人事評価の穴_創業メンバー
社員として4社、クライアント様の会社を数社、スタートアップ企業を見てきて感じるのは、創業メンバーの特別感です。
それ自体は別にどうということもないのですが、人事評価において歪みを生じさせることがあり、その辺り、感じるところを書いてみます。
創業メンバーの特別感
創業メンバーは、事実「特別」であるとは思います。
創業時の混沌の中にいたから感知できる会社の事情というのものはありますし、それがスタートアップの成長期に役立つ可能性はそこそこ高いです。
その時期にそこにいなければ体得できない種類のもの、という意味で、まず特別といえると思います。
また、まだ何にも確たるものがなく、正直、そんなに手厚い条件を提示できもしないときに、事業に共感してくれて、条件を問わず参画してくれて、創業初期の不安な時期を一緒に渡ってきてくれたのですから、気持ちの上で特別に思うのも自然です。
ですので特別は特別なのですが、でもまあ所詮はそれだけのこと、でもあると思っています。
私は創業メンバーとしての所属も、創業メンバーではない所属も両方経験していますが、顕在的にも潜在的にも、またポジティブであってもネガティブであっても、「創業メンバー」という意識が人事評価に入り込んだ時、まあ碌なことにはならないなと感じています。
「創業メンバーである」ことそのものは評価要素を構成しえない
会社のメンバーは会社に必要な業務を遂行するために存在します。
そして、メンバーを評価する際は、会社が成長するために必要な業務への貢献度と給与額がバランスを保てるよう査定を行う必要があります。
そのとき「創業メンバーである」という単なる事実は特に何の要素も構成しません。
もし、勤続年数が評価に反映される評価制度であれば、創業メンバーの勤続年数は自ずと最長となるので、その意味では何らかの要素を構成すると思いますが、これはあくまで「勤続年数の長さ」の問題であり「創業メンバーである」ことが反映されているわけではありません。
また、先に例を挙げたように「創業時を知っているからこそのノウハウ」的な知見がある場合も、その知見が役に立っている場合に評価されるのであって、「創業メンバーである」ことが評価の対象ではありません。
ただ長くいるだけで特に役に立っていない人というのはどの職場にもいると思いますが、それは「創業時からいる」事実が加わっても劇的に変わるものではない、と思っています。
問題となるのは?
評価要素を構成しえないものを評価に入れてしまうことで評価が歪になり、適材適所の運用が困難になる。
問題はこれに尽きると思っています。
いくつものスタートアップを見てきて、適材適所って本当に大事なんだなと痛感しています。
業務が滞ったり、関係性がぎくしゃくしたりするとき、もちろんすべての要因ではないですが、不適切な人が不適切な業務を担っていることは多いです。
この不適切さは下記の両方の場合で存在します。
本人の能力以上の業務を任されている場合
本人の能力以下の業務担当しか任せてもらえない場合
いずれの場合も、度が過ぎてくるとメンバーの疲弊が進み、また優秀なメンバーが離れていってしまうので、是非避けるべき事態といえると思います。
穴と対処法
穴は、創業メンバーの特別感を「うっかり」人事評価に反映させてしまうことです。
これは人情としては、多くの人に本当に自然に発生してしまうと思われます。
が、人事評価においては、努めて意識し、その事実そのものにあまり重きをおかないよう注意しておく必要があると思います。
リスクを認識さえしておけば少なくとも「うっかり」反映させることはないはずで、それ故の歪さを回避することはでき、まずはそれが大切かと思います。
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