赤と青が混ざり合うことなく、地平線のような隔たりと共に共存している顔がある。簡単な命、死んだら終わるこの生涯で備わった目的と快楽のままに意味を求めてひたすらに悩み続け曖昧に行き来を繰り返し好きなだけ抑揚しいずれ迎えと共に死ぬような命、そんな命とは呼べない命を宿している顔で、その顔をイメージすると私の最も知性のない素直な目的の所で恐怖してその顔へと顔が修正されてゆく感覚が顔の皮膚の表面に波のように溢れ寄せる。その海を視姦しているような感覚の心地良さ、上昇感、浮遊感、超越感、これがもっと欲しいから引き出すための工夫を凝らすけど、言葉にならない物を言葉にすると記憶を隠蔽閉塞しているような喪失感を感じるし、他の記号音楽や絵でも表現記録吐露しようとすればするほど感覚が擦り減ってゆく。誘導を重きにして記号を使うことがある、これを思考と呼ぶのならそうだけど、これをし過ぎると感覚を無条件で手段を問わずに引き出す能力は落ちるから、どんどん地層のように過去は朽ちてゆき個性はブラックボックス化してゆく。私はこの感覚をこの感覚のまま置いておかなくてならない。伝えられないという伝達を行なっている。あの時の感覚を思い出せ!という脅迫文と環境の描写のみで記録は完成する。
地平線のような暇を呼吸していたとき、周囲にいるあらゆる人間の顔をもし自分の顔だとしたら、と考えた。寝ても覚めても何度もいつまでも、他者から見られても自分で鏡やカメラを通して見てもこの顔、どんな顔でも気が狂いそうになるほど拒絶しているのが、背中のざわめきでわかる。どんな顔も私好みに変化させてゆこうとする個性的な知性があり、それが蟻を潰すような余裕や実力の強者感覚で、絶対的な支配者として働こうとしている。長く付き合ってきた顔、メディアとしてこの顔を愛してゆこうと思う。単純接触効果、記憶の重さは、意図よりも現実よりも私を支配をしている。私は何に支配されるかを選び取っているだけだが、既存の支配に反発するだけで支配を選んだ気になるものは単なる怒りとタナトスで被支配の敗北者奴隷、最も根源的な支配を探ることしかすることがない。敵意は被支配からフラットへの移行心でその目的も神の暇つぶし、根源的な支配への探りに他ならない。支配されてない状態は、制限のない存在。制限のない存在は全て、全ての存在になること、全てを支配すること。支配されていない状態は全てを支配している状態。全てを支配している状態に支配されるということが最も根源的な支配の選択、その顔がある。神になり神に支配される感覚、循環の幅が限りなく0に近い姿、そういう顔がある。
地平線が続いている。人工物に囲まれてその上を歩いて、地球との隔たりを感じる。喜びが遠い。ビルと青空の隙間、雲が漂い越えている。迷いのない焦点、決められた道を歩いている。絵みたいな景色、よくできたゲーム、こちらの世界を参考に作られたあちらの世界、いや、どちらもこちらの世界、なんなんだここは、意味わからない世界にいるという快楽、性器が反応している。腹の方に反り返り空に挿入しようとしている。ズボンの上からでもはっきりわかる。感覚的には刺になった気分だった。ウニの姿のあの一本を担っている気分。雲が女性器を模すために配置されてゆき、私は笑う。いつもより顔のむくみがないのが、面の皮の肉の無抵抗からわかる。アスファルトの硬さ、熱の深みエントロピー、微笑をサンダルを掻い潜った足の裏で感じる。ゆく。歩くというより走るに近かった、いや移動、物体が風に押され足もなく仰がれスライドする感じ、アスファルト、あらゆる奥の匂いまで私だった。繋がりながら、下着の幼稚な摩擦で射精する。糸が切れたように感じる。私は私の意思で立ち止まる。生まれて初めて意思を使ったような気がした。環境の流れに抵抗してそれも環境の流れ、離れても離れられない、可愛いからキスをする、そんな張り詰めた日常をカットした。分離、浮遊、燃殻、形のない形を感じる。世界の外に来れたような気がした。まだRPGゲームの中にいるような感覚は続いている。この世界とは別の秩序が重なり合っている。私は携帯を取り出して自撮りをした。普段より数倍可愛いかった。ふと、道路の脇に止められた自転車にかけられたビニール袋に水が溜まっている。昨日の雨が溜まっているのだろう、私はその葉っぱの浮いた水で顔を洗い、口に入れ飲んだりしながらそう思った。環境を超えた意思は感じられなかった。異常な行動を取れば良いということではないのか。私はまた片手に持っていた携帯で自撮りをした。可愛いままだった。さっきのような真新しい可愛さはなかった。股を何かが伝う感覚がにわかに過ぎる。裾のあたりを見ていると、やがて白濁の滴がくるぶしの上を通り過ぎた。サンダルの縁で左右に広がり溜まる姿勢に入る。私はサンダルを脱いで、その思い出を啜り、美味しいと言った。

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