神椿スタジオについて語ると長い(不可解弐Q2の感想あり)

(神椿スタジオについて書きますが、これは頭の中で捏ね回した怪文書です)

持続可能な開発目標(SDGS)というものがあります。
企業はビジネスでこれを掲げているわけですが、要するに今後も続いてゆける世界を作るため、貧困や教育格差の解消、クリーンエネルギーといった17の目標を並べたものです。

さて、創作の世界はどうでしょうか。例えばスタッフロールに自分の名前が残るような仕事……サラリーマンには想像もつかない華やかさです。憧れる人は多いだろうし、今後も放っておいたところで人は集まる。そんな業界には才能もひとりでに集まってくるでしょう。何かを作るという行為は人間の自然な欲求から発しているのだから、止めようが無いのです。放っておけばいいのです。

ですが、そうではないかもしれない……と考えたのが神椿スタジオだと思っています。憧れてもらうには、先ずは体験が必要です。寿司を食べさせてもらえなかった子供は、そもそも寿司を食べられません(実際そういう寿司屋の息子を知っています)。夢を見せられてこなかった子供は、きっと夢を見なくなるのでしょう。アニメを観させてもらえなければアニメは初めから観ないし、音楽だってそうです(浴びるようにアニメが観たかったし音楽でヘドバンしたかったけれど、禁止されていた……という人には既に、体験が宿っていたのだと思います)。

話は飛びますが、神椿スタジオの「音楽と物語で世界を「少しだけ」変える。」とは、どういう意味でしょうか。世界を大きく変えることはできないが、貴方の人生にごま塩程度の豊かさを与えてみせます、という謙遜でしょうか?
「少しだけ」とは、破壊的でないという意味だと思います。世界を変えるとはいえ、革命だとか打倒だとか、イッキ・ウチコワシのような方法は取らないという意味です。ここで話が戻るのですが、「世界を「少しだけ」変える。」には、これから先の世代に体験を与えることで、未来を変えてゆくという意図が込められていると考えます。即効性はありませんし、もしかしたら結果を見届けることもできないかもしれませんが、そうした方法でも世界は変えられるわけです。

先の世代に強い体験を与えることで、憧れを抱いてもらう。持続可能なクリエイティブのために、十代から二十代前半に層を絞った創作プロジェクト、それが神椿スタジオの正体ではないでしょうか。商売としてはグッズ・CD類の価格が割と社会人レベルな感じなので、徹底できていないとも言えますが……心意気は感じられます。先日の全編無料配信ライブ『不可解弐Q2』のような機会こそ、若年層に向けた大きな意義があります。

さて、『不可解弐Q2』で突き刺さったのは、やはりアンコール以後の展開です。『不可解』も四度目となり、型破りなライブの構成も、これはこれで様式化しつつあると思えてきたところに、魔女五人が揃ってのV.W.P(Virtual Witch Phenomenon)の結成です。術式を完成させるように、魔女、祭壇、宣戦、言霊、電脳、魔女(真)が続けて歌われる……ほんと突き刺さりましたね。いずれも五人が揃うことで完成する曲だったと、この時初めて知らされたのですから。V.W.Pの曲の歌詞は、「魔女」を除けば、残り四曲は、自分達は偽り(バーチャル)だけれども、この感情(バーチャルの存在に宿った感情? 虚構の世界が見る者に呼び起こす感情?)は真実だという内容が共通しています。理詰めである筈の仮想世界の深奥に、オカルトが在るという転倒に惹かれます。

この中で、興味深いのは『電脳』です。曲中に魔女達の台詞が入ります。
「歌は魔法だね。世界も運命も変えられる、私達の希望だよ」「逃げられないなら、抗えばいい」「私の心は綺麗なんかじゃない」「新しい世界を、みんなと見たい」「今度こそ、みんなを守る」「それが私の、使命」「滅びの未来を受け入れるなんて、私は嫌」「あの子を守りたい気持ちだけは、本当だから」「この闇の向こうにある、光を」
歌の内容も、「物語」を押し出したものです。
新たな展開への伏線でしょうか?

V.W.Pですが、五人揃って鳥のモチーフの戦隊ということで、これが一番言いたいことなのですが、『科学忍者隊ガッチャマン』の影響を感じます。もしかしたら、先ず「雛鳥」から着想して、鳥類に漢字の当て字が多かったとかいう理由かもしれませんが……。
閉塞した世に蔓延る、名前の無い化物を祓う魔女達……いわゆる人の悪意と対峙する構成は、特に『ガッチャマンクラウズ』の影響が大きいものと考えます。

プロデューサー氏は机の引き出しに、十年もののV.W.Pのストーリーを隠していたのではないでしょうか。構想ニ年とか、嘘です。もっと長い筈です。分かっているんだぞ! 今後V.W.Pにどのような物語が展開するのか期待してます、という所で終わりにします。

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