コントラスト

この腐って死臭のしそうな感覚がある。鏡を見ればその感覚を入れてるらしき二足歩行の動物の姿がある。目の奥に、この光景の感覚があるらしい。鳥の鳴く声が聞こえる。顔周辺は清潔に見えるはずだけど、唇だけが脈打ち、内臓の淫らな欲望を表しているように見える。確かに姿を確認すれば、姿通りの感覚がある。頭から2点2本に枝分かれた箇所がある体が立ち誇っている。寒気、ぞわぞわした感覚が巡り、一瞬宙に浮いたような感覚もある。肉厚なる皮膚が薄くなっているようにも思う。目を閉じる。まだ体としての感覚がある。そこに怒りがある。離れられない感覚、管理されている感覚がある。何も自らしている訳ではない感覚から溢れ寄せる喜びまでが一連の流れ。飽きに飽きた。笑いに笑えない。退屈な未来が、道が、続いている。死にたい訳ではない、その退屈さに身を挺して退屈を零さぬように感覚の器にすることもできる。自発的に死ぬのは準備がいる。そこまで動物を掻い潜り立ち昇る準備、それこそ感覚を体に取られてしまうようで退屈以上に狭苦しい。何か、言葉を環境にして価値観で感覚を縛りつけ、正しさと敵意を膨張させながら激しい波に揉まれる。ペットボトルの中で揺られている液体、鞄から手の中まで、至る所で飲むも捨てるも忘れ去られるも、権利を奪われたところで。何が残されているのだろう。感覚がこの体を飛び越える為に、なぜ飛び越えたいのかすら見えない。甘すぎる、脳髄、思考まで透明になるようなアイスクリームを食べる。体がこびりついてくる。快楽。美味しい。何も見えない。感覚が生き生きと輝き始める。外の気楽で軽薄な姿に身を寄せ始める。同一化。始まりがある。内部はこんなにも狂おしいのに、外部には形がないものがない。形がないものやまとまっているものは背景になり隠れてしまって見えない。とてもデザインしていることに息苦しさを感じる。触れてしまう、舐めれてしまう、食べれてしまう。後悔、支配、ニュアンス、リアリティ、学術、横文字、理屈、分析、備わり、並列化、管理、やまない、こびりついてくる、まとわりついてくる、要らないもの欲しくないもの、この感覚にゴミがつく。窓から鳥が見える。瞬時に鳥に感覚を渡す。この体ではない体で、重く鈍い引力に継続的に逆らっている。ゴミを取っているような気も、ただ見ないふりをしているような気もする。根本的な解決にはならない、いつも凌いでいるだけ、凌ぐという点を何個か持ち土に帰る。凌ぐという記憶を持ち帰るみたいな命。朝日は嘘みたいに眩しく、皮膚を焼かれ体の輪郭はより鮮明になっているように感じる。管理の光、熱、支配の香り、喜び、するりとした依存のない快楽まで、奥ではぬるく濃い欲望が、この唇が凝固しようとしている。埃が嬉々として舞っている。柔らかくて張り付いてくる。おっぱいを触っている時と同じ感覚。指を広げ感触を染み込ませながら揉み、間に顔をつけ耳を澄ませる。心臓の音が感じられる。全身に脈打つ感覚。同化か、脈の波長が合わさる。波紋の波紋。爽やかな水面。遠くて近い、体であって体でない、そんな感覚が、この部屋に舞っている。倒れてガラスの破片が背中に刺さる。血が畳を汚すエントロピー。体のような天井が見える。壁、印象、滲み、淡さ、はみ出たもの、名前、感覚の過去たちがここにある。表現を見渡してゆく。奥へと進めば体から離れる。ゆくゆくは、遠のく。重くのしかかる恋、彷徨うための彷徨いがない、果てしない感覚の伸び。背中の痛みを嘘にして体を伸ばす。

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