風_12

2019/3/17 風をよむ「AI兵器」

●AIの軍事転用

●映画のような未来が目の前に・・・

●戦争放棄の日本がとるべき道は?

次々と人間を襲う、人工知能搭載ロボット、「ターミネーター」。そんなSF映画の世界が、今まさに、現実のものになろうとしています。

ロシアが開発する無人戦闘車両、サラートニク。機関銃やカメラが搭載され、AI・人工知能の判断で攻撃することが可能といいます。

米・中・ロなどの大国がしのぎを削る、AI開発競争。 今月8日、河野外務大臣は・・・

河野外相「映画の『ターミネーター』に出てくるような、全く人間が関与しない、人工知能のみで、人間を殺戮することが可能な兵器の開発ということに、日本としては反対でございます」

AI兵器開発に反対の姿勢を見せた河野外相。しかしその一方で、

河野外相「ある面、人間を置き換えることができるわけで、人口が減少している日本のような国の中で、安全保障を考えたときに効果的、かつ効率的な手段たり得る可能性はあるという風に考えております」

一定のメリットを認め、国際的なルール作りが必要としました。

しかし、AI兵器に限らず、大国の軍拡競争は、加速する一方です。

ロシアは先月、核弾頭の搭載が可能な新型原子力魚雷「ポセイドン」や“カミカゼドローン”とよばれる自爆攻撃をするドローンの映像を相次ぎ公開。

また、中国は去年、米軍の基地があるグアムを射程に収めることから「グアム・キラー」の異名を持つ、中距離弾道ミサイルを配備しました。

これに対して、アメリカのトランプ政権は去年、核戦略の新指針を公表。核兵器の使用条件を緩めて爆発力が低い「小型核」を開発、現実的に<使える核兵器>を追求する方針を打ち出しました。

高度な最新技術を駆使して軍事的優位を得ようとする大国の動き。軍事・防衛分野に詳しい半田さんは、

半田滋さん(東京新聞論説兼編集委員)「最新技術を戦争に取り入れるというのは過去の歴史が証明している。どこかが新しい武器を持てば、相手側がそれに対抗するために、新たな武器を開発するという、チキンレースを繰り返している。これではどこまで言っても終わりがない競争になるということで、条約というものができるんですね。しかし、いま世界を見るとトランプ大統領をはじめ、自国第一主義の指導者が目立つ。為政者の資質によって平気で禁止された条約を破るということが現実に起きている」

様々な条約を作り、兵器の暴走にタガをはめようとしてきた国際社会。しかし、先月トランプ政権が、ロシアとの中距離核戦力全廃条約からの離脱を表明するなど、条約には不安定な部分があります。

止めどない軍拡レースの中で、奪われ続けていく一般市民の命。そんな現実を、問いかける映画があります。

2015年公開された、「アイ・イン・ザ・スカイ」世界一安全な戦場。テロとの戦いを描いた映画です。

上空6000メートルを飛ぶドローンが捉えた、テロリストたちの隠れ家。
 
自爆テロの動きを察知した司令官は、アジトへの攻撃を指示。 ところが、ミサイルの攻撃圏内で、パンを売る少女の姿が・・・。


攻撃圏内への少女の出現で、会議室には緊張が走ります。
自爆テロによる被害を防ぐため、ミサイルを撃ち込むべきか、 少女を巻き添えにすることを避けるために、攻撃を中止するべきか-。

苦悩と葛藤に揺れる中、ついに攻撃のボタンが・・・。

近い将来、AI兵器が自分で攻撃を判断する時代になった時、人々は、戦争をめぐる苦悩・葛藤さえ、忘れてしまうのでしょうか?
            
 2017年世界の著名な研究者や技術者は、AI兵器の開発について、次のような公開書簡を発表しました。

公開書簡(2017年)「AI兵器は火薬、核兵器に続き 戦争に第3の革命をもたらします。一度開発されてしまえば、武力による紛争はこれまで以上の規模で人間の理解を超えた速度で行うことが可能になります。パンドラの箱は一度開けたら、二度と閉じることはできないのです」

今月下旬、ジュネーブでの専門家会合で協議される予定の、AI・人工兵器問題。戦争放棄を掲げる日本は、どのような姿勢で臨むのでしょう?

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