「鉄道公安官 墨田綾野」企画書

キャッチコピー:

彼女は少年に出会った。それは怪異との出会いでもあった。
コロナ後の東京を舞台とした鉄道怪異譚始まる。

あらすじ:

202X年東京。
新型コロナウイルスの流行が収束し、人々はかつての日常を取り戻しつつあった。

満員電車の息苦しさに辟易していた主人公深見いくみ(24)は、怪しげな少年墨田綾野(14)と遭遇する。

彼は、人が密集する場所に発生してしまう「群集怪異」を倒すために国から雇われた、国交省鉄道局神祇課所属の「鉄道公安官」だった。

いくみと綾野は様々な路線を巡り、
乗客に仇なす「群集怪異」を退治していく。

やがて彼等は「怪異」の力で「群集」を「群衆」へと進化させ、政府転覆をもくろむ謎の陰謀に巻き込まれていく。

人の流れが戻りつつある東京で繰り広げられる鉄道怪異バディアクション。

第一話のストーリー:


いくみ(この密集!この臭い!満員電車なんて滅べばいいんだ‼)

会社員深見いくみ(24)は、満員電車でもみくちゃにされながらも、毎朝けなげに会社へ通勤していた。

ある日、彼女は並走する電車の上に、
少年が座っている姿を目撃する。

驚くいくみ。
しかし、彼女以外の乗客は誰も少年の存在に気付かない。

列車がホームに止まる。
いくみは彼の行動を問いただすべく、少年の手を掴む。


駅ナカのカフェで少年を尋問するいくみ。
墨田綾野(14)と名乗る少年は、自らの話を淡々と続ける。

綾野「移動の時はいつもあそこにいます。狭い車内にいたくないんで」
綾野「本来なら結界が発動するんで誰も僕のことなんて気にも
   留めないです よ。なんなら避けて通るくらいですから」
綾野「でもたまに、心が不安定な人は見えることもあるみたいです。
   つまり、お姉さんは現在心がすさんでるってことなんですかね?」
いくみ「余計なお世話だクソガキ!大人に喧嘩売っとんのか、おどれは‼」

いくみ、綾野の話が理解できない。おまけに童顔の割に大人びた彼の
話し方がきにいらず、イライラがつのってくる。
いくみ(ガキのくせに生意気な…!)

他方、無表情で応対する綾野。
彼の話を要約すると、
『自分は、国交省鉄道局神祇課所属の鉄道公安官で、人が密集する場所に現れる、集団心理のみ出す化物—「群集怪異」—を倒す仕事をしている』
という。

いくみ「……この話を信じられると思う?」
綾野「でもこのカフェには、僕ら以外誰もいないじゃないですか?」

周りを見渡すいくみ。都心のターミナル駅のカフェにもかかわらず、
室内にはまったく人の姿がない。

衝撃で言葉の出ないいくみ。


そこに流れた電車の遅延アナウンス。
少年はそれを聞くや、足早にその場を去ってしまう。

少年を追いかけ、ホームへ降り立ついくみ。
電車遅延の影響で、人がごった返している。

そんな人混みの中から、立ち上る黒い霧。
靄は一つとなり、龍の形をとっていくみの前に現れる。
彼女以外、ホームにいる誰もその存在に気付かない。

いくみに襲い掛かろうとする龍。
しかし間一髪のところで、綾野に助けられる。
龍は綾野の武器(刀)から放たれた稲妻によって一刀両断され、雲散霧消した。

綾野「今までのことは夢でも見たと思って忘れてください。それじゃ、
   お体大切に」

ホームの雑踏にまぎれてしまう綾野。
いくみはその場にへたりこみ、放心してしまう。


第2話以降のストーリー:

朝の出来事で心が一日中動揺し、帰るのが遅くなってしまったいくみ。
にもかかわらず、駅は混雑している。
どうやら複数の路線で電車が止まっているらしい。

いくみ(帰りも満員電車か…)

がっっくりとうなだれながらホームへ上がるいくみ。
すると、人混みが開けた場所に血だらけになって倒れている綾野の姿を発見する。

介抱するいくみ。幸い綾野の意識はしっかりしている。

誰にやられたのか問いかけるいくみ。
綾野の指さす方を振り返る。

そこにいたのは、ホームの屋根に届かんばかりの巨大なキツネ。
電車の遅延によってこの駅に人が流れ込み、パワーアップした
キツネの怪異である。

九本に分かれた尻尾の一つには、いくみや綾野と同じように、
怪異の見える会社員が捕まっていた。
会社員が助けを求めるが、ホームにいる人々にその声は届かない。
キツネは彼を丸飲みしてしまう。

いくみ「あれは……」
綾野「怪異ですよ。ただしかなり狂暴化しています。人を捕食するほどに」

郁美たちに標的をさだめ、猛ダッシュするキツネ。
綾野「僕に構わず逃げてください」

いくみ、綾野の武器を手にとり、キツネを追い払うように
ブンブン振り回す。
距離をとり威嚇する狐

綾野「逃げてくださいっていったじゃないですか…」
いくみ「だって見捨てるわけにもいかないでしょうよ!」
綾野「捨て猫じゃないんだから…」

綾野、電車の発車したタイミングで、いくみを抱え込みジャンプ。
二人を乗せた電車は進み、ホームを後にする。

初めて電車の上に乗り、気が動転するいくみ。

綾野「じっとしててください。顔を上げたら高圧電流で死にますよ?」

少年の言葉と、彼の頭から垂れてきた血が頬にあたり、正気を取り戻す。


綾野をおぶって自宅へ帰るいくみ。
彼が病院に行くのをためらったため、いくみの家で介抱することになる。

綾野の体に包帯をまこうとするいくみ。
綾野「面目次第もございません。傷の手当てまでしていただいて」
いくみ「そんな固い言葉使わなくっていいから。こんなことなら
    朝飯前…!」
いくみ、服を脱がせた少年の体に、大小合わせて様々な傷があることに
気付く。

少年から話を聞くと、彼は鉄道公安官として、早朝から鉄道の警護をする
生活を1年以上も続けているという。

いくみ「新聞配達の苦学生だってもっと安全よ…なんでこんな過酷な
    仕事してるわけ?」
綾野「母さんが病気で、お金をためなきゃいけないんです」

彼の話を要約すると、
『綾野少年の家は母子家庭であり、母親が倒れた影響から「群集怪異」が見 
 えるようになった。そこで国の役人にスカウトされ、「鉄道公安官」
 として仕事をしている』という
(※ちなみに一度「群集怪異」を見た人のほとんどは再び見えることはなくなるが、一生見え続ける人もまれにいるらしい。綾野は後者である)

綾野「怪異が出るからといって満員電車自体をなくすことはできない。
   なら、皆の暮らしを守るためには誰かがケツをふかなきゃ
   ならないんです。簡単にやめられる仕事じゃないんですよ」
いくみ「…ごめん。変なこと聞いて」
綾野「別に大丈夫です。それにこの仕事も嫌いじゃないですから」
淡々と答える少年の、腕のガーゼが痛々しく見えるいくみ。

綾野は戦いの疲れから、いくみのベッドで眠りについてしまう。
それを見つめるいくみ。
いくみ(大人ぶったクソガキかと思ったけど、私よりこの子の方が
   十分大人じゃん……)


午前3時に目を覚ましたいくみ。
ベッドを見ると綾野の姿はなく、「お世話になりました」と書いてある書置きが1枚残っている。

心配になったいくみは、まだ夜もあけてないうちから部屋を飛び出す。

ターミナル駅にやってきたいくみ。
改札をこっそりと抜け出し、ホームへと辿り着く。
辺りを見渡しても、綾野は見つからない。

そんな彼女の前に、前日の狐の怪異が姿を現す。

キツネの周りにむらがる謎の人々。
その中には以前キツネに食べられた会社員も混じっている。
どうやらキツネは捕食した人々を操るらしい。
その証拠にキツネの体から伸びたピアノ線のような糸と
人々がつながっている。

身の危険を感じたいくみはホームを飛び出し、線路の上を逃げていく。

走るいくみと追う群集。
しかし、線路の石才に足元を取られ転倒。
そこに現れたキツネが、尻尾でいくみをつかみ、捕食しようとする。
絶体絶命のいくみ。

そこへ参上した綾野。
回送電車の横から尻尾を切り、いくみをかっさらう。

いくみ、目に涙をためながら
いくみ「遅いっ!」
綾野「まず感謝してくださいよ、大人なんですから」

次々にとびかかってくる操られた人々。
綾野は電気の架線から供給した高圧電気のエネルギーを使い、
彼等から伸びているピアノ線を切って正気を取り戻させる。
正気に戻った人々は正気を取り戻し、四方へ散っていった。

ついに正面切って狐と戦う綾野。
しかし、次々と襲い掛かる尻尾に歯が立たず、こてんぱんにされてしまう。

夜が明け始め、通り過ぎる回送電車が多くなる。
いくみ、綾野を抱え、通り過ぎた電車につかまり、距離を取る。

ターミナル駅のホームにたどりついた二人。
しかしいくみが手を放してしまい、二人ともホームを転がってしまう。

いくみ、綾野の介抱をしていると、狐がすぐ後ろにせまっている。
綾野「…逃げてください……」


振り返ってキツネと対峙するいくみ。
首だけ綾野に向けながら、笑みを浮かべる。

いくみ「たまには大人らしいこと、私にさせなさいよ」

尻尾でいくみを掴んだキツネ。
自分の口元へ近づけ、口を開ける。
いくみ、服の後ろに刺していた綾野の剣を掴み、尻尾を切る。

口の中へ自分もろとも突っ込んでいくいくみ。
彼女をとりこんだきつねは、まばゆい光につつまれ破裂した。


通勤時間で混み始めたホーム。
綾野、目を覚まし、キツネのいた方へ向かう。
群集をよけて先に進むと、そこには彼の武器しかなく、
いくみの姿はなかった。
綾野、その場へへたり込み、肩を落とす。

綾野「すいません。守れなくて……」

×        ×        ×

ホーム下で意識を失っていたいくみ。

電車の通る音で目を覚ますと、
自分が子ぎつねの姿に変わっているのに気付く。

どうしてこうなったのかわけのわからないいくみ。
おまけにホームの人々は彼女の存在を誰一人として認識しない。

いくみは、綾野だったらきっと気付いてくれると確信し、
彼を探すために歩き出す。


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