな」で終わる最後が切ない。

この曲もMVが生き残ってました。歩きまわるパーマをかけた名嘉さんがかわいい。どんな髪型でもかわいい。

2曲目「あおいむらさきの光」。おそらくセカンドアルバム「ふれるときこえ」制作中に録音されたであろう素晴らしいポップソング。凡百のグループならば、これだけのキャッチーで美しい曲が書ければシングル表題曲なんだろうけれども、このクラスの名曲ですらc/wに甘んじるくらい創作のテンションが最高に高まってた時期なんではないでしょうか。ライブの印象は薄いけれど、本当にいい曲。今回Spotifyで繰り返し聴き直して、一番再発見したのはこの名曲でした。最高。最高で締めだしたら、もうこれはレビューではないね。3曲目「心になないろ」も静かないい曲。「終わりが訪れ、静かに忘れる」ってもう歌詞で歌っちゃてるよ。終わりの季節。いつでも切ない。

8.言葉のすきま (2005年8月24日発売 SPEEDSTAR RECORDS)

CDシングルとしては最後の作品。表題曲「言葉のすきま」。もう溢れる言葉の端々に終わりを感じさせる切ない歌詞とメロディー、悲鳴の様にも聴こえるギターの咽び。「切ないのと 痛いのの間を感じてね それが嬉しいな」、こんな歌詞、20代の半ばで書けるんだ、凄いなあ。

2曲目「すべてを胸の真ん中に」。これはもう終わりの先を覚悟して、先に進む人のマニフェスト。「ひとりきりでも行けないかな 穏やかに行けるはずないかな」「ひとりきりの強がりでも負けないかな 負けるはずないかな」。セカンドアルバム時期は、作曲・アレンジだけでもなく、作詞面でもぶっちぎりに素晴らしかったんだろうな。2コーラスサビ後の捻ったアレンジに、ファースト期の楽しかった思い出がふと頭をよぎるけれど、落ちサビで我に返り、またひとりきりで進んでゆくのです。ああ、もう終わっちゃう(ここまでで約15000字ですが)。

トルネード竜巻3

この時期のアーティスト写真を見ると、名嘉さんのパーマが落ちて、フタキさんのストレートヘアーがパーマになってる!OK!でいきなりパーマ頭になったフタキさん見た時はびっくりしたな。

9.ふれるときこえ (2005年10月21日発売 SPEEDSTAR RECORDS)

12曲55分に詰まった音と言葉。今回、全ての音源を何回もリピートして聴き直したけど、アルバムの完成度としては、やはり最終作のこれが最も素晴らしいんだろうな。

Overtureっぽい始まりでスタートする「バタフライ」は奇しくも「アラートボックス」の1曲目を連想させもするけれども、2曲目「言葉のすきま」でこれはまた別の物語なんだ、ということを気づかされる。

続く3曲目「サンデイ」も諦めきれない感情がエモーショナルに突っ走る。4曲目「君の家まで9キロメートル」で一度落ち着きを取り戻すも、かつてのアルバムならばここでわちゃわちゃ楽しい曲を挟んでシーンチェンジしてたのに、あれこの物語はまったく違う景色じゃん。大きなコードチェンジがなく、割とミニマルに展開するループっぽい曲だけど、「胸になんだって溜め込んで、いつか耐えられなくなるんでしょ」と歌われる不安感。「たとえなんてうまく言えないけど、リアルなんてのはこんなもんさ」。

5曲目「安心の海」で再び感情のボートが悲しみ方面へまっしぐら。「手を繋いで安心の海へ行こうよ」。一緒には行けないんだろうな、ってのが分かっちゃってる。6曲目「あなたのこと」で不穏なベースラインに搔き乱されて、あなたのことがどんどんわからなくなっていく。中間のアレンジパートの楽しさも、その後のバカデカなノイズギターですらも、もう不安な気持ちを煽るだけ。「愛のくちづけは終わり」。

7曲目の「おなじあなのムジアナ」で一度主役女優の名嘉さんは舞台を降り、幕間を繋ぐオペラは掟ポルシェによって歌われる。今だとキラキラメイクの掟ポルシェというよりも、ド・ロドロシテルのコープスペイントっぽい掟さんのイメージが浮かぶ。

8曲目「スタンドアップ」。そう、開き直ったオンナは強い。もう終わりに向かって立ち上がって進んでいる。「タイムアップかもね そのくらいなら私にできるわ」。9曲目「恐くはない」。もう走りだそうとすらしている。「今は先に進もう」「最悪なことを思い出して 言葉もいらない」。

からのここで10曲目「パークサイドは夢の中」かあ。シングルで聴いた時と、アルバムの流れで聴いた時のビターさ加減が全く違う。そりゃ、あんな諦観溢れまくった歌詞にもなっちゃうよな。

そしてこの物語はあと2曲で終わりを迎えます。11曲目「空想の音楽」。ノイズギターとともに歌われる「うるさいな あなた ことばをやめて」。間奏のピアノにすら心をぐちゃぐちゃにされてしまう。「うるさいな あなた 泣くのをやめて なくした 声が聴きとれるまで」。今までの安定した歌唱法を大きく変えてまで、この難しい曲を歌いきる名嘉さんのボーカリストとしての成長極まりぶり。ライブでのパフォーマンスも本当に凄かった。これだけシンプルに削ぎ落したアレンジでも成立するバンドの最終形態。

そしてエンディングロールのように穏やかな12曲目「サイン」。前の曲の鬼神の様な名嘉さんは過ぎ去り、優しく美しい名嘉さんが戻ってきたのかな。いや全て幻だったのかもしれない。「騒がしい街の大袈裟な風景に 戸惑う人なんて 此処には居ない 居ない」「僕は歌ったり 踊ったりはしない 雨を数えてじっとしてるだけ」「分かり合う人なんて 此処には来ない 来ない」「僕は泣いたり 笑ったりの果てに 夜を使い切りじっとしてるだけ なのに誰かと話したくていつも ひとりで出口を探し続けた」

なんだか音楽というよりも、小説や映画を観終えた後の感想みたいになっちゃったけど、何度も聴いたはずのアルバムから改めてこんな感情を受け止めてしまうなんて、本当に底のしれない恐ろしいアルバムだ。僕はきっと残りの人生でも、嬉しい時、というより悲しい時にきっとこのアルバムを聴き返すことでしょう。

10.ログ (2006年2月1日発売 Victor Entertainment)

当時も今も配信オンリーで発表されている、OK!コンピレーションアルバムを除けば、トルネード竜巻としての最後の楽曲。「ふれるときこえ」の物語の数年後の後日談の様にも聴こえる、穏やかで優しい曲。最後の繰り返しのコーラスを、最後に行ったOK!でも曽我さんのリードでみんなで歌ったような記憶もあるけど、もうそれすら自分の中で捏造された記憶なのかもしれない。そんな時に楽しかった記憶だけを思い出せる「ログ」が欲しいですね。「おあとがよろしいようで。」

おしまいに

最後に今回聴き直して、現時点での「マイ・ベスト・トルネード竜巻」を選曲したプレイリストを貼りつけます。ちょうどコンピレーションCD1枚くらいになることと、できるだけ時系列で並べることを意識して選曲しました。よくトルネード竜巻のライブを観ていた期間は、2004年から2006年の終わりくらいまでのようなので、実質2年間くらいではありますが、自分にとって生涯ベスト10に入るくらい鮮やかに記憶に残るライブと、これからの余生もずっと聴き続けられる音源を残してくれた素晴らしいバンドなので、なにかのきっかけでこの17000字を超える文章を読んでくださった方の人生にも、トルネード竜巻の楽曲が1曲でもあなたのお気に入りに加わることを願って、締めくくることにします。



毎日聴いた音楽についての感想を1日1枚ずつ書いています。日々の瑣末な雑事についてのメモもちょっと書いてます。