記念欲

僕は、記念に射精することがよくある。引っ越すとき、一番お世話になっている駐車場で、車を停めるブロックに向けて射精したり、上京するときの夜行バスの中で射精したりと、記念欲とでも言おうか、衝動的に射精してしまう。中でも一番記念になったのは、初めて出来た彼女と別れるときだっただろうか。別れると決まって、ああ射精しないといけないな、と思って使命感に囚われていたのだけど、彼女と性行為を為すことは、当然無くて、ただ混沌とした記念欲だけが僕の中を渦巻いていた。そしてその記念欲が、膨張を続け、身体がはちきれそうになっていたとき、
「ペンギンのよちよち歩きを見て、虐待受けてんのかと思って、飼育員を殴ったら、そういう動物ですって言われて、神みたいなこと言ってるなと思って、もう一度殴っといた」
と突然僕は、言い放った。このはちきれそうな記念欲を昇華するために僕が取った行動は、よく分からない適当に頭に浮かんできたことを呟くことだった。
「黒よりも暗い色を知っているとお母さんが言ったあと急に怪獣のバラードをメガホンで歌いだして、もう耳抑えないと生きていけなくて、テンパっちゃって無茶苦茶ディープキスしちゃった。のうっこうな!えっろいやつ!」
「ねえ!どうしたの?」
「インドア系ならトラックメイカーの、エビデイエビナイの所言って!」
「え?」
「いいから言ってー!言って言ってー!」
「エビデイエビナイトラックメイカー」
「可愛いー!ああああああああー!!!!!」
「ねえ!どうしたの!」
「うんこ!うんこ!うんこ!」
「うんことか言うやつマジで無理だわ帰る」
「ああ…」
あのとき僕は、むっちゃくっちゃ射精してたのだけど、後々聞くと彼女もむっちゃくっちゃイッてたらしいです。人間って不思議ですね。

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