今、あなたの声が………
「巨人達と共闘する日が来るなんてな………」
俺は眼下を眺めて呟いた。巨人の軍勢に自軍が混ざり合う景色は存外悪くないものであった。亡くした戦友を想えば、その感想が正しいのかは疑問ではあったが、今はその幸せを噛み締める。
「しかし、本当にこんな作戦上手くいくのかねぇ…?」
まだ生き残る友の声を聞き、後ろを向く。旗艦の中では今もなお作戦の中核を担う作業の真っ最中だった。だが、作戦は始まった。始まってしまったのだ。
「わかんねぇな。けど、やるしかない」
「それが軍人ってもんだもんなぁ」
「ぼやくなよ。信じようぜ、我らの勝利の女神をさ」
「女神じゃなくて、歌姫だろ?」
モニターを小突くと、警報が鳴った。
機影を確認。ミサイル斉射─────轟音。爆炎の向こうに飛び込み、煙を飛び出すと同時、変形して銃を撃つ。撃墜。撃墜。撃墜。変形して離脱………しそこねた仲間が敵機の放ったミサイルによって落とされた。
「アンディーーー!!」
友が叫ぶ。が、感傷に浸る暇などない。フォーメーションを変えて別の敵へ向かう。すれ違う巨人族の男達の恐れを知らぬ姿が、これまでは恐ろしかったというのに、今は…
「なんて頼もしい奴らだ…」
緑色した巨人の機体達が、女巨人の機体を次々と撃墜しては撃墜される。それでも突撃は止まらない。ならばこちらも負けてはいられない。
残ったミサイルを斉射し、巨人を援護する。顔は見えないが、お互いの気持ちが通じた気がした。これまで争い、殺しあってきたあの巨人達と………
「これが、歌の力なんてな………」
「なんだって!?」
「なんでもない!2時の方向!来る!」
変形し、敵のミサイルを銃で撃ち落としてやる。戦場は広く、敵機は相変わらず数えきれない。それでも、文化が繋いだ仲間がいれば、やれる気がした。
幾度かの補給、つどの出撃、失っていく戦友───
激しさを増す戦場に、自分の疲弊と死期を感じたその時。
「……………出来たのか」
歌がゆっくりと戦場に響き始めた。
今、君の声が聞こえる。我らの勝利の歌姫の声が─────