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【Mother-004】言葉ひとつ心ひとつ〜耐えて、耐えて、敢えて、前へ〜※歌詞付き


言葉ひとつで 全てを失くした
笑い合った仲間や 護るべき人を

本音で生きるのが とても恐くて
口を噤むことで 償おうとしていた

一人でいるのに 理由が欲しくて
読みもしない本を カバンに詰めた
 

(【Song-000】言葉ひとつ心ひとつ)


 『金持ち父さん貧乏父さん』という本がある。その本を読んだ時、うちは「貧乏父さん人持ち母さん」だなと思った。

 ”人持ち母さん”から生まれた僕は母に似つかず、良く独りになる。きっかけは僕のひとつの言動。例えば高校の時に友人から無視をされた経緯はこうだ。

 友人A君からD君まで4人、その中でD君は時間やお金にルーズで、僕はD君のだらしなさに相当イライラしていた。今思えばそこまでイライラする必要はなかったのだが。まあ若気の至りということで。

 そして僕は、そのグループの中でもとりわけ仲の良かったA君にこう言ったらしい。

「Dのやつ面白くないから無視しようぜ」

と。それを聞いたA君は逆に、4人まとめて僕を無視しようと、その時決めた。”らしい”と言ったのは、記憶が曖昧でいつ、なぜそう言ったのかさえ覚えていなかったからだ。無視をされ始めて、当時まったく理由が思い当たらなかった僕に、B君がその理由を電話で話してくれた。

 僕は自分が怖くなった。自分の”口”を憎んだ。そしてあまり話さなくなった。いや話せなくなったのかもしれない。また誰かに嫌われたらどうしようと恐れて。

 【Mother-001】にも書いたが、もし16歳のこの時、母にあの”生命の言葉”を言ってもらえなかったら、僕はきっと、この4人のせいにして、学校を辞めていたかもしれない。辞めてはいなかったとしても、おそらく自分の心の問題として受け入れることは出来なかったと思う。そのまま過ごしてたら今頃、僕はどういう人生を歩んでいただろうと考えると、少しぞっとする。

 周りの人をただ恨み、謝ることも出来ず、自分を大切に思ってくれる人をただ妬み、感謝も出来ず、今頃独りで生きていたかもしれない。

 母は鋭い人だった。相手と接しながら相手の心をじっと見つめて、まるでCTスキャンのように、心の中にある、錆びついて動かなくなっている”歪んだギア”を探し出す。そしてそこへちょこっと”油”をさす。またその”油”が凄くしみるんだ。

 あの時、母がビール瓶をドンッと置いて、僕に言った一言はこうである。

「いいか、ひろぼ、おまえを小さい時から見てきて、ずっと心配だったことがひとつあるんだよ、それはね」

「おまえはプライドが高くて人を見下す”心”がある。その”心”から生意気な言葉や態度が生まれ、人はそれを面白くないと感じておまえをいじめるんだ。」

時間がゆっくり流れる。

「全部おまえが悪いんだ。相手じゃないんだよ」

僕の口が震えていた。

 母はずっと、僕の歪んだギアが気になっていたんだと思う。そしていつ、そのギアを直すか、ずっと考えていたんだと思う。一歩間違えれば大きく人生が変わってしまうその歯車を。

 もちろん母は、”いじめはいじめる側が100%悪い”という考え方の人だ。そして下手をすればあの母の一言で、僕は母に心を閉ざしていたかもしれない。しかし母は恐れず、それ以上に僕を信じて、時を待ち、あの言葉をくれたんだと思う。そう、全ては僕のために。

 ともあれ、僕は母の”ドロップキック”で、16の夏、巣立つことになった。後日A君に電話をかけ、謝罪した。A君はすぐに許してくれた。しかし、その後仲良し5人グループは復活することはなかった。

 僕は、母から指摘されたとおりのプライドの高い人間で、その当時、学校で孤立していた時、クラスに話し相手はなく、読むはずもない本をカバンに入れて登校していた。

「俺は勉強が忙しくて人と話す時間がないのだ」

と言わんばかりに。本の大半はコンピューター関係の資格の本だった。お陰で国家資格をはじめ、たくさん資格を取ることが出来て、学び自分を高める喜びを知った。そして何よりもコンピューターに詳しくなり、現在のMacでの音源制作にも活かされている。

 当時は、人と話すのが怖くなってた。人と繋がるのも。でもそのおかげで”本”と対話が、いっぱい出来た。3年間ずっと考えることが出来た。

友達ってなんだろう。

言葉ってなんだろう。

自分ってなんだろう。

 言葉は怖い。一言で人を救うことも出来るし、殺すことも出来る。でもその怖さを知ることが出来て良かったと今は心から思える。一言一言ちゃんと選んで相手に伝える自分がいるから。仲間を大切に思える自分になれたから。

 そのおかげか、高校を卒業する頃には大切な友達が出来た。後輩からも慕われた。そして大学へ入ってからも、かけがえのない仲間ができた。でもその一方で去っていく人もいた。ついこの前もそういうことがあったりした。けれど僕はもうあの時の僕じゃない。

自分が悪ければ謝ればいい。

謝ってすまなければ責任を取ればいい。

悪くなければ、いつか伝わると信じて待てばいい。

待てなければ手紙を書いて届ければいい。

届かなければその人が幸せになるまでそっと祈り続ければいい。

母をはじめ、尊敬する先輩に教わったことだ。

 あの日僕は、言葉ひとつですべてをなくした。けれど心ひとつで全てが変わった。立ち止まることも出来た。逃げることも選べた。けど…

 耐えて、耐えて、敢えて、前へ…


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このエピソードにまつわる曲「【Song-000】言葉ひとつ心ひとつ」の歌詞をプレゼントします。この曲は16歳の旅の始まりから約10年を振り返って書いた曲で、僕の歌の原点でもあります。

以下歌詞です

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