ゴッズオウンカントリー感想追記 考察のようなもの 婆ちゃんの涙とゲオルゲの笑みとFワード

「ゴッズ・オウン・カントリー」今の時点でおそらく30回ぐらい繰り返し観ているのですが、観るたびに色んな考えが頭に浮かんできて仕方ないので追記です。既にどなたか指摘されてる事かもしれませんがその辺はご容赦ください。以下ネタバレ含みます。

婆ちゃんの涙
マーティンの入院に付き添っていた婆ちゃんが着替えを取りに家に戻った時に、使用済みと思われるコンドームを発見してしまいその後アイロンかけながら泣くシーンがありました。
あの涙はどういう思いから来ているのか?

ジョニーは家業のため殆どが家と牧場の往復で夜時々飲みに出かける程度。家では自分の服もどこにあるか分からないジョニーを婆ちゃんはまだまだ子供だと思っていたのではないでしょうか。
そしてマーティンが病気で世話する自分も高齢でいっぱいいっぱい。ジョニーが成人男性として普通に持っているであろう欲望を持て余している事に気がつく余裕も無く、彼を不甲斐無く感じてついついキツく当たってしまう。思いがけず目にしてしまったコンドームでやっとジョニーが普通の若者らしい幸せを味わっていた事を知るのですが、その幸せも束の間、期間限定の雇用であるゲオルゲはすぐにジョニーの元を去ってしまう。マーティンは回復の見込みは無いし自分もあと何年元気でいられるか分からない。この先彼は孤独の中全て背負う事になってしまう。婆ちゃんはそんなジョニーが不憫になってしまったのではないでしょうか…

ゲオルゲの笑みとFワード
朝方用を足している最中ジョニーが襲おうと近づいてきたのに気付いたゲオルゲが呆れたように苦笑いを浮かべて首を振っていたシーン。何を思って苦笑いしていたのか?

ゲオルゲは移民労働者です。おそらくイギリス国内を転々としながら職を得ていたゲオルゲは、かなり過酷な労働条件のもと、いわゆる搾取されているといっていいような条件で働いていた事もあるはずです。搾取は労働力としてだけでははなく、もしかしたら他の面でも…
ジョニーが近づいて来た時、またか…こいつもそうか。もう搾取されたくない。どうせ短期間で終わる仕事。やられるぐらいならやり返せと思ったのかも知れません。

誰かに恋をすると自分の世界がそれに支配されてしまう感覚は多くの人が経験する事でありますが、当初は雇用主であったジョニーが支配する側であったのに、ジョニーがゲオルゲにメロメロになってしまった事で徐々に2人の関係性が変わってきます。
しかしパブでの一件(自分はジョニーはアルコールとセックス依存症だと思うのですが。この件はいわゆるドロップアウト?)でゲオルゲに去られてしまったジョニー。心は彼に支配されてしまっているので彼が戻ってきてくれるように希望通りの条件を整えるしかありません。ゲオルゲの示した条件である、牧場での仕事のやり方を変えるという事。頑固者のマーティンお父さんに伝えるのはかなり勇気が要ったでしょうがジョニーは頑張ります。

劇中「freak」「faggot 」のやり取りは2回出てきます。
1回目はお互いのセクシュアリティは同じ。お互い様だよ。という意味であろうと思うのですが、2回目はどうでしょうか?
俺とお前はもう雇用主と労働者ではなくてお互いfaggot。対等なんだよ。そんなふうに思えました。

ラストシーンで運び出されるトレーラー(売り払った?)を見届けた後、ゲオルゲがジョニーの肩をポンと抱きます。会社などでは上司が部下に対して「頑張れよ」みたいな感じでやりますが、目上である人に対してやるアクションではありません。その後門も家のドアもゲオルゲが開きます。ジョニーはもうゲオルゲにコントロールされてしまっている事を象徴しているように思えてしまいました。恋愛は惚れた方が負けだと言われますがジョニー完敗です。
しかしゲオルゲの魅力的なこと。あんな人が自分の目の前に現れたら…と思った方も多いのではないでしょうか。観てるこちらもゲオルゲに完敗でした。