玄関スピードタイム

フォントを選んでいたら、もう夜になってて何も喋れなかったPCの画面に映る可愛い顔こと、私。ひとりぼっち木漏れた月の光、いつのまにか外を歩いていた。分析ばかりの特訓に飽きて私らしい言葉を探して脳を柔らかくする。コンクリートは固いから私が踏んであげている。右手には一人前の茹でる前のパスタを握りしめている。左手にはスライム。握ったらすぐに折れるパスタと握らないと存在意義を与えてあげられないスライムと、そんな諸事情を無視して動く足たち。車の音がいばらの木、排気ガスと街路樹の出来ちゃった結婚。空のあどけない表情、夜でも見える雲、星に手が届きそうな心、たしかに胸の中にある物体、夜はやけに鮮明に感じとれる。枷が取れる。
白いガードレール。守ってくれる安心感、速いスピード。パスタを公園の真ん中の世界で最も固い土に植えた。スライムで倒れないように固定した。私は何のためにこれを手に持ち出掛けているのかと怪訝だったが、このためかと丸くなった。へえ、夜、初めて夜を体験しているような気分。
この頃、1日があっという間に終わる気がする。朝があって夜がある、そんなことを知ってしまっている。私は死ぬために分析してるんではない、新しい自分に生まれ変わるために分析している。そうだろ?パスタやスライムは黙ったままで、夜の毒が静か。
立ち上がるとき、膝がミシミシ言う。砂でも飼ってるのだろうか。デザインばかりで、息苦しい。汲み取れない浅さを反省せず、意味のないことばかり反省したがる。1つになろうとしている。
風がよぎり、文化的に風のような存在になりたいという気分になった。雨が降ってきた。私のこの感情がそのまま空に反映されていると、顔を上げる。首の筋肉のうっとした表情を、和ませる背筋、肩甲骨。わかる。
恐竜をダイナソーと呼ぶんだと初めて知ったようなあの感じ、あの頃の感覚。たしかにコンクリートは黒い、汚い道が進んでいる。煙立って、やなやなしい。でも視覚からではない色で、今まで私にスルーされてきた色で、包まれている。
家。家は私らしかった。

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