コント 幽霊屋敷

六畳一間のアパート、売れない芸人、上原武田。
男二人住まい。
そこに現れる幽霊。

上原 「折り入ってお願いがあります。」
武田 「毎晩毎晩、押し入れでシクシクシクシク泣かれているあなたに。」
幽霊 「・・・・・」
上原 「あのぉ・・」
幽霊 「・・・びっくりしてます。」
上原 「しゃべった。」
武田 「うんしゃべった。これは行ける!」
幽霊 「いやいやいやいや・・・そもそもですよ。私、死んでますし・・・」
上原 「やっぱり、幽霊だ。」
武田 「お陰様で、ここの家賃安くて助かってます。」
幽霊 「ああ、やっぱり事故物件になっちゃったんだぁ・・」
上原 「まぁ、それはねぇ・・押し入れで服毒自殺されたとか・・。」
幽霊 「はい。思いの他、発見が遅れまして・・まぁ、凄い事になってたみたいで・・」
武田 「シミが残っていて、さすがに気持ち悪く、この押し入れは使っておりません。」
上原 「幸い、僕たち荷物少ないんでそこまで影響はないのです。」
幽霊 「なんかすいません。」
武田 「で・・お願いできませんか?」
幽霊 「ですから、多分無理ですよ。」
上原 「無理ってなんでですか?」
幽霊 「少し考えたらわかると思いますが・・私、一部の人にしか見えません。」
武田 「幽霊だからね!」
幽霊 「そう明るく言われても・・・。」
上原 「我々は芸人を志し、15年前に状況してまいりました。鳴かず飛ばずの15年。」
武田 「気が付けば、40歳も見えてくる立派な中年に。」
幽霊 「だからってやけを起こしてはいけません。」
上原 「我々のネタは万人受けではありません。分かる人だけ分かれば良いと思っています。」
幽霊 「ああ・・・」
武田 「それにぷらす、見える人だけ見えればいいと思っています。」
幽霊 「考えてぇ・・。今でも売れていないのに、ハードル上げてどうする気?」
上原 「より高見へ!」

幽霊 「・・聞いてください。まず、私は幽霊だという事。それに、多分ですが私、地縛霊的なやつだから、ここから離れられないと思います。」
上原 「そこは大丈夫です。」
幽霊 「おい、人の話聞いているのか?」
武田 「トリオになってください。」
幽霊 「だから、動けないんだって。」
上原 「私の体をお使いください。」
幽霊 「入れと?」
武田 「はい。」
幽霊 「生理的にお断りします。」
上原 「おっと、武田氏、新しい断り文句が出ましたね。」
武田 「上原氏、君は生理的に女性に嫌われていますね。じゃぁ、私が・・・」
幽霊 「お前も嫌だ。」
上原 「気のせいでしょうか。彼女の言葉使いが雑に・・・」
武田 「ああ、これは打ち解けてきた証拠では・・・」
幽霊 「違います。なんか段々気持ち悪いなと感じ始めています。」
上原 「はははは幽霊に嫌悪を向けられるとは・・・」
幽霊 「元人間としても無理ですし、芸風も嫌いです。」
武田 「おやおやおや・・・」
上原 「私らのネタが受け入れられない側の元人間でしたか。」
幽霊 「あの、そう言うレベルじゃないと思います。ネタ合わせ良く押し入れから見てますけど、売れていない芸人にまれにそう言って、凄い人いますけど、あなた達のは完成度が低く、ネタが練りこまれていない。単純に浅く、見るに堪えません。」
武田 「・・・・ズバッと・・言いますね。」
上原 「むむむむ・・・武田氏・・この女何者でござるか?」
幽霊 「15年前に孤独に自殺したただの迷惑な女ですけど何か?」
武田 「そのおかげでここの家賃・・・」
幽霊 「聞いた聞いた。」
上原 「では、折り入ってお願いが・・我々と・・・」
幽霊 「戻ったね。凄い気持ち悪いね。」
武田 「上原氏、これは断られているね。」
上原 「武田氏・・この女、ちょっとづつ薄くなってきているね。」
幽霊 「もう、行きますね。15年も私は何を待っていたのだろう・・全てが嫌になりました。最期に、その考え方変えないと、一生変われせんからね。まずはネタを磨け。」
二人 「むむむむむ・・・」


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