津田犬太郎

ぼくたちは言葉によって思考している。思考や言葉というのはどんどん流れ落ちていってしまうので、それを何とか記録しようと文字にする。それによって数百年前に生きた人間の文章をぼくたちは読むことができる。もう死んでしまった人間の言葉を読むときそれは一見生き生きとして見える。だが言葉たちは放たれたはしから死んでいたのだ。百万年前に死んだ星の光を観測するように。あらかじめの死が持続している。何も存在しないはずの宇宙空間を黒と認識するように。暗黒とは空を意味するならば、そこに空っぽのダンスだけが残る。


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