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腕を振るう

夢の中、全身で抵抗した。相手はキョトンとした顔で、今までだってこうやってきたのに!と言った。目が覚めたその瞬間から無力感と共にあった。少しだけ、取り返しがつかないことをしたくなって、手渡すために購入したココナツクッキーを勝手に食べ切った。甘さが胃の中滞って、酷く疲れた。

NOって言える?私は昔言えなかった。やめてが通じない家で育った。
健気だから伝え方も工夫していた、何をされると嫌なのか、どんな気持ちになるのか、理路整然と話せる子供になった。でも状況は変わらなくて、中学に入る頃にはほとんど諦めてた。次に選んだのは叫んだり、壁を蹴ったり、邪魔するなって突き飛ばしたり、暴力的な拒絶の表明。選んだというより、もう毎日コケにされ続けてイライラして暴れるしかなかった。でも状況は何も変わらなかった。だから家を出た。
もし、もしね、私が男性だったら。筋肉質な身体をしていたら。あと10 センチでも背が高かったら。暴力で親を威圧することができていたかもしれない。その快楽が思考のベースになってしまっていたかもしれない。怖い。怖いけど、その快楽を知っている人がこの世にはたくさんいるってことの方が怖い。

昔、誰も来ていない教室で勉強していたら、突然サイレンが鳴った。北朝鮮が発射した弾道ミサイルが私達の街の上を通過した音だった。世界は何も変わらなかった。ミサイルが頭上を飛び交うのが当たり前のまま、日々は続いている。
政治家が死んでも、戦争が始まっても、何も変わらなかった。毎日じわじわと生活が難しくなるだけ。めちゃくちゃ高い飯、めちゃくちゃ少ない飯、めちゃくちゃ高くて少ない飯。飯屋は悪くない。誰も助けてくれない。壊れかけのこの身体で生き延びることができるのなら私はなんだって良い。夜をスキップすることができるのなら、一生睡眠薬を飲み続けることになったって構わない。でも眠ったまま穏やかに、2度と目を覚まさないことがもし可能なら、早急にそうしたい。怖くて、悲しくて、心細くて、この世界から早く離脱したい。そんな感じ。日々。

最悪の世代でありたい。これ以上酷い未来を見せたくない。


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