英語で学ぶ欧米のLGBTQ事情(23)
転向療法を行う施設名が「神の約束」(God's Promise)であるとか、同性愛なんてものはなく、道を踏み外して堕落するという罪を犯しただけなのだから、それと闘わねばならないといった価値観が描かれているとかいう点からも、実はアメリカにおいて、転向療法は(一部の不寛容な)キリスト教と結びついていることがわかります。まさにministryなんですよ。
2-1 Initially bewildered by her new surroundings, Cameron takes comfort in the company of a pair of fellow misfits: Jane (Sasha Lane), who stashes pot in her prosthetic leg; and Adam (Forrest Goodluck), a Lakota boy who identifies as “Winkte”, or “two-spirit” (“he’s the Native American David Bowie”). 2-2 Unlike Cameron, neither Jane nor Adam come from evangelical backgrounds, nor do they have any belief in the “pray-the-gay-away” mantras to which they are forcibly subjected. 2-3 Jane was raised on a commune, but has been sent here at the behest of her zealous new stepfather. 2-4 As for the drolly deadpan Adam, he is the son of an aspiring politician who is attempting to solve a PR problem. 2-5 As always, it’s the kids who end up paying the price of perverse parental whims.
2-6 Like the mismatched members of The Breakfast Club, these are youngsters thrown together by uncaring authority, who find a common bond in their outcast status. 2-7 It’s one of the lovely ironies of Akhavan’s bittersweet film that Cameron finds true friendship in a place dedicated to stamping it out, and there’s laugh-out-loud joy to be found in the acid-tongued interaction between these soulmates. 2-8 Similarly, a scene in which 4 Non Blondes’ What’s Up blares from a transistor radio reminds us that the group singalong is an uplifting, life-affirming coming-of-age staple, from Stand by Me to Almost Famous and American Honey, the last of which first made a star of Sasha Lane.
2-9 The most affecting moments, however, are those in which even the resilient Cameron falls prey to self-doubt, ground down by the psychobabble bullying of the “de-gaying” process. 2-10 Flashbacks to her relationship with Coley (with whom she watched movies like Desert Hearts on VHS) show tenderness, passion and love. 2-11 Yet it’s the shock of discovery that haunts Cameron, oddly evoking the fragmentary, guilty nightmares of Midnight Cowboy. 2-12 “What if this really is my only chance, and I’m blowing it?” she pleads in a moment of crisis. “I’m tired of feeling disgusted with myself.” 2-13 Jane’s response is typically astute: “Maybe you’re supposed to feel disgusted when you’re a teenager.”
(https://www.theguardian.com/film/2018/sep/09/desiree-akhavan-miseducation-of-cameron-post-review)
[最後の2パラグラフは省略]
2-1
initially【副】当初, 最初;[文修飾]初めのうちは
bewilder【他動】〈事・物が〉〈人〉を当惑させる《◆通例受身》
surrounding【名】[~s;複数扱い](人・物を取り巻く一時期の)環境, 周囲の状況, まわりにあるもの
take [find] comfort in … …に慰め[安らぎ, 楽しみ]を見いだす
company【名】(…と)同席すること, 一緒にいること;付き合い, 交際
misfit【名】(集団に)うまく順応しない人, はみ出し者
stash【他動】〈金・貴重品など〉を〔秘密の場所に〕隠す, しまっておく(hoard)(+away)〔in〕.
pot【名】マリファナ
prosthetic【形】補綴の, 人工的補充物の
> a prosthetic arm [leg, limb] 義手[義足, 義肢]
Lakota【名】ラコタ族
Winkte ウィンクテ《出生時は男性だが、女性のようになりたがっている人を指すラコタ語に由来する言葉》
two-spirit ツースピリット, 2つの魂(を持つ人)《男女以外の性別として生きる人々を指すアメリカ先住民の伝統的な言葉》
Native Americanアメリカ先住民(の), ネイティブアメリカン(の)
David Bowie デヴィッド・ボウイ(1947-2016)《英国のロック歌手・作詞作曲家》
2-2
background【名】(人の)背景, 生い立ち;経歴
away【副】[離脱・消失・除去]離れたところへ→なくなって;完全になくなるまで
mantra【名】マントラ→(繰り返し唱える)呪文;(繰り返される)お題目, 文句, スローガン
forcibly【副】強制的に, 力ずくで
2-3
commune【名】(仕事・金銭・宿泊など素朴な共同を旨とする)共同集落, ヒッピーの生活共同体《しばしば世間一般とは異なる生活形態を実践する》
at the behest of … …の命(めい)により
zealous【形】熱心な, 熱狂的な, ひたむきな《◆特に職業・政治・宗教活動に関する事柄に用いる》
2-4
drolly【副】滑稽なほど < droll【形】(予想も付かないような普通ではない形で)面白い
deadpan【形】(冗談などを言うのに)無表情な, まじめくさった(顔の)
aspiring【形】向上心[野心]に燃える, 意欲あふれる
PR (public relations)【名】(企業などの)宣伝[広報]活動;(企業・組織の)一般社会[一般の人々]との(良好な)関係, 世間の評判
2-5
end up doing 最終的に[ついには, 結局]…することになる
pay the price 〔…の〕代償[犠牲]を払う〔of〕
perverse【形】〈人・言動などが〉(故意に)道理に反する;人の意に逆らう, ひねくれた, つむじ曲がりの
whim【名】〔…したい〕気まぐれ, 思いつき〔to do〕
2-6
mismatched【形】不釣り合いな
throw together【他動】〈人々〉を偶然に会わせる, 仲間にさせる《◆通例受身》
uncaring 【形】思いやりのない, 冷淡な;気にかけない(callous)
authority【名】(地位などによる)権威, 権力
bond【名】(愛情などの)結び付き, きずな, 結束
> common bond 共通のつながり, 共通点
outcast【形】追放[疎外]された, 仲間外れの, のけ者の
2-7
irony【名】皮肉→皮肉な事態, 予期に反する結末
stamp out【他動】〈火〉を踏み消す→〈社会の害悪など〉を根絶する(eliminate)
laugh out loud 大声を出して笑う
acid-tongued【形】舌鋒鋭い, 辛辣な, 毒舌の
interaction【名】〔…の間の〕相互作用, 言葉のやりとり, (人の)ふれ合い〔between〕
soulmate【名】心の友, 気(性)の合う人《特に異性;妻・夫・恋人など;前世・来世でのつながりを信じ合っている人》.
2-8
4 Non Blondes 4ノン・ブロンズ《What's Upのヒットなどで知られるロックバンド》
blare【自動】〈サイレン・ラジオなどが〉(耳障りに)鳴り響く
transistor radio トランジスタラジオ
singalong みんなで歌うこと
uplifting【形】人の気分を高揚させる, (人を)幸せな気分にする, 楽しくさせる, 幸せにする
life-affirming【形】人生を肯定している, 人生に前向きになれる, 生きる勇気を与える
staple【名】必需食料品→主要素, 主要部分;お決まりのもの, 定番
2-9
affecting【形】(涙の出るほど)人の心を打つ;痛ましい, 哀れな(upsetting)
resilient【形】弾力性のある→(不運・病気などから)立ち直り[回復]の早い
fall prey to … 〈犯罪者など〉の犠牲になる→〈悪い感情など〉にとらわれる, 毒される
ground down < grind down【他動】ひいて粉にする→〈人〉の自信・希望・精力を徐々に失わせる, 〈人〉を苦しめる, 打ち負かす(oppress)
psychobabble【名】心理学用語をやたらに用いる話し方;意味もなく使われる心理学用語
bullying【名】(弱い者)いじめ
de-gay【他動】…を脱ゲイ化する, …からゲイ的要素を消し去る
2-10
flashback【名】(映画・劇などの)回想[フラッシュバック]シーン→過去の記憶のフラッシュバック, 突然鮮明に思い出すこと
Desert Hearts 『ビビアンの旅立ち』《1985年製作のアメリカ合衆国の映画で, 日本では劇場未公開;2人の女性が最後に結ばれるレズビアン映画》
tenderness【名】優しさ, 愛情のこもっていること
2-11
haunt【他動】〈考え・つらい記憶などが〉〈人〉を(絶えず)苦しめる, 悩ます
oddly【副】奇妙に, 妙に(strangely)
evoke【他動】〈記憶・強い感情など〉を呼び起こす
fragmentary【形】破片[断片]の→断片的な, ばらばらの, 切れぎれの
guilty【形】罪の意識がある, やましい
nightmare【名】悪夢→悪夢のような経験[状況]
Midnight Cowboy 『真夜中のカーボーイ』《1969年公開のアメリカ映画;大都会の孤独に流される2人の男性の生き様を描いたアメリカン・ニューシネマの代表作》
2-12
What if …? [問いかけ・不安](主に好ましくないことが)…したらどうなるだろうか, …したらどうするの《◆What will [would] happen if ...? の省略形》
blow【他動】〈好機・計画など〉を(へまをして)台なしにする
plead【他動】[直接話法で]「…」と嘆願する
2-13
typically【副】典型的に→(特定の人について)例によって
astute【形】機敏な, 明敏な, 鋭い, 目先の利く;抜け目のない, ずるい
disgusted【形】嫌悪感[反感]を覚えて, むかついて, うんざりして
【和訳】2-1初めは自分を取り巻く新たな環境に当惑したキャメロンだが、同じ施設内で集団生活にうまく適応できない2人組と一緒にいることに安らぎを覚える。マリファナを義足の中に隠しているジェーン(サッシャ・レイン)と、ラコタ族の少年アダム(フォレスト・グッドラック)である。アダムは「ウィンクテ」、あるいは「ツースピリット」だと自認している(「彼はアメリカ先住民のデヴィッド・ボウイなのだ」)。2-2キャメロンとは異なり、ジェーンもアダムも福音主義を信仰する家庭で育ったわけではないし、「祈りによって同性愛者をなくそう」という繰り返し強制的に聞かされるスローガンもまったく信じてはいない。2-3ジェーンはヒッピーの生活共同体で育てられたが、ここに送り込まれたのは、熱狂的信仰をもつ新しい継父がそう命じたからだ。2-4ありえないほど真面目くさった話し方をするアダムは、企業と社会の関係に関する問題を解決しようとしている意欲的な政治家の息子である。2-5よくあることだが、まさしく子どもこそが、道理をわきまえない親の気まぐれの代償を払うはめになるのだ。
2-6『ブレックファスト・クラブ』の不釣り合いなメンバー同様に、これらの若者は思いやりのない権威によって偶然出会ったのだが、寄る辺ない身であるという共通の接点を見つける。2-7アカヴァンのつらさと心地よさの相まった映画で、すてきで皮肉な巡り合わせの1つになっているのは、キャメロンが真の友情を見出す場所が、それを撲滅することに専念している場所であることだ。しかも、大声で笑う喜びが見られるのが、このような心の通じ合う仲間同士の毒舌のやり取りなのである。2-8同様に、ある場面で4ノン・ブロンズの「ワッツ・アップ」がトランジスタラジオから鳴り響くのだが、これによって私たちが思い出すのは、みんなで集まって一緒に歌うことが人を幸せな気分にして生きる力を与えてくれる、大人になるために欠かせない定番行為であり、『スタンド・バイ・ミー』から『あの頃ペニー・レインと』、『アメリカン・ハニー』に至るまで登場するということだ。これらのうち最後に挙げた映画で、サッシャ・レインは初めて主役を務めたのである。
2-9しかしながら、最も強く心を動かされる場面は、立ち直りの早いはずのキャメロンが自己不信に陥るところである。「脱ゲイ化」過程というわけのわからない心理学用語を多用したいじめに打ちのめされてしまうのだ。2-10コーリーとの親密な関係(キャメロンは一緒にVHSビデオで『ビビアンの旅立ち』などの[レズビアン]映画を見た)がフラッシュバックするところで示されているのは、優しさ、情熱、愛情である。2-11けれども、まさにそれに気付くことでショックを受け、キャメロンは絶えず苦しむことになる。奇妙にもそこで呼び起こされるのは、『真夜中のカーボーイ』からの、罪の意識を感じる断片的な悪夢のような場面である。2-12「これが本当に私にとっては唯一のチャンスで、自分でそれをふいにしかけているとしたらどうしよう」と彼女は危機に瀕している時に訴える。2-13ジェーンの回答は例によってそつのないものだ。「ひょっとすると、ティーンエイジャーの時って、嫌気がさすようになっているのかもね」
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