見出し画像

10/2 ピンクドラゴン

10月2となり、1日が終わるとその月の終わりがほど近いものに感じる。焦るとかではなくて、ただ淡々とこなさないとな、という心。他の芸術が小説に還元されているようなのも、日付を鮮明に知覚するということも、この習慣は素敵。

例えば生涯のうちに感じる、恐怖や苦痛がピンクの球体となって、部屋に飾ってあったら、僕は青空とこの寂しげな街並みをどんな風に感じれるのだろう。予め、死ぬ時が用意されているような暖かさを感じ、ああ、僕はいつか死ぬのか、と思って何か違う印象が心を攫った。同じことを言い表しているようで違うから、とても大地に埋もれたくなって、とっぴな現実を引き出そうとしている。僕はジャングルジムから飛び降りて骨折した。すぐに先生たちが駆け寄ってきて、僕を保健室へ運んだ。保健室の先生はとても綺麗な人だった。保健室の先生という習慣はこんなにも人を綺麗にするのか、と独占的な習慣で培った感覚や姿まで今ここで引き出せないか、という考えに至った。目からは涙が溢れ、身体は2人の先生に抱えられ、とても無力だったからだ。真っ白で肌触りの良いシーツの上に寝かされ、こんな泥まみれの僕がこんな所に寝かされて良いのかと思った。そんなところなんて気にしない、という保健室の先生の真剣な視線は、これから何度も僕を癒すことになる。僕はこの世界を反芻したくなった。手当は完璧だった。少し休みなさい、と頭をぽんと撫でて僕を寝かした。僕は咄嗟に保健室の先生にキスをした。先生は僕をビンタした。ビンタの勢いで顔が横を向き、枕にずぶっと埋もれる音がした。これ以来僕は勃起したことがない。そのまま目を閉じた。するとジャングルジムから飛び降りる瞬間の意識や景色が、燃えるように浮かび上がってきた。飛び降りようとした意識は、勇気だった。重なるように見えるピンクの球体が何かに覆われるように大きくなった。大きくなることがあるのかと思った。飛ぶ時は下ではなく上を見ていた。重力という常識を忘れていて、ずっとこの気持ちのまま遠くまで行ける気持ちだった。普段の小学校のグラウンドからは見えない街並みが見えた。その瞬間青空が手を伸ばすように下に降りてきて、街に完全に浸った。まるで海の中にいるような空間だった。こちらの方が正しげにも感じた。そのとき膝から硬い砂の上に落ちた。ぐぎゃっという音がした。僕は泣き叫ぶことも、痛みを感じる隙もなく、ただあの海の中にいるような空間のことを思い返した。そして常識に抗えず落ちてしまったことを悔しがって、それを一瞬で止めた。僕は浸らなかった。またピンクの球体が大きくなった。ああああああ!いってえええええええええ!と叫んだ。意思などなく、ただ運命の中に組み込まれた現象だった。また悔しくて、怒りを一瞬で止めた。俯瞰した。自分を上空から眺めて、ズームアウトするように離れる。駆け寄ってくるクラスメイト、校舎、フェンス、住宅街、自動車ーー。宇宙までいったところで目を開ける。僕の隣で保健室の先生がオナニーしていた!やった!やった!ピンクの球体が膨らんでいっている!保健室の先生がオナニーしている!ピンクの球体が膨らんでいっている!保健室の先生がオナニーしている!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?