ラブレター

学校にきて、自分の机に手紙が机に入っていた朝。

いつか死ぬって心の底からわかってみたい。今も生きている心地がしません。生きているってことは呼吸してるってこと?でもこの体が死んでも私は生きているような気がしちゃうのです!だったら私は何なのかしら、生きている人に聞いても仕方ないよね、でも貴方、一際死んでいるみたいだし、死ぬってやっぱり存在が消えるってことだから、存在が薄い君はまあまあ死んでるってこと!死のグラデーション!なんちゃって!そう臨死体験中のあなたが好き!大好き!私は見てるんだよー?君が、教室で何してるか。いつもねTikTok見てるでしょお。面白いよねー。俗というか真実って感じがして私も好きだなあ。今度一緒にTikTok撮ろうね!撮るっていってもね、並列化したようなものは駄目っ。私たちのユーモアをしようよ、私たち可愛いから可愛さでカルチャーになったら退屈でしょー?勝ち方に拘泥するのが私たちだよねー。はあ好き。溜息が出るの。あなたのことを考えると、ほんとね、筆が止まんないからこのまま勢いで書いちゃうと思う、私ねオナニーしてるの。貴方のことを考えながらね、オナニーしてるの。賢いんだよね。賢い動物っ!受精したいって思ってる訳じゃないんだよ?こういう私は体で、私じゃないから何だか私にされると恥ずかしいんだろうけど、体だからね、体は私じゃないから!乗り物!メディア!きゃあ!虫!ねっ!君もオナニーとかするの?私はね、しなくても大丈夫だけどしてるの。した方がこの体は喜ぶみたいだから奉仕してるってこと。毎月生理きて痛いし、気持ち良くないと勿体ないからね。君はオナニー我慢できずにしちゃうんでしょ?病人みたいだよ。何だかAVとか女の子を無茶苦茶にしたもの見て抜いてるんでしょ?女の子かわいそー。で、今その抜いたのと同じ手で手紙を持って読んでる。好きだよ!好き!だーいすき!男の子だから仕方ないって言われたい?よしよしされたいんでしょ?許して欲しいんでしょ?

「AVはやめ、ASMRという音声を聞いて抜いていました。でも今は抜くことすらやめ、ちんこの勃起を放置させたまま乳首だけを触り、乳首でドライオーガズムに達することで女性ホルモンを高め、無性生殖の花になろうとしている途中です触るな!」
私は私をじっと見つめている女に向かって叫んだ。あの女が書いていることは間違いないし、字体が顔に出ているというか内容が日常に出ているというか、あの女で間違い無いし、あの女が私のことを好きなら私は無性生殖の花にならなくて良いのではないのか、いや違うまだ途中、読んでいる途中、読み進めるよ私!あの女はたんぽぽが風になびくみたいに頷いている。目とかもろもろ綺麗であるし、ハンカチを両手で握ってそうだからイメージで握らせた。握らせた後に、あっと思った。アダルトコンテンツと書かれたガムを噛んでいる今も。

男の子のそういうえっちな欲望ってさ、川みたいだと思うんです。理由は6ヶ月後の私が見つけると思います。だって、私6ヶ月後はあなたと何度もセックスしてると思うし、あと皆既日食もあるから。私たち性欲まみれだけど、性欲は出来るだけ見ないようにして、観念的な愛を深めていこうね。やっぱりオナニーに勝てないって、好きな人を道具になんて出来ないって、私は思っちゃう。いくら同意の上とか調和とか言葉並べても、人は孤独なんだから、孤独のまま愛するのは個性の表現でしかないし、えっちなことするのは好きだからってより体への奉仕だから治療みたいな感じだし、今ちんこ勃ってる?あっでもその性の重圧を補い合うって意味では素敵なのかも、道具にするというより神を敵にして必要だから楽しむって感じ?なんかすっきりした私、君とセックスしたい。今口が無いわ。喉よ、喉しかない。喉で止める言葉が全部出てるの、手から、手で書いてるからね、比喩が体で絡まってる。ひゃあ!虫!今ちんこ勃ってる?

私のちんこはとうの昔にたっていた。きっと手紙を読み始めた時だと思うけど、生まれた時からたっていたような気さえしてくる、それくらい一矢報いるような大死一番的な勃起だった。いいね!私が撮ったTikTokにいいねがついた通知がきた。バイブでイくところだった。何がマナーモードだ。

イくところだった?イくって言葉不思議だよね。どこにイくのかなあ。宇宙の果てを想像しちゃうよね。宇宙の果てにほんの少しの時間だけ辿り着いてて気持ち良いとかなら嬉しいけど、きっと違うよね。宇宙の果てってきっともっと凄い。初デートは宇宙の果てがいいな。何だか宇宙のこと考えたら濡れてきちゃった。トイレ行ってくる。お待たせ。戻ってきた。やっぱり凄い濡れてた。ありがとう。

「ありがとう!?」
私が思わず声を上げてその子の顔を見ると、彼女はうんうんと頷いてばかりだった。ありがとうという言葉に嘘がないという頷きだろうか、いや頷くことを楽しんでいる風に見えた。私は呆れて手紙に目を戻す。

今、世界中でうんこが垂れ流されています!セックスだって一杯行われています!いっぱい生まれていっぱい死んでいます!好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き!だーいすき!好き!好き!好き!好き!好き!だーいすき!すき!ずっと一緒にいたい!好き!こんなに好きなの初めて!好き!大好き!

「へ!?へ!?」
私は何度も彼女に疑いを見せるけど、彼女はうんうんと頷いているだけ。

好き!大好き!付き合って欲しい!絶対に結婚するし!もうプロポーズと言って良いけど!とりあえず付き合って欲しい!好き!とにかく好きなの!好きすぎるの!やばい!やばいの!ああああああああああああ!大好き.mp3

「え!?」
手紙なのに音声ファイルが貼ってあった。彼女の方を向くと、彼女は頷いている。手紙に戻る。

あのね。付き合って欲しいの。

最後にラメ入りでそう書いてあった。
私は読み終わってしまったと思った。余りにも長く濃い時間だったから、環境に適応してしまったのだろう。私は返事をしようと顔を上げる。彼女の方を向く。答えを出すのである。勿論yes。私も好きだったと言えば嘘になる。私は花になろうとしていたのだから当然だ。でもそれゆえに誰でも好きになれる気はしている。相手が私を好きで話も合う風に思ってる感じできてるしその感覚を信じてみても良いのではないか。彼女と目を合わせる。

「本日は晴れ。Twitterのアイコンをハシビロコウに変えました。窓の外のあの葉末になりたい。日の光を浴びて気持ち良さそうなあの葉末になりたい、とそう思っている日常でした。山に囲まれたこの街でっ」
私はビンタされた。

「遅い!どっちなの?!」
彼女の頬は赤い。手紙を読まれきって恥ずかしいのだろうか、その頬の赤さを私にも作ろうとしてビンタしたのか、お揃いだろうか、ありがとう。

「ありがとう!?」
私は心の声に驚き声を上げた。

「ふうん。じゃあ今日一緒に帰ろうねっ」

その夜二人で人を殺してしまった。幼女だった。殺すつもりはなかった。なぜ殺したのか、殺してしまったのか、今はよく覚えていないけど、この手紙を読んだ朝だけは鮮明に覚えている。私は刑務所の中で勃起している。隣の独房から喘ぎ声と私の名前を呼ぶ声が微かに聞こえる。彼女がオナニーしているのだろう。私はそっと両手を乳首にそえた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?