元エンジニア弁護士が証券会社と法律事務所でダブルワークしてみた話 #LegalAC


はじめに

このnoteは、法務系Advent Calendar2023のエントリーです。naka2656さんからバトンをいただきました!

私は元エンジニアで、その後弁護士になり、法律事務所で働いた後、現在はみずほ証券とインハウスハブ東京法律事務所でダブルワークしています。
よく「意味不明なキャリアですね。」と言われるので、本noteでは、
・キャリアの概略
・なぜダブルワークを?
・ダブルワークをして良かったこと
・ダブルワークの大変なところ
について書いていきたいと思います。

インハウス弁護士の先生でダブルワークをしてみたいと思っている方がいらっしゃれば、少しでも参考になればいいなとも思います。

(本当は格調高く示唆に富む記事を書きたかったのですが、単なる自己紹介みたいになっていましました。ご容赦ください。)

キャリアの概略

~エンジニア時代

新卒で、日系大手企業の社内ベンチャー制度でできた組織にシステムエンジニアとして入社しました。その後、6年強、システムエンジニアとしてシステム開発に取り組んでいましたが、最後の年に司法試験に合格したので、そのまま弁護士に転職しました。

元エンジニア弁護士の先生は何名もいらっしゃるかと思いますが、私の少し変わっているところは、ロースクール→エンジニア→弁護士、というところです。
元々ロースクール在籍中は、司法試験に合格してから民間企業(総合職や、エンジニアかコンサル)へ、と思っていたのですが、最初の司法試験に受からなかったのでそのまま就職したという流れです。

入社後は司法試験は受けるつもりはなく、エンジニアとしてキャリアを積んでいくつもりだったのですが、入社2~3年目くらい?に上司に「せっかくだから司法試験受ければ?」と言われて、司法試験の勉強を再開しました(「せっかくだから」というところの意味は理解できていなかったのですが。)。
それから、平日の就業後+休日に司法試験の勉強するという生活を経て、司法試験になんとか合格しました(過去問演習がほぼ出来ていなかったので、問題傾向が変わった年でラッキーでした。)。

~法律事務所時代

その後、現在までにタイラカ総合法律事務所とGVA法律事務所という2つの法律事務所に所属しました。いずれの事務所でも、スタートアップやテック企業のクライアントのサポートを中心におこなっていました。VCのサポートやM&A、訴訟も結構やっていたかなと思います。

タイラカ総合法律事務所は所属期間こそ短かったですが、弁護士としてのイロハや要求水準について学べました。「ここまで調べるのか。」「ここまでこだわるのか。」「ここまで仕事に打ち込むのか。」と何度も思い、私の弁護士像というか目指すべき水準が形作られた貴重な期間でした。いまでも、当時の指摘事項や思考過程を振り返って、目の前の案件に取り組むことはよくあります。当時のメモがなくても頭に残っているので、本当に核心的な指摘だったんだろうなと思います。

GVA法律事務所では、初めてスタートアップファイナンスやファンド法務に関与する機会を得ました。ここから私のスタートアップファイナンスやファンド法務含めた金融への興味が加速していきます。

2つの法律事務所では結構ハードワークをして、いろいろ経験・勉強できたかなと思っており、今でも感謝しております。

~現在

・みずほ証券
2023年3月から、みずほ証券法務部に移籍しました。前職でスタートアップファイナンスやVC法務に関与することで、ファイナンス・金融に興味を持ち始め、「金商法、面白っ・・」と思ったことが転職の大きなトリガーでした。また、前職ではWeb3案件を多く対応してきましたが、(私が思うに)Web3法務は金融法の発展版であるため、そもそもの金商法等の理解を深めたいと思ったことも転職の理由としてあります。詳細は書けませんが、現在は証券会社の法律分野に広く関与しています。

・インハウスハブ東京法律事務所
そして、2023年6月からはインハウスハブ東京法律事務所にも所属して、こちらではスタートアップ・VC等々、引き続きサポートさせていただいています。働き方も自由で、自分の裁量をもって働くことができています。

なぜダブルワークを?

よく聞かれるのですが、結論、2つ理由がありつつも、恥ずかしながらいずれも特に壮大な理由ではないです。

一つは、ダブルワークできる環境と能力と時間があるのであれば、自分の経験や能力を所属企業以外のクライアントにも還元したいという、という理由です。

もう一つは、自分の能力を向上させるための機会を得たいという理由です。これは、いろんな経験を経ることで能力の向上に資すると考えたためです。もちろん、目の前にある仕事を死ぬ気でやるということがもっとも能力の向上に資することは前提で、「目の前にある仕事」を複数個所で獲得できればという意図です。

上記は要するに、「出来ることはチャレンジしたいし、成長もしたい。」ということですね。

結論、ダブルワークをして上記2点は達成できている/達成できそうなので、満足しています。

ダブルワークをして良かったこと

今回noteを書くにあたってダブルワークをして良かったと思うことを改めて整理してみました。色々ありますが、大きなところでは2つ挙げることができます。

「ビジネスを進める」という意識を強く持てること

一つ目は、(証券会社だからというわけではなく)一般的なインハウス弁護士のダブルワークとして、良かったことについて書きます。
それは、「ビジネスを進める」という意識を強く持てること、です。
これは多くのインハウス弁護士の先生がおっしゃられるところかと思いますが、多くの先生がおっしゃるということは、本質なんだろうと思います。
ビジネスが進まないと話にならないと感じることが多々あり、これは危機感といえるほどに感じることもあります。
例えば、案件に関与している際、単にリスクを指摘するだけではまったく意味がないと強く思えるようになりました。「リスクはこれ。ただこうすれば回避/低減できる。あるいは、このリスクは許容可能ではないか。」と考えることが圧倒的に増えたように思います。関係部署へのヒアリングも、法律事務所時代のヒアリングより粒度が細かくなったような気がします。そのうえで、関係部署と協力して、適切なビジネスの進め方を検討することが大事かなと思えるようになりました。

同時に、外部の弁護士としてクライアントのサポートをする際にも、この意識をもってコミットする必要があり、これができれば相当なバリューになると考えるようになりました。前職の法律事務所でもこういった点は強く意識していましたが、やはりビジネスの当事者になってより強く実感するところです。

日頃会社で上記のような考えで業務にあたっていると、自然とインハウスハブ東京のクライアントに対してサービスを提供する際にも、「ビジネスを進める」という点は強く意識できるようになってきたと思います。この点はまさにダブルワークをして良かったことだと思います。

証券会社の内部の知識を獲得できたこと

もう一つは、証券会社ならではのところです。詳細はここではお話しすることができませんが。。

インハウスハブ東京のクライアント層は主にスタートアップやVC/ファンドなのですが、証券会社もこれらのクライアント層との接点は多くあります。
IPOの引受審査や、LP投資家としての投資業務といったところが一例です。こういった証券会社の業務を内部の人間として知ることができるのは、非常に有益な経験かなと思っています。法的な知識はもちろん、証券会社内部でどのような考慮要素をもとに意思決定をしているかという点は、おそらくインハウス弁護士として内部に入っていないとなかなか解像度高く把握できないのではないでしょうか。

これらの経験・知見はインハウスハブ東京法律の弁護士として、魅力的なコンテンツになるのではないかなと思っています。この点もダブルワークをして良かったことだと思います。

ダブルワークの大変なところ

時間管理が大変?

ダブルワークの大変なところは、何といっても時間管理が大変なところでしょうか。というか、これに尽きると思っています。
(私もですが)会社にフルタイム正社員でジョインしている場合、当然少なくない時間を会社の業務に充てなければなりません。それに加えて、法律事務所の仕事を兼務するというのは、簡単ではありません。

私の場合、転職直後から割と会社業務にフィットできたというのもあり、会社業務はほぼほぼ定時過ぎに終えることができています。そのため、その後に法律事務所の仕事に取り掛かることはそれほど苦ではありません。
また、土日にインハウスハブ東京の仕事をすることも特に苦痛ではありません。この辺りは、仕事が好きで生活の中心になっても問題ない、という私の性格が寄与している部分が大きいと思います。ただし、体調管理には要注意ですね。

本当はここでダブルワークの大変なところとその対応策を提示して、「インハウスハブ東京で一緒に働きましょう!」と書きたかったのですが、私の現状がたまたま上記のとおりなので、「効率よく仕事を進めて時間管理をしましょう。効率がよくない場合は、改善点を挙げて改善し尽くしましょう。」としか言えず。本当はこの辺りを厚く記事にできればと思っていたのですが、力及ばず。。

余談ですが、効率よく仕事を進めるために時間管理として意識していることを強いて挙げるとすると、以下の2つかなと思います。

①タスクは開始時間・終了時間両方で管理する
NG:AとBのタスクは今日終わらせる。
OK:Aのタスクは今日9:00に着手して11:00に終わらせる。
   Bのタスクは、13:00に着手して15:00に終わらせる。
  予定とずれが出たら、すぐに予定を修正する。

②一つのタスクの中でも細かいタスクに分けて順に処理する(ツールで一発で解決できるタスクもありますね。)
NG:契約書をレビューする
OK:最初に全体を大まかにチェック
  次に雛形と比較して詳細をチェック
  次に類似案件との差分をチェック
  次にオーダーを反映できているかチェック
  次に条ズレチェック
  次に存続条項チェック
  次に引用条文チェック


ダブルワークに興味がありつつ悩みや不安があるインハウス弁護士の先生がいらっしゃいましたら個別にご連絡ください。

これから

これから、については正直まだ確定的な未来は描けていません。「10年後どうなっていたいか?」という質問は苦手なタイプです。
ただ、ダブルワークは自分にとってメリットが大きく、クライアントに還元できるものも多いと信じているので、ダブルワークは続けるんだろうなと漠然と考えています。
IT × 法律 × ファイナンスの軸はある程度固まってきたので、これをもとに色々キャリアを構築していきたいと思っています。

以上、雑文となってしまいましたが、ありがとうございました。
次は、GVA時代の先輩の仲沢さんです!


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