英語で学ぶ欧米のLGBTQ事情(22)

なかなか難しい文が多い。この映画は日本ではなぜか劇場公開されませんでした。

The Miseducation of Cameron Post review―poignant, witty, defiant
By Mark Kermode (The Guardian, Sun 9 Sep 2018)

Chloë Grace Moretz stars in Desiree Akhavan’s bittersweet drama tracking the doubts and defiance of a teenager sent to a gay conversion facility in 90s Montana
1-1 The Iranian-American film-maker Desiree Akhavan, creator of the admirably spiky 2014 romcom Appropriate Behaviour, cites John Hughes, Lynne Ramsay and Todd Haynes as key influences on her latest film―a neat summation of the warring elements behind this engagingly subversive coming-of-age tale. 1-2 Adapted from Emily M Danforth’s 2012 novel by Akhavan and co-writer/producer Cecilia Frugiuele, it documents the abusive “gay conversion” therapies inflicted upon teenagers by zealous Christians. 1-3 Yet while the subject matter may be dark (self-hatred and self-harm are confronted head-on), Akhavan plays it with poignant wit, zest and a lusty sense of defiance, combining the bonding charms of a brat-pack crowd-pleaser with the psychological terrors of a prom-night horror flick.
1-4 In early 90s Montana, orphaned teen Cameron Post (Chloë Grace Moretz) is discovered making out with her best friend, Coley (Quinn Shephard), in the back seat of a car. 1-5 In an attempt to exorcise her “SSA” (“same-sex attraction”), Cameron is sent by her evangelical aunt to God’s Promise―a rural Christian retreat where “gender-confused” youngsters are told that “there’s no such thing as homosexuality, just the struggle with sin”.
1-6 Under the Nurse Ratched-like care of Dr Lydia Marsh (Jennifer Ehle) and her “ex-gay” brother, Reverend Rick (John Gallagher Jr), Cameron is forced to itemise and confront the hidden traumas that have supposedly led her astray. 1-7 “Your attractions are symptoms of a larger problem,” says Rick, whose passive-aggressive therapies include getting “disciples” to draw an iceberg on which they must list their formative “corrupting” experiences. 1-8 As for Lydia, she is compared to “the mom from Carrie… like having your own Disney villain, but this one doesn’t let you jerk off”.

miseducation【名】間違った[欠陥のある, 有害な]教育
poignant【形】強く胸を刺す, 痛切な, 胸にこたえる, 切々とした;〈皮肉などが〉鋭い, 痛烈な, 辛辣な
witty【形】〈人・言葉が〉機知のある, 気のきいた
defiant【形】〈口調・視線・人などが〉挑戦的な, 反抗的な, けんか腰の
star【自動】〈俳優などが〉〔映画・芝居などで〕主演する〔in〕
bittersweet【形】〈経験・思い出などが〉ほろ苦い, 苦くて甘い;〈話などが〉つらくとも心地よい
track【他動】〈人[物]の発達・過程など〉を[…ということかを]たどる, …を追跡調査[記録]する
defiance【名】〔権力・敵対者などへの〕(公然たる)抵抗, 反抗, 挑戦[反抗]的態度〔of〕
1-1
creator【名】〔…の〕創造[創作, 創設]者, 創案[考案]者〔of〕
admirably【副】称賛に値する[感心する]ほど, 見事に, あっぱれに
spiky【形】先[先端]のとがった→怒りっぽい, とげとげしい
romcom【名】ロムコム, 恋愛コメディー(映画, テレビ番組)
cite【他動】〈物・事〉を〔理由・例などとして〕挙げる, 引き合いに出す〔as〕
neat【形】きちんとした→〈仕事など〉手際のいい, 巧妙な, 器用な, 達者な
summation【名】[しばしば a ~]合計したもの→総括;要約
warring【形】交戦中の, 相争っている→対立する, 両立しない
engagingly【副】魅力的に, 感じよく;きわめて, とても < engaging【形】人を引きつける, 魅力のある
subversive【形】(政府・体制を)転覆させる;破壊活動をする(seditious);〔…を〕かき乱す〔of〕
coming-of-age【名】成人になること, 成熟
1-2
document【他動】…を詳細に記録する
abusive【形】〈態度・関係などが〉暴力的な, 虐待を伴う
inflict【他動】〈打撃・損害・苦痛・やっかいな人など〉を〔人・場所などに〕押しつける, 負わせる, もたらす;〈税金など〉を課す(force)〔on, upon〕
zealous【形】熱心な, 熱狂的な(ardent, fervent)
1-3
subject matter【名】(本・絵画・研究・論文などで)扱われている問題, 内容, 主題
dark【形】陰うつな;希望の持てない;〈気持ち・考えなどが〉暗い
self-hatred【名】自己嫌悪
self-harm【名】自虐, 自傷行為《リストカットなど》
confront【他動】〈困難など〉に立ち向かう(face up to)
head-on【副】真正面から, 直接的に, 妥協せずに
play it ... (希望の結果を得るため)…のようにふるまう
zest【名】強い興味, 意欲, 熱意→興趣, 魅力, 面白み
lusty【形】力強い, 頑健な, 元気な(vigorous, powerful)
bond【名】(愛情などの)きずな, 結束→【他動】(きずななどで)〈人〉を結びつける
> bonding【形】人と人を結びつけるような
charm【名】(人・場所などの)魅力, 人を引きつける力
brat-pack【名】(成功して)注目を集めている若い有名人連中, (態度のよくない)新進の連中《映画俳優・作家など》
crowd-pleaser【名】大勢の人を楽しませるもの→大衆受けのする人[行為, 演技, 物]
prom night 卒業記念パーティーの夜《卒業前の高校生が正装して男女のカップルでダンスパーティーに参加する》
flick【名】(一編の)映画(movie, film)
1-4
orphan【名】孤児→【他動】〈子供〉を孤児にする《◆通例受身》
make out【自動】(性的な意味で)キスしたり触ったりする, 〔人と〕いちゃつく〔with〕
1-5
in an attempt to do …しようとして
exorcise【他動】(祈祷・まじないによって)〈悪霊など〉を祓う;〈悪い考え・記憶など〉を追い払う
SSA (Same-Sex Attraction) 同性に魅力を感じること
evangelical【形】〈教会などが〉福音派の, 福音主義の
rural【形】(よい意味で)田舎の, 田園の, 農村の
retreat【名】[しばしば複合語で](静かな)休養の場所, 保養所;療養所;(アルコール依存症患者などの)更生施設, 保護収容所
1-6
under the care of … 〈人〉の世話[治療]を受けている
Nurse Ratched ラチェッド婦長《◆映画「カッコーの巣の上で」に登場する精神科病院で絶対権力を誇る婦長》
ex-gay【形】元ゲイの, 脱ゲイした
brother【名】(兄弟のように親しい)親友, 同僚, 仲間, 同期生;同胞
reverend【名】[the R~;聖職者などへの呼びかけ・尊称で]敬愛する;…(尊)師
itemise (itemize)【他動】…を箇条書き[項目リスト]にする
hidden【形】隠れた, 見つけにくい;わかりにくい, 気がつきにくい, 目に見えない
trauma【名】心的外傷, トラウマ;(心的外傷などによる)精神的ショック, 心の傷
supposedly【副】一般に考えられているところでは(allegedly)
lead … astray 〈人〉を邪道に導く;〈人〉を惑わす, だます
symptom【名】〔病気の〕症状, 症候〔of〕→(良くない事態の)徴候, 兆し, しるし(sign)
passive-aggressive【形】受動攻撃性の、パッシブアグレッシブな《怒りを直接的には表現せず、緘黙や義務のサボタージュ, あるいは抑うつを呈して相手を困らせるなど、意識的無意識的にかかわらず後ろに引くことで他者に反抗する》
disciple【名】〔宗教的大指導者などの〕弟子, 門人, 門弟→信奉者(follower)〔of〕
iceberg【名】氷山 > the tip of the [an] iceberg 氷山の一角; (大きな問題の)ほんの一部
formative【形】〈時期などが〉(人格)形成の;〈影響・効果などが〉発達上の
corrupt【他動】〈人〉を堕落させる, 腐敗させる
1-8
compare【他動】[SVO1 to O2]〈人・ことわざなどが〉O1〈人・物・事〉をO2〈人・物・事〉にたとえる, なぞらえる→O1〈人・物・事〉をO2〈人・物・事〉と同等にみなす, 同じとみる
villain【名】(劇・小説・映画などの)悪役, かたき役(⇔hero)
jerk off【自動】〈男性が〉自慰をする《◆jerk oneself off ともいう》

【和訳】映画批評『ミスエデュケーション』―痛烈で、ウイットに富み、挑戦的だ
クロエ・グレース・モレッツが主演するのは、デジレー・アカヴァンのつらさと心地よさの相まったドラマであり、90年代のモンタナ州で同性愛転向施設へと送り込まれたティーンエイジャーが抱いた疑念と反抗の軌跡をたどるものである。
1-1イラン系アメリカ人の映画製作者デジレー・アカヴァンは、称賛に値するほどトゲトゲしい2014年の恋愛コメディー『ふさわしい行動』の生みの親であるが、ジョン・ヒューズ、リン・ラムジー、トッド・ヘインズを、自分の最新映画に重要な影響を与えた人物として挙げている。この映画は、大人になることをめぐる反体制的な魅力をもつこの物語の、背後にある相容れない諸要素を手際よくまとめたものである。1-2これは、エミリー・M・ダンフォースが2012年に出版した小説を、アカヴァンと共同脚本執筆者・共同製作者のセシリア・フルギュエーレが映画化したものだが、詳細に記録されているのは虐待を伴う「転向療法」であり、それをティーンエイジャーに行っているのが熱狂的なキリスト教徒たちなのである。1-3だがそれでも、扱われている問題は暗いもの(自己嫌悪や自傷行為といった問題を真正面から突き付けられている)かもしれないが、アカヴァンは痛烈なウイット、熱狂的信仰、強い反抗心などの要素を用いて演出しており、大衆受けして成功した連中のもつ人と人の架け橋となるような魅力を、プロムの夜に何かが起こるホラー映画の心理的恐怖と結び付けている。
1-4 90年代初頭のモンタナ州で、孤児となったティーンエイジャーのキャメロン・ポスト(クロエ・グレース・モレッツ)は、車の後部座席で親友のコーリー(クイン・シェパード)といちゃいちゃしているところを見つかる。1-5彼女の「SSA(同性に魅かれる気持ち)」を取り除こうと、福音主義を信仰する彼女の叔母がキャメロンを送り込んだのが、「神の約束」という、キリスト教会が運営している田舎の更生施設だった。そこで「性の混乱を抱えた」若者たちが言われるのは、「同性愛なんてものはない。あるのは罪との闘いだけなんだ」ということだ。
1-6リディア・マーシュ医師(ジェニファー・イーリー)と「脱ゲイ」した同僚のリック師(ジョン・ギャラガー・Jr)による、看護師長ラチェッドのような世話を受けながら、キャメロンはそれまで自覚していなかった心の傷を箇条書きにして、それと向き合うことを強制される。そうした心の傷によって彼女が道を踏みはずしたのだと考えられているのだ。1-7「君の[同性に]魅かれた経験は、もっと大きな問題のいくつかの現れにすぎないんだ」とリックは言うが、彼の行う受動的攻撃療法の内容は、「弟子」が氷山の絵を描かされるというもので、人格形成における自分を「堕落させた」経験を、その上に列挙して書かなければならないのだ。
1-8リディアはと言うと、[狂信的なキリスト教徒である]『キャリー』の母親に似ていると言えるが、ディズニー作品の悪役が自分専用にいるような感じである。だが、この人はマスターベーションをすることすら許してくれないのだ。

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