下北沢のお姉さん
「一緒に暮らそうよ」
「はい?」
ある日の休日
横浜に行った
働いてる古着屋さんの横浜店を覗いた
たまにヘルプにくる店長がいたので挨拶をしなかった
あんまり買いたいものも無かったので
近くのハンバーグ屋さんで美味しいハンバーグを食べて帰った
帰り道マッチングアプリを開くと29歳のお姉さんからメッセージが来ていた
"いま下北のミュージックバーで呑んでるから来ない?"
"いきます^ ^!"
と返信した
すると
"私遊びじゃないから"
ときていた
ちょっとだけ怖いなと思った
"はい!笑"
って返した
"恋愛まで発展させような"
ときていた
自分の好きなタイプはインキャ巨乳の文学的なすけべなお姉さんだが
苦手なタイプは
"恋愛まで発展させような"
って約束してくるような人だ
今回たまたま苦手なタイプにあてはまってしまったのでなるべく早い目に帰ろうと思った
約束されたバーに着く
古民家のような見た目のそのバーの前に着き、連絡をした
"2階に上がってきて"
ときていたので、階段をあがった
するとそこは
大きなテーブルが2つ、各6人ずつくらい着席していて
店内はオルタナを中心にロックが流れていた
それを口ずさんだりしたり、リズムを取ったり
楽しく談笑していたり
それが着席で行われていたので、クラブより小さいクラブのようなところに感じた
「こっちー!はい!これ私の友達の友達!」
「はじめまして!お願いします!」
目の前には4,50代くらいの男女、右隣には某TV局でディレクターをしているらしい2つ上のお兄さん、
左にはそのお姉さん
見た目は3つ上くらいの細いお姉さんで
ジャスト目のシングルレザーを着ていて一重瞼だったのでかなりパンクみを感じた
「何呑む?」
「あ、僕お酒弱いのでなるべく弱いのでんでお願いします!」
「じゃあこれ、ホットコーンハイね」
はじめて飲んだが全然飲みやすく素直に美味しかった
「音楽とか何聴くの?」
「割とこういうロックも好きですけど、sirupとか好きです!あとはゆらゆら帝国、星野源、Nurbarichとか、ちょっとブラックミュージック的なノリですけど」
「ほーん、Vaundyとか好きそう!」
「まぁほどほどにききます!」
こんなシンプルな雑談をしながらも
かなり距離は近いなと感じた
「写真で見るよりかっこいいじゃん」
「あ、本当ですか」
「うん、てかLINEみた?」
「LINEですか?見てないです」
「見て」
手元の携帯を確認する
そしてお姉さんとのトーク画面を開くと一件未読メッセージがあった
"うちここから2分なんだけど泊まっていって"
流石にシコい展開ではあったが
その時は正直に全然乗り気になれなかった
お姉さんもあまりタイプでは無かったし
そして耳元で
「来るっしょ?」
と言われたらので
反射的に
「はい笑」
と言った
「はい笑」じゃねぇよ俺
その返事以降、テーブルの下でめちゃくちゃ太ももをサワサワされ続けた
お姉さんがトイレに行くと、反対側にいた某テレビ局のディレクターのお兄さんに
「僕あの人とは今日マッチングアプリで知り合ったばっかりなんですよ」
と打ち明けた
するとお兄さんは
「あ、そうなの?だからなんか会話噛み合ってないんだ」
「そうなんですよ、それでさっきLINE見たら家誘われてて、僕正直乗り気じゃないんですけど、どうすべきですかね?」
と相談した
「まぁここに来るような女にロクな人いないからね、めんどくさくなるだろうし終電で帰るのがアンパイじゃない?」
と100点の答えが返ってきた
「そうですよね、ありがとうございます…上手いことやります」
と返事をした
するとお姉さんが帰ってきて
「じゃあこの子と私チェックで!」
と言い2人でお店を出ることになった
「あの…」
と言いだすと
「こっち!」
と腕を捕まれ、雨の中その家にいざなわれる形になった
すると本当に2分にアパートがあった
もう半分諦めてお邪魔することになった
「お邪魔します〜」
「これ着替えて」
といい、パジャマのようなものを渡された
言われるがまま着替えると2人でベッドに入った
僕は兎に角天井をみて、普通の会話に普通の事だけを返した
「みんないい人だったっしょ?」
「そうでしたね、楽しかったです」
「でしょ!また行こうよ!」
「はい」
「一緒に暮らそうよ」
「はい?」
「ここだったら住めるっしょ」
「やぁ、僕高校の同級生とのルームシェアでさえ不向きだったので」
「高校の同級生と一緒にしないで」
あ、スイッチ入ったなこれと思った
するとすごい身体を寄せてきた
「SMどっち?」
と聞かれた
「Mです」
と正直に言うと
「私もMなんだよね」
と返ってきた
ん?
Mなん?
いやいや、その見た目Sやろ
下北沢の駅徒歩5分のアパート1階
8畳ほどの部屋のベッドに男女のMが2人
2人ともMなの俯瞰でみたらヤバすぎる
でもこの人と粘膜を交わせばとてつもなく面倒な事になりそうな事は、第六感が全て見通していた
だから頑なに話を逸らし続けた
そうしてお姉さんは眠りについた
粘った
始発まで携帯をいじり
熱が出たと適当に言い、部屋を出た
朝方の下北沢はやけに肌寒く、先程のベッドが暖かかった事に気付かされた
その後すぐお姉さんからメッセージが来ていたが何も返さなかった
悪い人では無かったが、関わらない方がいい人でもあったに違いない
家に帰り思いっきり深呼吸をして眠りにつき、いつもの生活に戻った
今日も今日とて
1k6畳の大好きなこの部屋で
一人暮らしをしている
下北沢の夜は怖い
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