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「とうらぶ」同人誌作家の自殺に思うこと

隠されたある同人作家の自殺

今年5月、ほんの数日前の話です。葬儀会社に勤めるダンナがいきなり

刀剣乱舞って、知ってる?」と尋ねてきました。

「アカウントは持ってるけど、うーん。自分にはどうもスマホゲームはイマイチ合わなくてな〜。人気になった頃にやめたけど?」

「刀剣乱舞の同人誌、持ってる?」

「いや、自分はもうネオロマンス以外の2次創作はあんまり買ってないからな〜。どうした?」

ダンナは「持ってないならいい」と言いましたが、まさかお前…ハマったんではあるまいなと思ったので聞き出しますと、どうやら仕事で受け持ったのが、まだお若い同人作家さんで、亡くなられた原因は自殺だったそうです。活動ジャンルが「刀剣乱舞」という事でした。

去年はコミケがなかったのですが、一昨年前の冬コミで昼過ぎに「刀剣乱舞」のジャンルを回ったときは、そんなにめちゃ混んでいる様子もなく、全体的に「乙女ゲーム」ジャンルは静かであったと思います。2019年、女子のトレンド変遷は回転が早くて最近ついていけてませんが、最近は「ユーリonICE」からは「ヒプノシスマイク」あたりでしょうか?(わからん)

夢破れての自殺は世間から隠される

その同人誌作家さんの自殺の直接原因になったのかまではわかりかねますが、一応は漫画家を目指して関西から上京して一人で頑張っていた方のようです。

これ覚えておいて欲しいのですが、実は

「地方から夢を持って上京したがうまくいかず、自殺して実家で葬儀」

って結構あるんです。

世間では「夢を叶えよう!」で夢産業ばかり、まるでお尻を叩かれるように夢、夢言いますが、その陰でひっそり自殺という道を選んだ若者はいるのです。いるけどそういうのは隠されてしまいます。

この方は漫画ってことでしたが、他に「アニメ声優」とか「アイドル」とかダンナの会社でご葬儀ありましたよ…。

自殺ではなく「他殺」として、あの京都アニメーションの惨劇をみんな忘れたわけではないと思います。もちろん犯人は許せないのですけど、あの理由に確か、「小説を投稿していたが」、というのがありました。私が注目しているのは、放火犯の所業でなく、それ以前です。それ以前の「公募」にあります。公募なんてどこでもあって当たり前ですけど、「夢は叶う」って何だろう?どういう状態になったら夢はかなったというのか。

そもそも「誰でも夢を叶えよう」で「全員が夢を叶えて成功しなければダメ」なの?

成功って何なんですかね?

でもあたかも誰でも夢は叶うんだと、マスコミも大好物ですからね。「夢は必ず叶う」って。

女性の、同人誌界隈事情

私が漫画を投稿していた時代は、「誰でも漫画家」の先駆けのような時代でした。しかしまだ、そこには「編集者」という選者がおり、デビューできるのはお眼鏡にかなった人、才能を認められた人でした。仲間の中には、最終選考まで行ったけど親が漫画家になるのを許さないとか、1作選ばれたけど後を描くペースが遅すぎて無理とか、色々いました。女性にはあってはならないんですけど「顔がかわいい(orオッパイが大きい)と得」なんてのも…。

そこに、80年代を経て90年代に「同人誌」「2次創作」というのがだんだん大きくなってきました。同人誌は編集の目を通さず、直接読者に出す事ができます。見る目の無い(いや、オッパイしか見てない)そんなクズ編集を通す事なく!しかもネタが無くても割とどうにでもなるのが同人誌w

「やまなし、おちなし、いみなし」では商業誌で通用しないでも、雰囲気と人気ジャンルの後押しと萌え、それだけでなんとかなるちゃあなるわけです(それでもダメなら「本落ちました」でもある程度許される)。

しかし、女性の同人誌業界というのは、人間関係をこじらせると女子校のイジメ同様の陰湿な地獄も待っています。しかも同人誌業界は、すでに学生ではなく、いろんな「女性と人生」があります。そこを理解せずにSNSや売上、人気で見比べたり焦ったりすると…趣味は一転して「修羅場」になります。

まず考えてみてくれ…

「地方から上京して、バイトしながらその合間に漫画を描く」人と

「東京在住で親と同居しながら描く」人では状況は随分違うのです。

何がって!現実問題。

尤も今は支援するサービスもありますが、そのサービスだって散らかりすぎていくつもあったりするし。しかも、もう同人誌はコミケが来年100回で、そろそろ50周年なのですよ。ということは、女性で同人誌をやってる人は、相当、千差万別なはずです。本来は同人誌って趣味なので、どういう活動するのか、自由に決めていいはずです。

自由に決めていいのに存在する同人誌階層

自由に決めていいはずなら、他の人がどう活動してようがしてまいが無関係なはずです。

ですが、なぜか「江戸時代かw」というくらいに上下関係ができてしまう。これはSNSだけのせいでなく、やはり「商業的な成功と生き方」にかかっているんではないでしょうか。

コミケは壁サークル(大手)が一番偉くて、プロスカウトも来る…

その次が偽壁シャッター、その次がお誕生席、その次が島角、その下が島中ピコ手…まあコミケは大手が島中に配置されると通路は塞ぐは邪魔で迷惑千万だからしょうがないけど、

「売れる」=「大手」=「人気プロ作家」=お金が入る=夢を叶える…食べていける

そこにあるのは、漫画という夢とかけ離れた現実です。「推しが推しが!」とテンション高い時は忘れていられるけれど、描くことと別に「同人誌を経営する」になった途端、問題は持ち上がってくる。女性の活躍を言われても、「同人誌を稼業としてビジネスにする」限りは結婚出産子育てと賃金の低さという問題から逃れられない。

そういうのはもはや「趣味」では無いのです。趣味という名の商売だから。

夢は追っていい。変えるのは「成功」の意味である。

私ねえ、これ漫画を描く若い女性に提案なんだけど

もうやめませんか…「同人誌人気ジャンル2次創作で売名して有名になり、壁配置の大手になって雑誌スカウトされ、そこで漫画家になる夢」とかは…。

そこしか方法が無いってことは無いんでは…。

まあ確かに「自分の夢を叶える」「なりたいものになる」「海賊王に俺はなる」は大事です。

スムーズにトントン拍子にいつも売れてネタもバンバン出て、スランプなんぞ皆無!という同人誌マシーンのような人ならできるかもしれんけど。漫画描くだけで集中力とか想像力とか…疲労しまくるわけですよ。

同人誌が「何冊売れたか」しか喜べなくなってしまったら終わりです。違いますかね?

誰が「売れなきゃダメ」と言い出したのか。00年代のよくあった啓蒙バカの書いたものに踊らされすぎですよ。本当は芸術にヒエラルキーなんか存在しません。そういう商業的成功ばかり言うところは、いわゆる俗であって、今はよくても次第に意味を失い、精神的砂漠化し文化自体が廃れていきます。砂漠にはどんな花も咲きません。

ならば、成功の意味を変えませんか

売れたかではなくて。推しを本当に愛せたら誰でも成功です


「刀剣乱舞」に罪はないよ。

今回たまたま「とうらぶ」同人の方がということでしたが

女性同人誌を取り巻く諸問題を考えざるをえなかったです。

SNSが多くなって、つい数字を比較したり、踊らされたり、それ以上にイベントが中止になっている今、どこも厳しいと思います。その道に自分を賭けてきた、才能を信じた人ほどしんどいのではないかと思います。

逆に言えば、思い詰めるほど真剣な人の才能は溢れているんです。努力するからこそ厳しいと感じるのですから。

ジャンルに罪はありません。どんなジャンルでもです。

「いろんな人」が好きで同人誌をやっているわけです。

陥りがちな「自己実現」「成功のための努力」、でも比較競争に疲弊したら

本とか、落としていいからね。

何年か休んだ方がいい作品出来たりするもんだと思います。

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