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「アビリーンに行きたくない!」グループ決定の不思議な心理学

私たちは日々、無数の決定を下しています。これらの決定の多くは個人的なものですが、時にはグループとしての意思決定が求められる場面もあります。こうした状況での決定は、個々人の選択を超えた、複雑なダイナミクスを伴います。この複雑さを端的に示す事例が、アビリーンのパラドックスです。

アビリーンのパラドックスは、グループのメンバー全員が本心では望んでいない決定に至る、という不思議な現象を指します。これは、管理学者ジェリー・B・ハーヴェイによって1974年に提唱された概念で、彼自身の経験が由来となっています。テキサス州アビリーンへの家族旅行が、誰一人として本当は望んでいなかったにも関わらず決行された、というそのエピソードは、グループダイナミクスの研究において重要な教訓を私たちに与えています。

このパラドックスが発生する原因は、コミュニケーションの不足、誤解、そしてグループの調和を重んじるあまりに起こる誤った合意探求にあります。個人が自らの真の願いや意見をグループ内で表現することを躊躇し、他人が望むと推測する選択に同意してしまうのです。

この現象から学ぶべき最も重要な教訓は、グループ内でのオープンなコミュニケーションの重要性です。各メンバーが自身の意見や感情を率直に共有することで、真に望まれる決定へと導かれる可能性が高まります。また、リーダーには、このような開かれたコミュニケーションを促進し、サポートする役割があります。

アビリーンのパラドックスはまた、個人としての自己認識と自己表現の重要性も教えてくれます。自分の意見や欲望を正直に表現する勇気が、最終的にはより満足のいく結果をもたらすことに繋がるのです。

結局のところ、アビリーンへの旅は、ただの旅行話以上の意味を持ちます。それは、私たちがどのようにして自分たちの選択を形作り、共有された現実を構築していくかについての深い洞察を提供してくれるのです。真実を共有することの価値、そしてそれが私たちをどこに導くかについて、常に意識を持ち続けることが大切です。

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