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8/11〜逆転した植物

削れて丸くなった惑星が、どこにも向かおうともせずに、向かおうとしている方向へと最も摩擦の少ない物理で進み、空間の広さとの対比的な佇みに、その幅に、思い描ける限りの好きなものを挿入したかった。アウトプットは洗練されたインプットで、ころりとした日々の恍惚さが蓄積して、忘れた頃に見たこともない鉱石になって井戸の底で見つかる。静かに今を生き続け、ただそれを待つことが思い掛けない領域でわくわくを高めて、その考えが目蓋を閉じた時に見た、光を目一杯吸い込んだ白い空間の中央に佇む木の生きたままの形をした椅子の形だった。私は座り、今の自分が帰納的にコラージュすることのできない次元の生活・今に還元し伝えることさえままならない・本当に美しかった・を見た。そして、それがまだ途方もなく続く道のほんの1ミリだということさえ、わかる。わかって諦めたように家を出る。私はコンクリートの少し足を切りそうな尖った部分をゴム製の靴で踏み、俯瞰し、空を見上げて視界を物にし、保ち。私が動き通り抜けた空間のエネルギーにさえ、私は飲み込まれている。バス停にあるベンチに意味もなく座る。一息が出て疲れていたのだと知る。目を閉じるとぐんと落ちる。私は別の世界で1年を過ごす。バスの運転手の「乗りますか!?」という声で目が覚め、戻ってきたのを知り、あの世界のことを忘れてしまうと思い書き留めようと、メモ帳を鞄から出そうとする。「あの、あの、あの、あの」という小言が自分の耳元で聞こえる。メモ帳を取り出して、ペンを持ち線を1本横に引いてみたとき、もう何も覚えていないことを理解して、「はい!」と誰と思ってしまうような明るい声で返事をして、意味もなく電車に乗る。なぜか夜行バスで、なぜか予約していないのに乗れて、なぜか出雲大社についた。バスが到着して最初に見たコンビニの中で私は笑った。涼しかったからだ。購買意欲を高めるために設置された鏡に映る私の顔は、以前の自分とは別人のようにつるつると、ぺらりと、すかっとしていて、ラブリーな生活をしているような感じだった。お茶を買う。「レシート大丈夫です!」

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