【小説】紅を差す人(終)
「無理心中ということで片がついた。嫌な思いをさせたな。許せよ」
「いえ……お勤めですから。間に合わなくて、申し訳ありません」
「わしが遅かったのだ。迂遠に過ぎた。そう縮こまるな。もう一つ食え」
仁孝さまは最後の団子をおれにくださった。三つあったから、たぶん伊都乃の分だと思う。伊都乃はいないし、仁孝さまが食えと言ってくれたから、食べる。おいしいけど、なんだか飲み込みにくい。
「仁孝さま、二人は本当に死なねばならなかったのですか?」
伊都乃は林もくのいちも死んで当たり前みたい