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【TEALABO channel_23】できることはやる。新しい挑戦が導く次世代へ託せる未来。 -大隣岳茶生産組合 大隣尚平さん-

鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

第24回目は、『大隣岳茶生産組合』(以下:組合)の大隣尚平さんにお話をお伺いしました。

わかったフリをしない

知覧町大隣集落で生まれ育った尚平さん。

ご実家は組合に所属する形で茶農家として従事されていました。

高校卒業後は鹿児島県立農業大学校(以下:農大)へ進学し、お茶の勉強に励まれていたそうです。

「元々は高校を卒業したら、そのまま就農するつもりだったんです。でも、母から“農大で少しでも学んできなさい”と背中を押してもらい、進学することにしました。」

「農大の仲間とはよく連絡を取り合っていて、毎年集まって交流もしています。同じ知覧にも同期がいるので心強いです。」

農大を卒業後、大隣へ戻り、組合に所属し就農することになります。

大隣岳茶生産組合 大隣尚平さん

就農後、尚平さんの中で葛藤があったといいます。

「“農大卒業”という肩書きがあるので、先輩たちはそれなりに期待してくれていたんです。でも、実践経験がほとんどなかったので、できないことばかりでした。“そんなこともできないんだね”って言われたこともあって…。」

「変なプライドが邪魔して、わからないことをそのままにして失敗することもありました。それで“わかったフリをするな!”と怒られました。それからはわからないことがあれば、小さなことでも先輩たちに聞くようにしています。」

自園にて

できることは、やってみる

"できることは、やってみる。これは就農当初から意識していることです。"

そのように胸を張って答える尚平さん。

茶業青年部での活動や出品茶の製造等、様々なことにチャレンジし、自身の視野を広げていきました。

今では茶業振興会の理事や知覧茶業青年部の副会長を担っています。

「農大時代の仲間からは“卒業してから性格が変わったね”と言われます(笑)。昔から大人しいタイプでしたが、今はそれなりに思ったことを言えるようになったと思います。」

理事のような役割を担うことで、大分意識も変わりました。組合や会の皆さんのことをよく考えるようになったので、視野も広がったかなと。」

昨年、蒸しの作業の際、これまでとは違った手法を試みたそうです。

「先輩たちに相談せずに勝手にやってしまったんですけど(笑)、結果いい色に仕上がって好評でした。」

最近は、組織や地域を越えた交流や意見交換をする機会も増えてきたともいいます。

「組織が違えば、体系や栽培方法、考え方も違います。案外近い場所で茶業に従事していても話す機会がない方はたくさんいらっしゃいます。そういう方とお話することで、相談相手できたようで気持ちが楽になります。」

託すこと、託されること

組合の理事でもあるので、最近は若手への育成にも力を入れているといいます。その中で意識されているのは今の時代背景を踏まえたものでした。

「僕が組合に入った頃は、若手のうちは任されない業務も多かったですが、今は早い段階で若手にも任せるようにしています。これから茶業の担い手は減る一方です。だから、少しでも早く成長してもらわないと組合として、工場として回らなくなってしまいます。だから、難しい機械の作業も1年目の子にもやってもらっています。もちろん、僕が近くで見守りながら、できないことがあればカバーしています。」

組合の工場にて

ここ数年は、組合として設備投資に力を入れているそうです。結果、それが功を奏し、お茶の品質が上がり、高い評価に繋がっていると嬉しそうに教えてくれました。

「設備を変えた時は不安が大きかったです。でも、茶商さんから“一体何があったんですか?”と言われるくらい、以前と比べて評価が高くなったんです。」

「結果が出れば、組合としての雰囲気も大分変わりました。やる気が出て、休憩せずに作業することもあります(笑)。」

「コロナの影響で苦しい時期が続いた時に、敢えて投資する選択をした先輩たちの判断はすごいと思います。ある意味、賭けみたいなものなので。先輩たちが未来を見据えて、次の世代の僕らに託してくださっている覚悟も伝わってきました。」

組合の工場にて

好循環になるためのチャレンジを

”知覧は鹿児島市や他の地域からも近いので立地としても有利なエリアです。だからこそ良い方向に循環させるためのチャレンジをしていきたい。”

今後の展望について尋ねるとそのように力強く答えられました。

同業者や茶商と一緒にお茶の勉強会を再開(コロナ渦になってから活動停止中)したいとのこと。

「特に作り手ではない第三者の茶商さんの意見は貴重です。茶商さんを通してお客様の声をいただくこともあります。」

「うちの組合はGAP認証(※)を受けているのですが、同じように認証を受けている知覧茶の作り手とも話す機会もあります。その機会があるかないかだけでも入る情報が違うんです。」

※農業における食品安全・環境保全・労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の認証制度のこと。


組合の工場にて

時代背景とは裏腹に尚平さんには明るい未来を見据えながら、続けて今後の展望についてもお話をしてくれました。

「設備投資もですが、僕らの代で人材育成もさらにしっかりできたらと考えています。10年後は世代交代もあり、おそらく担い手が半分くらいになっている可能性があります。時代に応じたやり方で厳しい時代を乗り越えていきたいです。やれることはやる。そんなマインドで挑戦を続け、次の世代に安心して託せる土壌を作っていきたいです。

組合の事務所前にて

時代的に多くの課題を抱えることも多い中
“できることはやる”精神で
静かに、少しずつ、前へ進んでいる尚平さんの表情からは
5年先、10年先を見据えた何かを感じました。

先輩たちから託されたものを受け取り、次の世代へ。

地道に積み上げてきた先の未来には
尚平さんがおっしゃる良い循環が様々な形で生まれているのではないか。

今回の取材をとして、見えない未来が少し垣間見れた気がしました。

【プロフィール】
大隣尚平(おどなりしょうへい)
1989年南九州市知覧町生まれ。高校を卒業後、鹿児島県立農業大学校へ進学。お茶の基礎知識や農業経営について学ぶ。卒業後、家業を継ぎ就農。現在は大隣岳茶生産組合の理事として組合の運営、荒茶製造に携わる。

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