Lost on the beach

「beginning」
(はじめに
(耳が咲いた
耳障りの良い言葉だけが
打ち寄せられる浜辺だった
一文字も聞き逃すまいとした
解読するのに時間が足りなかった
(そのかわりに
(耳が咲いた


「雨男と太陽神」
妄想癖のある雨男が
国をひとつ滅ぼした話をしていた夜
きみはぼくの目の前で
下着を脱いだんだ
その瞬間
無数のスカラベが
きみの中へ侵入してゆき
きみを砂の壁画へと
変えてしまったんだ
(きみはとても美しかった
(きみはとても素敵だった


「distant shore」
風の番をした日はとても退屈
強弱はあるものの
かたちは無いし色もありません
火の番をした男のことを
羨ましく思いました
(それはとても恐ろしい姿で
(それは世界を美しく覆い尽くした
蒸発した海の
打ち寄せるもののない浜辺で
そのことを知ったのは
もっと後のことです

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