魔法騎士レイアース・レビュー補遺

 これ、元は『アニメのかたろぐ』用の原稿だったんですが、枚数間違えちゃって、というか全体の都合で2ページの予定が1ページになってたの忘れてて、校了直前に半分に削らなきゃいけなくなってしまったんですね。で、以下が削る前のバージョンです。

 恥ずかしい話だけれど、リアルタイムで『魔法騎士レイアース』の番宣広告を見た時は「ああ、セーラームーンの二番煎じか」と思ったものだった。

 実際、セーラームーンのメガヒットがあったからこそのレイアース、という面はあったろう。だが、大した期待を抱けないまま(だったら観るなよ!)オンエアされた第一話を見はじめると、すぐに二番煎じという印象は消え去っていた。とにかく、話のスケールがデカい。作り手の「とにかく大きな物語を作って、視聴者をそこにドップリ入り込ませたい!」という思いがドーンと伝わってくる気がしたもんだ。つまり、いきなりノレたのだ。

 3人のヒロインが出会うのは東京タワー、そこに唐突に干渉する異世界からの力、舞台はいきなり、剣と魔法が支配する異世界へと飛ぶ。(CLAMPは東京タワー好きだよね)
 強引な展開である。同じ日本の東京からスタートしても、基本的には生活圏内、つまり麻布の辺りで侵略者を迎え撃つセーラー戦士とは、かなり対象的だった。
 これは本当に恥ずかしい話だが、当時はCLAMPのことをよく知らなかったので、原作者は男性ではないかと思っていた。だって、出てくる魔獣は大型で、モロに怪獣だったし、魔神(と書いてマシンと呼ぶ)という名称の巨大ロボットまで出てくるんですよ。しかも操作方法はジャンボーグAスタイルだ。そもそも巨大ロボットを魔神と呼ぶ発想自体、マジンガーZと直結しているわけで、男性の作だと思っても無理は無いと思う。1989年に商業デビューしたCLAMPが、4人の女性漫画家による創作集団だと知ったのはかなり後だった。
 今にして思えば、あれはCLAMPの時代だったのだ。チーム制の利点を活かした手堅い作り、特に緻密に作りこまれたキャラクター造形で、CLAMPはその登場から数年で90年代を代表するヒットメーカーになったと思う。
 CLAMPが凄かったのは、何よりも読者である少女たちが求めていた物語を誌面に展開したことではないか。少女漫画史に残るブームを呼んだファンタジー、日渡早紀の『ぼくの地球を守って』が1987年にスタートし、94年まで連載が続く。そして92年には『美少女戦士セーラームーン』がはじまっている。80年代からゲーム機の普及もあって、RPGへの興味が高まっていたのも大きいだろう。この時代の少女たちは、スケールの大きなファンタジーを欲していたのだ。そして、そんな時代を背負うかのように出現したのが、少女漫画としては異例なまでに骨太なファンタジーを得意とするCLAMPだったのだ。稀代のヒットメーカーが、営利的な目的で作られた集団ではなく、気の合う友達、同人仲間が集まってのチームだと言う点が興味深い。あまりにも計算されたような作風故に、CLAMP作品を敬遠する人もいたが、あれはやはり計算ではなく、時代の欲求により生み出された作品群なのだ。
 1部と2部に大きくわかれている『魔法騎士レイアース』だが、当初の物語は、いったん1部で完結している。光、海、風の3人は、彼女らを異世界セフィーロに召喚したエメロード姫を救うために、様々な敵と闘いながら3体の魔神を探す旅を続け、成長してゆく。ちなみにレイアースというのは、最後に遭遇する炎の魔神の名前なんですねこれが。
 波瀾万丈の旅の果て、遂にラスボスのザガートを倒した!と思ったところで衝撃の展開が待っていた。ザガードが死んだ瞬間、エメロード姫が凶悪化するのである。なんと、真のラスボスは姫だったのだ!詳しい説明は省くが、一応の説明はあるものの、テレビの前の子供たちは目が点になったのではないか。少なくともオジさんは、開いた口が塞がらなくなりました。実際、主人公の光たちも、状況を把握できなくて困っているような描写があった。そりゃ当然だ。悩んでいる光たちに、凶悪化する前のエメロード姫の声が聞こえてきて、自分を殺してくださいと頼む。CLAMPのお話は、時々、妙に陰惨になる傾向がありますね。悩んだ挙句、姫を倒して第1部完となり、3人は元いた東京タワーへと戻るが、次なる戦いが彼女らを待っていた。3人の恋バナも描かれる第2部はきれいなハッピーエンドだが、時折妙な陰惨さを感じて、ちょっと引っかかる時があった。でもおそらく、それがCLAMPなんだろう。

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