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8/22〜 草木。怪物に会う。

意味を炊飯器から注がれる湯気のように漂わせているタイルの溝がどこに続くでもなく伸びながら、べったり地面に張り付き、文明的な光を浴びながら、天井と見つめあっている。空間の広がりが、この身体の夢を見てるみたいな制限と比べられ、あるいは内包され、足の指に力が入る。どっと重力とも違う支配的な重みがのしかかり、それに歓迎され愛されているとしか形容できない。ら。ひらがなだけの会話みたいな、すんなりした気時間。動機よりも、そういう流れに入り込むことの方。外に出て、人工的な並木道を抜ける勇気、ゆっくりな今を傘に、丁寧に心と歩幅を合わせるのが最も速いという長期的な視点。タイルは次第に薄くなり、時代が地層のような姿で木漏れ日を追い抜いて、真っ白な空間の上を踏んでいるみたいだった。道の中央、明かりが入る。関節がある、このフォルム、このルール、この存在性。夢を見てるみたいで、何も信じられない中を、鼻歌を歌いながら歩くようなもの。成果よりも歴史が繋がり、美しさが誰にも知られぬままに、しれっと街の片隅で、小鳥の家みたいに。この道の両脇を彩る樹木は、細く高い。この街で1番高いビルを優に越している。高さを取るために太さをかえりみなかった愛おしい個性。船のような黒い影が地響きとともに道に被さる。陽炎のように揺れながら、姿を現せば、狼と呼ぶには大きすぎる生き物がのっそりと歩いていて、心の静けさはその姿を捉えるほど顕著になってゆく。横には太陽くらい大きな日傘をその生物に刺す細長いカエルのようなものがいて、物音や存在感もなく、注意を向ける隙もないままに素通りした。内面が映し出されたと思いつつ、知らない自分への小さな動揺を呼吸で逃がし、グリッドのない白紙の地面を踏み込む。重力とは別のはかりのうちで軽く、どの歩き方も、別の次元で何度も行われているというパレードがあった。一瞬、動く。面白味のある足跡になる、ひらひら瞬きの喜び。

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