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自動筆記6 飢餓の幸福感

目立たないもの、目立つもの、視力、透視された遠隔操作。細胞ひとつひとつを裁縫して、石に大きなタトゥーを彫る。井戸を覗き、よりリアルに世界が迫ってくる。生きていることが、より鮮明にわかる。玉葱の中心で待ってるあなたに、思い出を届けたい。首を絞めるような固定費に、持続可能な空、いつか終わるはずの今が、この炭素が尽きるまでは続くだろう。ビタミンに意味があるのか、と言われ、意味とはビタミンだと答えた。太宰がアカシックレコードとして、頬杖をついて見守ってるみたいだった。沢山の場所がある、どこもかしこも、旅人は競走していた。全ての場所を知ってるものはいなかったが、みんなより多くの場所を知ろうとした。知識で満足しているのは思考で、魂は体験を望んでいる。今、ここで、全ての場所を体験することが、きっとできる。丘に座り、眠い目を閉じて、ゆっくり呼吸している少女は、瞼の裏を見つめている。薄い瞼は日差しを通し紅く淡いけれど、果てしない空洞が闇としてあった。風に靡く短いスカートは、世界の広さを表すメッセージだった。パンツと芝生が擦れ、免疫力が高まる。絶え間なく、ブロックは積まれていく。より深い体験を産まれながらに希求し、海は今日も蠕動し、海と呼ぶことの奥に大きな生き物を彷彿とさせた。あまりにも大きな呼吸が、小さな呼吸たちを包み込んでいた。新宿に電車が止まる。少女は目を開け、初めて見た世界をお母さんだと思った。

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