がんゲノム医療の体制**

まずは、前提知識です。

遺伝子パネル検査は、がんゲノム医療「①中核拠点」「②拠点」「③連携」病院でのみ受けることができます。

既存の又は新たに採取した組織検体and/or血液検体を検査にまわして、国内外の検査会社解析するところまでは、①〜③とも共通です。

現在5種類の検査が保険診療になっていますが、「FoundationOne CDx」(組織検体)「FoundationOne Liquid CDx」(血液検体)
を選択することが多いため、米国の検査会社に検体が送られます。

次に、解析結果をもとに専門家会議(エキスパートパネル)を実施して、解釈・検討します。エキスパートパネルは、①②の計45施設だけで実施でき、③は連携先の①②に依頼するという運用になっています。

「③は連携先の①②に依頼」といっても、患者さんに特別な負担がかかるわけではありません。
検査結果も、③で聞きます。

以上を前提に、新たな体制について説明します。(遺伝子パネル検査は、マガジンにまとめています)。


1.「エキスパートパネル実施可能」がんゲノム医療連携病院

「エキスパートパネル実施可能」がんゲノム医療連携病院指定を受けた施設では、自施設でエキスパートパネルを実施することが可能になりました。

その結果、以下のように分類できます。

①がんゲノム医療「中核拠点」病院(13施設
②がんゲノム医療「拠点」病院(32施設
③がんゲノム医療「連携」病院(219施設)
 ❶エキスパートパネル実施可能2施設
 ❷エキスパートパネル実施不可217施設

『がんゲノム医療提供体制におけるがんゲノム医療中核拠点病院等 一覧表』(2024.5.1時点)より整理

③のうち、兵庫医科大学病院九州がんセンターの2施設が「③-❶」に指定された形です。

2施設ともかつては「②拠点」でした。参考までに『かつての「②拠点」で、現在は「③連携」』は、以下のとおりです。

北海道がんセンター、筑波大学附属病院、東京都立駒込病院、大阪市立総合医療センター、兵庫医科大学病院、香川大学医学部附属病院、九州がんセンター

いずれも現在は「③連携」

なお、③-❶であっても自施設で判断が困難な症例については、引き続き連携先の①②に依頼することになります。

兵庫医科大学病院の連携先は「近畿大学病院(②拠点)」、九州がんセンターの連携先は「九州大学病院(①中核拠点)」です。

ここまでは、先月のつぶやきの補足です。

さらに、一覧表が改定されました。

③-❶が10施設増えて、計12施設になります。

①がんゲノム医療「中核拠点」病院(13施設)
②がんゲノム医療「拠点」病院(32施設)
③がんゲノム医療「連携」病院(219施設)
 ❶エキスパートパネル実施可能12施設
 ❷エキスパートパネル実施不可207施設

がんゲノム医療提供体制におけるがんゲノム医療中核拠点病院等 一覧表』(2024.6.1時点)より整理

◆エキスパートパネル実施可能(12施設)
筑波大学附属病院(茨城)*
東京都立駒込病院(東京)*
東京都立多摩総合医療センター(東京)
北里大学病院(神奈川)
藤田医科大学病院(愛知)
名古屋市立大学医学部附属西部医療センター(愛知)
京都桂病院(京都)
大阪市立総合医療センター(大阪)*
兵庫医科大学病院(兵庫)*【2024.5.1時点】
愛媛大学医学部附属病院(愛媛)
九州がんセンター(福岡)*【2024.5.1時点】
佐賀大学医学部附属病院(佐賀)

【2024.6.1時点】
*はかつての「②拠点」

茨城・佐賀は「③連携」だけの県なので、自施設でエキスパートパネルが実施可能となる価値は大きいですね。
東京も「①中核拠点」「②拠点」がすべて23区内に集中しているため、西部(多摩地区)の都立多摩総合医療センターは貴重です。

※以下、マニア向けです。
持ち回り協議のみ実施し、エキスパートパネルを必要としない症例の運用も、準備ができた「中核拠点」「拠点」ですでに開始しています。



2.「造血器腫瘍(血液がん)」遺伝子パネル検査

近い将来血液がんの遺伝子パネル検査も初の保険診療となる見込みで、今年3月末に大塚製薬が承認「申請」をしました。

新薬同様、申請→承認→償還→販売の流れを経て患者さんのもとに届きます。

固形がんは治療後半で保険適用となりますが、血液がんでは原発不明がんと同様に診断時からの保険適用も想定されています。

本製品は、造血器腫瘍に関連する遺伝子異常を検出することにより、急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)などの骨髄系腫瘍から、急性リンパ性白血病(ALL)、悪性リンパ腫などのリンパ系腫瘍などほとんど全ての造血器腫瘍と関連疾患に対して、「診断」、「治療法選択」、「予後予測」が可能になることが期待されます。また、造血器腫瘍は小児がんで最も多いがんとして知られ、小児と成人で遺伝子異常が異なることが知られています。このため、本製品は幅広い造血器腫瘍患者さんに使用いただけるように設計しました。

『国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査の製造販売承認申請について』(大塚製薬HP)より
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2024/20240329_1.html

現状の「①中核拠点」「②拠点」「③連携」は、固形がんのゲノム医療を枠組みとして指定されてきました。しかし、指定されていない施設でも血液がんの治療を行っています。

そこで、新たに「造血器がんゲノム医療連携病院(仮称)」の設置も提言・検討されています(参考:『造血器腫瘍における遺伝子パネル検査体制のあり方とその使用指針』14頁)。

まだ先にはなりますが、「承認」時には一般紙やネットなどでも大きく報道されると思います。患者さんやご家族にも分かりやすく整理された情報に期待しています。

↓完全にマニア向けです。



厚労省さま
一覧表は、改定箇所が判別できない体裁になっています。どの施設が、いつの時点で、変更になったのか「履歴」もきちんと残してほしいです。

中外製薬さま
「【地域別】がんゲノム医療を受けられる施設」(中外製薬)のページは、都道府県別に施設が一覧になっており大変見やすいです。しかし、2024年3月以降更新が止まっています(5月23日アクセス)。毎月のように一覧表が改定されるため、嫌になったのでしょうか。

次回更新する際には、「エキスパートパネル実施可能」がんゲノム医療連携病院指定有無併記していただけると助かります。

小児も考えると『がん情報サービス』がベターですが、慣れていないと検索しにくいのが難点です(「条件を変更する」→都道府県を指定→「検索」)。また一覧性にも欠けるため、もう少しサイトを工夫してほしいところです。

なお、C-CAT(がんゲノム情報管理センター)でも、上記リンク先をご案内しています。

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