水船

ヒトデの人で、海に包まれた海の匂いを知らない。ものものしい船の音が光のさざめきを揺らしている。気泡が美容液だから太陽に吸い取られ、視線は水分系をすこぶる遠のかせ自分の輪郭を忘れさせてくれる。
目が覚めたらここで横になっている。運の好調が滋養の縁の雲から光る。見たことのない魚にお気に入りの海藻を絡めとられて踊っている。桃が食べたいなあ。
浸透した眼鏡は腐敗の匂いがする。波に流されながら脱皮する。蛇のように、サソリの隙のなさに笑いながら。身体が行ったこともない宇宙空間を思い出していると、比較対象のない砂漠の上にガラスの破片を見つける。初めて見たけれど特別感はなかった。広い!私を内包しているこの空間は広い!限りなく!
くるくると流されて、ぷかぷかと周囲にほぐし水を撒いている。こんなにも今を充実させたことがあっただろうか!これからも!?もっとこの快感がエスカレートして私は破裂してしまうのではないだろうか!何も考えられなくなったけど、安心のサンゴ礁。
水船が遠く遠く伸びて鉛筆くらいになっている。ヒトデの目にもしっかりとわかる。あれは何億年も前から私と出会うのを待っていた。ただ通り過ぎる差粒子の時間はこの世界を内包してしまえそうな気がした。ある一瞬を求めて箱があるのではなく、箱は八百万の神を生かしている。ヒトデのヒトデ以上の記憶をあの水船は運んでいる。湯気みたいな意味が空気を切り裂くように広がり、鳥たちを治療している。

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