老害の回想

あれは2019年正月のことです。

当時にじさんじでも人気のライバー7人が出演する『にじさんじのくじじゅうじ』というバラエティ番組がありました。制作スタッフは現在の『レバガチャダイパン』制作陣と同じ人達です。
で、その正月特番にPANORA編集長の広田氏が登場し、今後のVTuberの展望を語りました。
そして最後に「これからは海外進出ですね」と締めたのです。

それで「美兎ちゃんどう思う?」と司会のタイムマシーン3号山本氏に振られた委員長は、バラエティ番組なのにおふざけ一切なしのガチなノリで持論を語り、目の前にいる広田氏の意見を真っ向から否定しました。
細かくは覚えていませんが、確か「わたくしは海外に出るつもりはありません」くらいはきっぱり言い放ってた気がします。

(委員長が海外進出に否定的なのはそれ以前にも何度か表明していて、委員長のリスナーならたいてい知っていたことでした。理由は「国内のヲタクにしかわからないことばっかりネタにしているから」で、まぁ正直、そらそうだよな、と当時の自分も思っていました。)

折しも、その数日後にホロライブがbilibiliと正式に契約しました。それを契機に、以降ホロライブが中国市場を席巻します。
その中でも特に人気だったのが白上フブキで、明らかに中国人気が国内人気を上回ってました。……というかその前、2018年の秋頃からフブキングの中国人気がすごくて、それでホロは中国進出を決めた、と言っても過言ではないはずです。

委員長とフブキング、2年前に2人はとても対称的な立場にいましたが、ただ2人に共通して言えるのは、2人とも、自身がVである前にVのヲタクだということでした。
だから、お互いの配信は間違いなくその頃から、というかもっと前からチェックしていたでしょう。別に敵情視察とかそういうのではなく、単に自分の楽しみのために。
そこで相手の配信に何を思い、何を感じたのかまでは、ただの一般リスナーである僕には知る由もないことですが。ただまぁ、
「委員長がなぜ海外に出ようとしないのか」
「フブキングがなぜ中国で人気があるのか」
くらいはお互いに察していたのではないですかね。


その後月日が流れ、2020年に入って、ホロライブは今度は英語圏で爆発的な人気を得て、今までの日本市場よりも中国市場よりもでかい、巨大なパイを手にすることになりました。

そんなこんなでホロライブが大躍進を遂げようとしていた頃、ちょうど1年前の、2020年4月くらいでしたか。
委員長があつ森の実況中、リスナーとのやり取りの中で

「うーん海外人気かぁ……わたくし海外人気はないんだよなぁ……日本でしかわからないヲタクネタばっかり言ってるしなぁ」

と、ちょっと悲しそうな体でこぼしたので、おや、と思ったのを覚えています。
2年前は海外進出「しない」と確固たる自分の意志として言っていたのに、そのときはそれを自分の弱点だと語ったので。

ただ、その弱点を悲しむ理由が「しずえのエロ同人誌の数が自分の倍ある」という実にくだらないものだったので、どこまで本気で悲しんでいたのかわかりませんが。


しかし、この配信から約10日後。
来たんです。ヤツが。

画像1

委員長が海外人気のなさを嘆くあまり本気で海外を獲りに行ったのか、はたまたただの偶然かわかりませんが、とにかくこの動画は海外でバズりました。現在は委員長のチャンネルで最多再生数を誇っています。

とはいえ、たまにこいつ↑が配信を荒らしに来ることがあっても、委員長自身の配信スタイルは結局2年前から、というかデビュー初期の3年前から2021年4月の今に至るまで特に変わらず、海外進出を意識する素振りは今のところありません。


一方、ホロライブ。
大躍進から約1年後の2021年に入って、中国での大炎上を経て、2019年の間は事実上ホロライブを支えていた中国市場からの撤退を余儀なくされてしまいます。

この件の詳細にここで触れることはしませんが、とある中国囚人(委員長のリスナー)によると、ホロライブの評価が下がった反動で、にじさんじの中国人気が相当上がったそうです。単に駆け込み寺になっただけのような気もしますが。
ぞの中でもこと委員長に関しては、さっきのあいつ↑のおかげで中国人気はかなり高いそうです。
bilibiliにも公式の翻訳組がおり、せっせと委員長の配信に中国語字幕をつけてアップしているようです。でも委員長はbilibiliに進出しておらずチャンネルがないので、それらの字幕動画は全部でろーんのチャンネルに上がるそうです。どういうことなんですかね。

……などとつらつら書いていたら、その中国囚人がこぼした一言をふと思い出したので、その言葉をこの雑文の締めにします。

「委員長のこと大好きだから、絶対中国に進出してこないで欲しい」


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