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一目惚れしてしまった

Hornet600を1998年の3月に納車してから1−2年ほど乗り回していた頃、世の中はstreet customなどという流行りがピークに達し、猫も杓子もやれTWだ!SRだ!FTRだとか巷に溢れていた記憶がある。

そう!その中のSRの昔からあるバイクらしいバイクの造り、プラスチックなんぞ使ってないよ(実際には使われる箇所もあるが・・・)という作りに惹かれるようになっていた。

たがしかし、リアから見たあの貧弱な細いタイヤがどうしても気に入らない。
Hornet600のあのぶっといリアタイヤを生かして、カットしてショートにしたアルミフェンダーを取り付けて、クラシックな形状に改造したらどうなんだろうか?
って妄想して、手書きでスケッチを起こしたりしていた。
今で言う、ネオクラシックって奴なんだろう。

それがどうだ!
ある日、本屋でバイク雑誌を立ち読みしていたら、なんと『magni(マーニ)』というイタリアのメーカーから昔のMVアグスタ750Sをオマージュしたモデルが発売されるという記事を目にした。
その白黒写真に映し出された形状は、まさしく自分がスケッチして思い描いていた『ロングタンク・シングルシート』その物のイメージだった。


それが、『magni sport 1200s(マーニ スポルト 1200s)』だった。
ただのモダンレプリカか?といえば、そうではない。
しっかりとしたルーツがあるのだ。
HONDAがバイクレースで世界を獲る以前、世界の王者はMVアクスタだった。
そのMVアグスタのレースチームのチーフメカニックをしていたのが、そのmagni(マーニ)氏だった。

彼は市販車750sのチェーン化キットを始めとするカスタムキットから、自ら製作するフレームにMVアグスタほか、HONDA、MOTO GUZZI、BMW等のエンジンを載せたモデルを発表していた。
そして今度のモデルはSUZUKIの油冷エンジンを搭載すると記載されていた。
『やばい!あの化け物のエンジンを載せるのか?』なんて一人でワクワクしていた記憶がある。
残念ながら今となっては、このモデルのマーニフレームが最期の作品となってしまった。

2000年の東京モータサイクルショーにそのバイクを見に行く目的だけで訪れた。
案内の人に店舗が笹塚にあるから見においでと案内されたので、後日早速行って現物を目の当たりにした。
頭で描いていたイメージを遥かに凌ぐその姿に、思わず見惚れた。
店員の方に跨って良いと促され、跨ったが最後!
『コレクダサイ』と勝手に口が喋っていた。

当時DUCATIよりも高額だったこの車体を、購入することで5年のボーナス払付きのローンが決定し、周りからは『車買えるのになんで?』なんて言われたもんだった。
Hornet600の支払いも1年分しっかり残っていた。(売却してトントンだったかな?)
このバイクに乗るが為たけの、サラリーマン人生の選択になった。
が、世界に39台しかないこの車体はこの時手に入れてなかったら、二度と新車で手に入れることなどできなかっただろう。

さらに、20代の若いうちから身体に慣らすことのメリットを考えると、床の間バイクにして飾って満足するコレクションおじさんよりも、よっぽどイカしてると自己満足していた。
展示車両が1号機と2号機で自分のが3号機だというのも誇らしい。

これが、初めての一目惚れだった。

 




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