9月と小児がん
「がんになるとあの病院で治療をするんです」
中学3年生の夏、教室の窓から遠くに見える建物を示しながら社会科の教師が言いました。しばらく無言で見続けた後、何事もなかったように教師はまた教科書に戻りました。
あの時間はなんだったのか、今でも時折思い出してしまうくらい鮮烈な記憶となっています。当時の社会科の教科書にがんは登場しません。ダビンチも光免疫療法も免疫チェックポイント阻害薬もまだありません。診療ガイドラインすらまだない時代でした。
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小児がんを初めて意識したのは、マクドナルドのCMです。まだ実家に住んでいた頃ですので、やはり中学生か高校生だったと思います。塾や予備校の帰りに、食べるのが楽しみでした。
昨年「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が、新潟にもオープンしたようです。NHKの記事の冒頭部分を引用します。
コロナ禍で一時閉館していた期間には、医療従事者の休憩や滞在施設にもなっていましたね。
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以前、投稿した希少がんの記事の中で、「imasaito1280m」さんの記事をご紹介しました。何度読んでも考えさせられる内容ですし、「ホットライン」についても紹介されています。
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希少がんと同様、小児がんにも「ホットライン」があり、「国立成育医療研究センター」が中央機関を担っています(「国立がん研究センター」も小児がんの中央機関です)。
大人の治療薬が使用できないケースがあったり、進学や成人後の通院先の問題があったりと、小児がんには特殊性もあります。でも、まずは繋がることがとても大切だと感じます。
大人のがんでいうところの「がん診療連携拠点病院」に対応する医療機関は、2023年4月1日現在
「小児がん拠点病院」(全国に15ヶ所)
「小児がん連携病院」(全国に142ヶ所)
になります。
やはり希少がん同様、お住まいの地域によってはアクセスが悪く地域格差があることは否定できませんが、「小児がん医療相談ホットライン」の存在を覚えておかれると心強いかなあと思います。
ホットライン先「国立成育医療研究センター」(東京都世田谷区)の前をたまに通るのですが、毎回赤信号で停められてしまうため、病院の建物を見上げます。
電車の最寄駅は、小田急線「成城学園前」「祖師ヶ谷大蔵」、駅からさらに病院まで距離があるため、アクセスは正直良いとは言えませんが、閑静な住宅地を通って病院になります。渋谷駅からはバスで一本のようなので、便利かもしれません。
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9月は「世界小児がん啓発月間」です。
◆世界小児がん啓発キャンペーン
(Global Gold September Campaign)
9月中、全国各地で「Gold」にライトアップされた建物やモニュメントがありましたら、それは子どもたちやご家族への希望の光です。
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現在の私は、当時の社会科の教師と同じくらいの年齢だと思われます。
あの時、先生が何を想いながらあの病院を見ていらしたのか分かりませんが、「国立成育医療研究センター」を見てしまう私と同じ気持ちだったのかもしれません。
先生、あれから医学も医療も驚くほど進歩しました。まだ救えない命もありますが、着実に治療成績も向上しています。希少がんや小児がんでも実施されている「がん遺伝子パネル検査」なんて、当時は想像していなかったですよね。今の中学3年生が私と同じくらいの年齢になる頃には、もっともっと進歩しているんだろうなあと想うとやっぱり見てしまいます。先生も、子どもたちの未来を見て想いを馳せていらしたんですよね、きっと。