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想いをカタチに、アクセサリーに込めて。街の魅力に気づける機会をふやしたい(2020/12/24掲載)

今回のインタビューは、タタキアゲジャパンが運営する「Park+@大工町公園」に第1回目から出店くださっているEeny,meeny,miny,moe*の金子香織さんにフォーカスしました。
パークプラスでも人気のEeny,meeny,miny,moe*のアクセサリーは、市内にとどまらず、全国にファンを持ちます。その魅力は、金子さんが培ってきた経験と想いの積み重ねから来るのかもしれません。
そんな金子さんに、ハンドメイド作家として活動されるきっかけや活動の軌跡、パークプラスを通して思うことを伺ってきました。

<タタキアゲジャパン公式サイトアーカイブ>
本記事は、タタキアゲジャパン公式サイトに掲載されていたものです。
肩書・内容は掲載当時のものとなります。


生まれ育ったいわきの豊かさに気づきUターン

ーまずは、金子さんのプロフィールからお伺いさせてください。

いわき市出身です。家は郊外にありましたが、いわき駅裏にある旧城跡で祖母が下宿屋を営んいたので、長い休みになるとそこで過ごすことの多い子供時代でした。いわきの街中には、ワクワクするものがたくさんあって、そこで刺激を受けて育ったというのが私の元になっているのかなと思います。

高校卒業後は大学に進学し、神奈川で6年間過ごしました。その後、栃木に引っ越し、車で20~30分いけば那須高原がある黒磯という素敵なところで暮らしました。

でも、だんだんと栃木での暮らしが肌に合わないと感じるようになり、いわきの実家に帰るとすごくホッとする自分に気づくようになりました。東京や那須に比べたら物は少ないんですが、私にとってはいわきの方が刺激的な場所だなと感じるようになり、いわきにUターンすることを決意しました。

ーいわきの方が刺激的と感じた理由はなんですか?

一番の理由は、山があって、海があることです。

栃木は海なし県なので、ちょっと何か違ったんですよね。海があるというのは、私にとってはすごく大きかったんだと思います。

四季をしっかり感じられて、程よく海があって、程よく山がある。そういう自然の豊かさが自分にとっては、居心地が良い場所だったんだと改めて気づくことができました。

いわきでハンドメイド作家として活動を始動

ーいわきに帰ってきて、ハンドメイド作家として活動されるきっかけは何かあったのでしょうか?

きっかけは2つあるんですが、1つ目は、「Lily chic(リリーシック)」さんといういわきで活動されている作家さんとの出会いです。

当時私は、いわき芸術文化交流館アリオス内にあるカフェで働いていたのですが、そこでハンドメイド作品を販売する機会があり、Lily chicさんの作品に出会ってファンになりました。

Lily chicさんの作品。

Lily chicの柴野亜希子さんは、ハンドメイド作家として全国誌「私のカントリー」でも紹介されたこともあり、幅広く活躍されている方です。まず、いわきにそんなすごい方がいらっしゃるんだ!という驚きと、子育てや主婦業をメインにしながらも、それを一つの魅力としながら活躍できるんだ!ということにすごく憧れを抱きました。

特に女性は、育児や家事などで自分の好きなことを後回しにしたり、諦めてしまうことも多いと思うのですが、Lily chicさんとの出会いは、主婦をしながらでも、何か自分の好きなことで進める道もあるんだということを知るきっかけになりました。

ーもう一つのきっかけは何だったのですか??

娘の幼稚園で開かれたバザーです。

娘が通っていた幼稚園では、バザーに親が手作りした品を提出しなければいけないという大変な課題があったのですが(笑)、その時に初めて子供用のヘアゴムを作ってみたんです。

そうしたら、それが早速バザーで売れて、私の作ったヘアゴムをつけた子が嬉しそうに園庭を走り回っていたんです!その姿を見たときの喜びが忘れられなくて、そこからどんどん作品を作るようになりました。

当時、ハンドメイドマーケットの「minne」がCMをし始めた頃でもあったので、ハンドメイドブームの波に乗った感じもありましたね。知り合いのお店にも作品を置かせていただけることになり、お金をいただいて販売するようになってからは、責任感を持って突き詰めて作るようになっていきました。

世界を見て、自分だけのオリジナルアクセサリーを

ー金子さんの作品はとても個性的で独創性があると思うのですが、どんなところからインスピレーションを受けて作品作りをしているのでしょうか?

元々は幼稚園のバザーが作品作りのきっかけだったので、よくあるデザインを真似するところからはじめました。

でも、色々な人たちの作品を見て触れていくうちに、もっと自分だけのデザインを追求しなければと思うようになりました。

パークプラスで販売されたEeny,meeny,miny,moe*のアクセサリー

作品作りのためのインスピレーションで言えば、美術館によく行くので、絵画や写真などの作品を見ることで刺激を受けて、自分の作品にも影響しているのかなと思います。

また、シャネルやクリスチャン・ディーオールなどの世界的なコレクションを見ることが好きなんですけど、そこから刺激をもらうことが多いですね。ショーを見て、来年、再来年のトレンドを知るということも大切にしています。

世界を見て、そこに近づきたいという思いで、向上心はかなり上を向いてより良い作品作りを心がけているので、そこが独創性につながっているのかもしれません。

行動力と奇跡で、作品の販売は全国へと広がる

ーEeny,meeny,miny,moe*のすごいところは、いわき市内にとどまらず、全国でも販売されていることだと思うのですが、販路はどのように広げられたのでしょうか。

それに関しては、運が良かったんです!

出店は、市内や県内のイベントに出させてもらい、店頭販売に慣れるところから始めていきました。

ある日、「コトモノマルシェ」という日本最大級のハンドメイドアクセサリーのセレクトショップをInstagram(インスタグラム)で見つけ、すぐに社長さんへ「どうやったら取り扱っていただけますか」とダイレクトメッセージを送ってみたんです。今考えるとすごい行動力ですよね(笑)

お返事は、公募は行っていなくて、まずはコトモノマルシェのイベントで店頭販売をして、売り上げがよければお取り扱いできるかもしれませんという内容でした。

ただ、その店頭販売というのが、東京で1週間~2週間という期間、毎日販売しなければいけなくて、子供もいますし、当時は別の仕事もしていたので諦めていました。

でも、たまたますごくいいタイミングで1日だけチャレンジできるという企画があり、そこに応募して出店させてもらえることになったんです。

場所は新宿駅直結の複合施設「NEWoMan新宿」。大手のすごい作家さんたちの中に、ポツンと田舎者の私が入ったような形で、今考えるとよく一人で行ったなと思うんですが、でもそこで、なんと一番売れてしまうという信じられない奇跡が起こったんです!!

キレイめなオフィス向けの商品が多い中で、個性的な私のアクセサリーは単に目立ったということもあったと思うんですが、そのことをきっかけにぐんと取引先が広がりました。

価値を生むこと、想いを伝えること

ーブランドを育てるということの秘訣は何かありますか?

ブランディングについてはすごく考えましたね。

まずは、お客様のために素敵なものを届けたいという想いを第一にしています。

そのために、長く大切に使っていただけるよう、パーツも良い素材を扱うようになりました。他の人が使っていないパーツで自分の好きなものを作ろうとすると、ビンテージのものになるのですが、良い素材を使うとどうしても価格帯が上がってしまいます。なので、その価格で売る意味というものを定着させていかなければと考えるようになりました。

パーツで言えば、何度も取り寄せて、長く使えて壊れないものやサビないものを選び、実際に試して、経年劣化も確認し、信頼を得られる商品を作るようにしています。

お客様には「もっと安いアクセサリーを売って欲しい」と言われたこともあります。でも、私はできればどんどん値段を上げて価値を生みたかったので、単に値段を下げるのではなく、どうしたら自分の想いを伝えられるかということを考えました。

ーどんな形でお客様に想いを届けるための工夫をされたのでしょうか。

自分でイベントを主催することに挑戦しました。

場所は鹿島町にあるカフェ「リュー・ドゥ・サクラ」さんをお借りしました。

サクラさんのこだわりを貫く姿勢と世界観がすごく好きだったので、そんな空間でイベントをやらせてもらえれば、私のブランドのイメージもお客様に伝わりやすいのではないかなと考えました。

イベントは、購入してくださったお客様に500円引でケーキセットを提供して、優雅に過ごしていただくお茶会のような形にしました。それがとても好評で、お客様に喜んでいただけたことが嬉しかったですね。

イベント時に提供されたケーキセット

そして、この主催イベントをきっかけに、自分でお客様を選んでいくということをしていこうと思うようになりました。大勢の人に作品を届けるのではなく、わかってくれる方に向けて発信したいと思ったんです。

常に試行錯誤をしながらですが、想いを届けて、ファンになってくださったお客様を大切にするというスタイルを持てるようになりました。

他には、鹿島ショッピングセンター・エブリアで「エブリアマルシェ」も行っていましたよね?

エブリアさんでは、いわきの素敵な作家さんたちを集めて年4回1年半ほどイベントをやらせていただきました。

実は、今年の春にも行う予定だったのですが、コロナ禍で中止になってしまったんです。

その時、作家さんたちの手元には、冬の間に作りためていた作品が世に出せずに手元に大量にあって、販売スペースはあるのに、イベントが中止で売ることができないという状態でした。

それなら、この場所を私に貸してください!とエブリアさんにお願いをして、イベントではなく、コンセプトショップという形で作家さんたちから商品を預かり、私が接客販売をするという形のお店を2週間オープンさせました。

今は、自分の活動よりも、ハンドメイドを通して出会った素敵な作家さんや作品をもっと多くの方に知ってほしいという想いの方が強くある気がします。

スキルや想いを、次の世代へつなげていきたい

ー金子さんの今後の展望をお聞かせください

今までの活動や自分のスキルを若い世代の子たちに教えていくということをしていきたいと思っています。

エブリアでのイベント時に社長さんから「自分の作品の魅力を伝えるのがすごく上手いので、そのノウハウを若い従業員の子たちに教えてくれないか」と言われたのがきっかけです。

自分の活動を通して感じたことや実績を詰んできたからこそわかることを伝えて、それを何かに活かしてもらえたらいいなと思います。

人材育成という今後の展望が意外でした!

私がまだ20代なら、もうちょっと自分のブランドをこうしていきたいとか思うかもしれないんですけど、もうそういう勢いみたいなものはないので、自分が残せるものって、今までのスキルとか想いなのかなと思って。

販売でも、お客様の動きを見て、何をしたがっているのか、どんな目的を持って来ているのか、話かけたり、聞き出したりするとわかってくるんですよね。おすすめできる物があるのか、今後おすすめできる商品はあるのか、そういうのを紐解いていくスキルやブランディングの仕方を、ハンドメイドを新しく始めた方に向けてアドバイスできたらいいなと思っています。

若い世代の子たちが頑張ってくれたら、今よりもすごく素敵な場所や活動が広がっていくんじゃないかと思っているので、少しでも自分のできる何かを次の世代へつなげていきたいです。

パークプラスを通して街の魅力に気づいてほしい

ー想いがつながっていったら素敵ですね!そんな、たくさんイベント経験のある金子さんから見たパークプラスはいかがでしょうか?

まず、公園に大きな木があるというのがすごく居心地が良くて好きなんです。

パークプラスは、のんびり穏やかな空気が流れているのに、ちゃんと目配り、気配りがされていて、心地の良い時間が提供されているなと感じました。関わっている人たちの空気感というのも大きいのかなと思います。

金子さんの活動のきっかけとなったLily chicの柴野亜希子さんも出店しています

第1回目から参加をさせてもらい、「屋外を日常に」というコンセプトにもとても共感したところがあって、もっと素敵な作家さんやお店を巻き込んで、自分ができることで協力したいなと思いっています。

回を重ねるごとに、アーティストの方々やお店のジャンルも増えて、どんどん広がりを感じるので、今のままですごく楽しみです!

パークプラスを通して、平の街にも人の流れができるといいですよね。

今のいわき駅周辺の街に感じる課題は何かありますか?

昔のいわきの駅前は、歩行者天国があって、面白い古本屋さんがあって、アンティークの家具や海外のボタンやレースなどが売られているお店なんかもあって、魅力的なものに触れられるお店が多かったなと思います。

私の子供時代は、お小遣いを貯めて、あそこであれを買う!というような小さな目標を立てたりして、大人になったらこんなお家に住みたいとか、こういう家具を置きたいとか、大人になる憧れを感じながら成長してきました。でも、今の子たちにはそういう経験をさせてあげれていないなと感じています。

良いものに触れずに100円ショップのようなものしか見ないで育ったら、どうなってしまうんだろうと、すごく不安に感じる部分でもありますね。

なので、できれば素敵なお店がどんどん増えていってほしいなと思います。私もイベントを通してですが、少しでもそのような機会を作っていきたいです。

最後に、これからタタキアゲジャパンに期待することがあればお聞かせください。

パークプラスの活動にとても期待しています。

街のなかに活用されていないもったいない場所ってたくさんあって、みんな知らない、気づいていないだけだと思うんです。きっと、行ってみたら気に入ってもらえる場所はたくさんあると思うので、パークプラスの活動でぜひ知ってもらう機会を増やしてほしいです。

昔の歩行者天国のように、あそこに行ったら誰々に会えるとか、そういう日常が街に戻ったら素敵ですよね。

写真・文 奥村サヤ
写真提供協力 熊田誠

金子香織(かねこ かおり)

いわき市出身。高校卒業後、神奈川にある大学へ進学。その後、栃木へ移住し、いわきへUターン。結婚・出産後に、ハンドメイド作家としての活動を始め、現在は全国各地のセレクトショップなどで取り扱いされている。

◾️Eeny,meeny,miny,moe*取り扱い店(2020.12月時)
・コトモノマルシェ(イベント時のみ)
・Thingsly(セレクトショップ)
・ZOZOTOWN・TONE(セレクトショップ)
・仙台・ラトリエドゥーサボン(セレクトショップ)
・いわき市・hauska(セレクト雑貨&家具)
・いわき市・ネオクラシック(セレクトショップ)
・いわき市・Lanthan(アイシングクッキー&セレクト雑貨)

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