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ショートショート再開しよう

ろうそくに火を灯して、締め切ったカーテンが私の物質的な表現を背にしているように感じる。鼻に痛みほどの暖かみ、目に眩しい僅かな炙り、頬を削ぐように部屋の立体の深みに逃げる気体は、後頭部を板に跳ね返る記憶と混ざり合いながら、胸の奥に来世として落ちる。目を閉じれば、まつ毛の風で火が揺れ視界が暗明になる。顔の表皮の中央に星があり、頭それ自体も星のように思った。その幻想に、息を吹くと火が消え、そのカーテンは裏返る二元性で、ペアを探して元あった場所に戻す日々を楽しもうと思った。息を吸うとまた火が灯る。地球の奥深くまで落下するように息を止めた。この空間に漂う、目に見えない空気の流れはこの火の揺れを通して記憶に住み着こうとする。この火の揺れはメディアで、心と同じだと思った。外に反応して揺れる。揺れずに真っ直ぐに燃える火は最も高く、後頭部を引き上げて最も身長を高い所にした理想的な姿勢のようだった。私はそっと、火に口を被せた。唇と歯並びを、上と下と見るのか、円と見るのかは人それぞれだったが、舌だけは知らず知らず火傷した。

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