寝たい人

ああ、寝かせてください。子守唄でも絵本でもセックスでも何でも良いので寝かせてくださいお願いします。寝ないと眠たくなってしまって、涙が出てきます。あれは何の涙なのでしょう。たぶん顕微鏡とかで綿密に見てみても何も無く、退屈で空虚な、赤ちゃんの方が余っ程良い涙を出すと揶揄されそうな、そんな適当な涙だと思います。夜は何度経験しても慣れません。暗いからでしょうか。明るい夜もそれはそれで恐ろしいですが、暗い朝というのは、何だか好ましい。ああこの思考、不毛、不毛です。私の今の女性器の姿そのもののように無駄が無い。つまるところ意味が無い。洗練された虚無です。毎日毎日6時を回ったあたりから眠たくなり、10時をすぎると眠くなくなるあれ何なんですか。ふえええええと、きちがい女のような声を出してみて、窓の外のきちがいなセミに負けてない、目には目を狂気には狂気と、人間の方が貴方よりも一山も二山もきちがいなのだと、声に意味をもたせてみて、ああ寝かせてください。人間は存在しているだけでどうしようもないいいいいいいいいいいいいいいと言いながら枕を噛み、首の力をばっきばきにして引っ張っていると、首の何らかの筋はぱちんと切れて、歯は全部取れてしまいました。枕にぷつぷつと抜けた歯が丁寧に刺さっていて、アートかな、なんて思っては変に「意味」が嫌いになって襖を破きました。びりりりりりと、何でしょう、虚無を千切れているような、意識を認識出来たときのような、ああ、今気づきました。意識を認識出来るのは他者の意識だけで、それが何処か孤独感を埋めている正体なのかもしれません。妙に腑に落ちて、歯もなくなってしまったのに、明るい気持ちになり、もう一度一から、まず部屋を出て、ドアを締め、振り返りドアを開け、部屋に入り、布団へと入ろうとしました。すると、枕に歯が刺さっているのを見つけてしまい、笑い転げてしまいました。誰の歯だよもおおおおおおおおおおおお。襖がびりびりに破けています。もおおお猫なんて飼ってないわよおおおおおおお。私は一頻り笑い終えて、はあああおもしろ、と言い三点倒立をして、逆さまの世界に耽ります。ああ眠たいのに寝られないと嫌な思い出ばかりが胸の所に浮かんできて、水槽にコンクリートを詰めたような恐ろしい気持ちになってしまうと、逆さまだろうと単調な雑念が浮かんできて、さっと足を下ろし立ち上がり、壁に頭を2、3度ぶつけました。首のなんかの筋が切れてるものですから、思うように動かせなくなり、だらんと、すずらんのようになりまして、疲れちゃったと言おうとしたのですが、気道が塞がっており、疲れちゃったと思い、とことこと歩き、何か私の布団の横で寝ていた男のちんこをフェラしました。歯が無いので、やりやすく、首が思うように動かせないので、身体を使い上下し、本当に死ねという気持ちになりました。死ね死ね死ね死ねと心で連呼しながらフェラすることは初めてで、もし歯があればちんこを千切っていたかもしれません。顎の力を目一杯にしているものですから、きっと彼はかなり気持ちいいのでしょう。全く不本意です。フェラなんて何でしているのか。全く訳がわからない。
みいいいいんみんみんみんみんとセミが鳴きます。私と貴方どちらがきちがいなのでしょう。勝負したい。勝ちたい。
みいいいいんみんみんみんみん。もう一度セミが鳴いたのかと思ったのですが、それは私のフェラ、つまり私の歯無しの口とちんこが摩擦して出ている音なのでした。
みいいいいんみんみんみんみん。セミが返事を答えるように鳴きます。私も必死に返事を返すようにフェラします。
みいいいいんみんみんみんみん。
あれからセミとのセッションが始まり1ヶ月が経ちます。私がフェラしている彼は奇跡的に死にながら勃起している人らしく、身体は腐っていくのに、ちんこだけは新鮮で全くもって意味がわかりません。私の首も、全く気道が塞がっているのに私は生きており、どうやらこのちんこから酸素を得ているようにも思えているのです。
みいいいいんみんみんみんみん。
冬なのにセミの声がします。私のフェラ音です。何時までも何時までもきちがいでありたい。そう思います。

みいいいいんみんみんみんみん(殺してください殺してください殺してください)

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