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自動筆記9 庭師の庭シャワー

傘をいくつもいくつも刺してもしっくり来ない夏が続いた。上とアザラシ、下と空気、右と全部の言葉。細胞分裂が進む外で、鉛のような雲の動きに属せない言語空間の点と点に、かかるはずもない橋をかける。隙間を縫うように1番身動きできないありがたい所へと跳ね進みながら、知らない自分で笑っている。浮遊感だけが取り残され、ランニングマシンに乗ってるみたいに理解できてしまう体験が乾いて、汗が空に落ち、プールの塩素の匂いが、駆け抜けるように鮮やかな生物に食べられた。脳天から骨盤の底まで一揆にスープを飲むように、花畑に住んでいる虫が脳裏に過り、海中の塩の濃度と爽やか調和した。その空間の奥で、神社の沖合に、山に似た生き物がいた。手前には無数の動物達が戯れ合いながら、土に苗を植えていた。雲も空も何でも、知らない美しい自分、代わり映えのない表層の奥に、叩く旅に香水や愛が溢れ出る柔らかな球体があった。恍惚な目で見入っていると、アーサナを全て優雅に行える身体が、大地の中からこぽこぽと芽生え、肛門から殺意の篭った勢いで入ってきた。腸を一直線にして、横隔膜が鎖骨を粉砕し、肋骨と胸骨はゴムのように伸び、肺は一瞬星になった。人呼吸で知っている自分が全てが出て、手を挙げながら多方に走り去っていく。少しばかりの社交的な塔を、ありあまる綻びに差し込んでいく。脳を取り出して、粘土を焼いて、エナメルの鞄みたいな空が見える。設計の抑圧の中に、壁に絵を描くニューロンに、住んでいる人々が毛穴を窓にして生活しているのを感じ取れる。この世始まってニ度とない夜明けが、パラレルが無限の感覚器官を宿して、神経で手を繋いで、意味がなくとも進む体験の捗りさえ後にして、地平線を歪めて、不安の一粒一粒と調和しながら、目の前にいてくれる。感謝より先に涙が溢れ出て、土に声を入れるようなガラス瓶が産まれた。空から降り注ぐ雨は、愛だと知った。魂と連動して動く宇宙が、チェーンソーを小指みたいな意識で止めるのを見た。

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