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実走距離 コーナーリング時の損失

みなさんこんにちは、武田優駿です。
競馬場には必ずコーナーがある。
もちろん各競馬場ごとにコーナーの大きさは様々で、場合によっては内回り外回りと3.4コーナーが別に設定されている場合も。各馬このコーナーを通過する際、みな最短距離を通過するわけではありませんよね。

JRAにて直線だけで競馬が実施されるのは、現在のところ新潟競馬場で行われる「芝1000」のみ。これ以外のレースに関しては全て最低1か所のコーナーが存在するんですよね。

例えば人間が陸上競技で使う400mトラック。
このコース形態で400m走を行う場合、いわゆる「セパレートスタート」が原則です。つまり各1~8までの全てのコースが分離され、距離的にも完全に同一になるように各スタート位置が異なります。もちろんコーナーリング時の半径はコースにより変化しますが、根本的な距離差は0となります。

では競馬ではどうでしょうか。
御存知の通り競馬のスタート位置は中央地方問わず世界的にどこも共通、レース距離がどうであれ「横一線」となります。

なぜ横一線か。
これにはいろいろな理由が有りますが、まず単純に「作りが簡易でないと発走後に発馬機の移動が容易に出来ない」という物理的な問題があります。
1ターン競馬ならともかく、コースを1周以上するレースとなると発走直後に発馬機をどかすという作業が有ります。この時に複雑な作りだったりすると故障の可能性や移動のための難易度が問題になります。

次に挙げられるのが「波乱性」でしょうか。
ある意味こちらの方が意味合いやニーズとしては高いのではと私は感じています。
この「波乱」をランダムに引き起こすにはスタート時に出現する「偶然」だったり「枠順での運」が挙げられると思います。
不確定要素がある程度無いと誰しもがレースに対し興味を抱かなくなるのも事実ですよね。
また逆を言えばもし競馬でも段々のセパレートコースが採用されたらどうなるでしょうか。現実問題存在しないのでやってみないと分からない点も多いかとは思いますが、波乱度としては相当落ちるのは間違いないかと思います。

例えば東京の芝2000m。
このコースの場合、スタート直後すぐに左コーナーが存在します。

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これはどう考えても内側有利なのは間違い。
しかしこの東京2000mのスタート位置であれば、先ほどのセパレートスタートは発馬機の位置的には「固定」も可能かと思います。A.B.Cコースとあるので若干は位置調整があったにせよ、ここであれば発走後に移動させる必要性はないですからね!この東京芝2000mでは過去に無数にスタート直後の「審議」があり、これは年に何度あるのかと思うほど外から内に切れ込む馬が審議対象になります。
これでもこのコースを存続させる理由も含め、ある程度主催者も「波乱度」は求めているからこそ存続しているとも取れます。


さてでは本題に入りますが、この競馬で存在する各コーナーでの距離損失。
これどのくらいあると思いますか?
JRAの競馬場だけで10場有りますが、この各競馬場のコーナーのザックリとした大きさを調べてみました。各競馬場コーナーの大きさも様々、そしてきれいに半円のコーナーRではありませんのでおおよそのイメージとして見て頂ければと思います。

場名

例えば札幌競馬場の場合1.2コーナーと3.4コーナーはほぼ同一。そして中山・阪神と言った変則コースに関しては、コーナーとして異径になっています。ですのでこれはあくまでも「おおよその目安位」と言う意味で見て頂ければと思いますが、JRA10場の芝コースの平均Rは148.7Rとなります。
つまり約150Rの範囲に関しては「内側・外側」の通過位置によって、実走距離は大きく異なる事になります。

問題はこの「実走距離の違い」です。
平均のコーナー半径が「150R」ですので、150Rを基準に考えてみましょう。
仮にコースを一週強するレース(例えば中山1800m芝)は、一週ぐるっと楕円にコースを周回することになりますね。
これを頭に置いた上で下記の表を見てください。

距離ロス

コーナー半径が150Rの場合、その直径は300m。
終始最内の1コースを通過した場合、距離ロスは最小限の「0」となります。
そして今一頭分外のコースを2コースとし、これは1コースより馬一頭分(仮に1メーターとする)外を通過するため確実に「距離ロス」をする訳です。

ではその距離ロスの具体的な長さとはどれほどなのか。
1コースの半径が150、なので直径である300×3.14=942m。
2コースの半径が151、なので直径である302×3.14=948m。
このように計算して行くと、当たり前ですがとどんどん実走距離としては長くなっていく。そして最終的に1コースと4コースの差は「19メートル」に。

俗に1馬身を2.4mと計算されているので「約8馬身の差」に。
これは極めて極端な例でしょうが、終始最内・終始大外にて競馬をした場合は8馬身もの差が出てしまうのです。
またコースレーンが1つ違った場合でも6m~7mほどの差がつくためこれだけでも「約3馬身差」の有利不利が実数距離としては発生します。

なんとなく各自の頭の中で「内は有利だけど、その一つ外を回った場合はどれくらいの距離ロスになるのだろう」という思いがあったと思います。
概算ですがこうして改めて計算してみると、これだけの差があるという事。
もちろん概算のため的確な距離ロスのデータとは行きませんが、少なからずとも1レーン外を回ったらばしれだけで3馬身も不利になるという事ですね。

ただ1ターン競馬の場合はこの距離ロスに関してはザックリ半分。コースを一周しない分そこまでの距離ロスにはなりませんね。
ただ基本コンセプトが1ターンに近い「東京芝2000m」などは3つのコーナーが存在する感じになるでしょうか。
それとか外回りコース。例えば中山外回り芝1200・1600、阪神外回り芝1600などは「おむすび型」での変則コーナーのため、コーナー自体の距離を1/1とか1/2ではなく3/4の考え方も有りだと感じます。

さてコーナーリング時の実走距離、これだけ具体的に数字で出してみると本当にリアルですよね。さすがに1コースと4コースを終始その位置で競馬する可能性は少ないものの、計算値からすると8馬身差。さすがにこれだけの差があると同一条件下でレースをした場合、外を回っていたのでは勝つまでには至らない。


1周で1レーン違いで3馬身差。

どれだけインを通過してレース中の体力消耗を押さえるか。
基本はこれに尽きるのは間違いない事。
しかし展開のアヤや勝負所でどうしてもそこで脚を使うしかない場面もあります。スタートが良くなく、追い上げて3.4コーナーを外々へ。
こういった競馬をしたにもかかわらず上位に来た馬となるれば、能力値としてはかなり高い事になります。
その逆に終始内々を通過してきて上位になった場合、こちらはその評価としていえるのは「楽な競馬をした」という事になります。


今回なぜこのテーマでnoteを書きたかったか。
それはこの距離ロスの具体的な数値を頭に置いてのレース回顧なのです。

なんとなくこれくらいの距離ロスかな・・・
もちろんこれだけでも方向性は間違っていない。
しかし精度としてはかなり厳しい。
時計理論もそこは同じ。
可能な限りは制度を上げるべきだと思うんです。

何気ない想いから今回はコーナーリング時の実走距離を調べてみたのですが、自分もいい勉強になったなと実感しています。
何馬身不利なのか等の具体的な数値を知ると、どれくらいの距離を損したかなどイメージが湧きやすく、そしてなんと言っても印象に残り易い。

パドックで馬を見て「この馬大きいなぁ」と感じ、実際にその場体重を見て更に「えー、本来はこれしか体重なかったんだ!」と思うのと一緒ですよね。簡易であってもコーナーリング時の距離ロスを「デジタルな情報」へ変化することが出来れば、その差(数値)を見ると色々な過去の例などと比較も出来て更に印象深くなると感じます。

私が競馬予想をしていて常に行きつく所。
可能な限りこれを「頭の中で処理する」ことなのです。
もちろんこれには限界があるので、覚えられることや計算能力的な物は、パソコン上での計算やJRA-VANなどを利用する事もある。

ただ一番大切なのは感性で、それを一瞬見ただけでどれだけの有利・不利があったのかを見抜けるようになりたいですね。そうしないとどれだけ時間があっても足りないくらい無限の労力が必要になってしまいます。

これをレースVTRとラップをチラっと見ただけで理解できるようになるまでには、こうした地道な作業をひたすら行い、自分の脳に植え付けていくしか無いんだと思います。
そのはじめの一歩として、そしていつか瞬時に頭の中でデジタル化できるための指標として、このコーナーリング時の実走距離について調べてみました。

コーナーでの距離ロス。
自分が思っていた以上に大きかったです。
また一歩だけ、進化できたのかもしれません。

それではまた。

サラリーマン馬券師の武田優駿。 ラップ分析を基本としてハイレベルのレースで好走した馬を皆さんに伝える事を宿命と考えています。人気薄馬の激走を見抜く事に全身全霊で挑戦しています。