木を切る男

タラレバの話をすればキリがないのだけれど、情報に疲れてしまってる自分も感じる。じゃぁ見なきゃいいじゃんって、そういう訳にもいかない訳だ。そこは敢えて言わなくても、だと思う。そうじゃなくて、情報がない生活が幸せかなと想像してみたりする。で、どこかで聞いたことがある気がするなと思いながら書いたのが下記の文章。



ある男が森の中に住んでいて、そこで木を切る仕事をしている。
木こりという訳ではなくて、木材を一定の大きさに切り出す仕事だ。
男は生まれた時からこの家に住み、父親から仕事を教わり、家の周りでそれをずっと続けて生きてきた。
この男のことを木を切る男と呼ぶ。
切り出された木片は集められ、何日かすると別なある男が引き取りにくる。
木を切る男はその男のことを、国の男、と認識していた。
国の男は動き易くはあるものの、汚れは無く、木を切る男のそれとは風合いも違っていた。
従者を連れて荷馬車でここに訪れると、
木を切る男が切り出した木材を引き取り、代わりに食料や前回訪れた時に所望されたものを置いていく。

「今回もご苦労だったね。食料は家の中に運ばせよう。後、依頼されていた新しい道具と服も持ってきた。」
国の男はそう言ってにこやかに話しかけてきた。
「君の切ってくれたものは形も綺麗だし、こちらのお願いした数量もちゃんとこなしてくれるから助かるよ。」

木を切る男は新しい道具の具合を確認しながら言った。
「父親に教えて貰った通りにやって、食事以外は夕方までずっと動いてるからな。身体に痛いところもないし、なんてことはない。」

国の男は満足そうに頷いた。
「君とは長い付き合いだ。信頼しているよ。ところで次は何を持ってくればいい?ある程度のものは揃えられるぞ。」
「今回と同じで構わんよ。あぁ、後は木を引っ張っる為に強いロープかな。他は困っていない。」
「たまには何か違う物も頼んだらどうだ?部屋に飾る絵とか・・・そうだな、休憩するためのゆったりとした椅子とか。」
「そんなものは必要ないよ。あまり休むと切る数が減るかもしれないからな。」
国の男は冗談かと思ったが、木を切る男の顔は思いの外真剣だった。

「休まず真面目に働くからこれだけの量を作れるのか。さすがこの国で二番目の量を作る男だ。」
その言葉を聞いて木を切る男は国の男の方に振り向いた。
「二番目だって?」
国の男は少し気まずく思ったか目を細めた。
しかし、口から出てしまったことは仕方ない。正直に話した。
「ああ。私は知らないのだが、君よりも多くの数を切る人間がこの国に居る。他のものがそこに通っているのだが、国の帳簿には君よりも多い数字が、君の上の所にいつも書かれているんだ。」

木を切る男は信じられないといった顔をして言った。
「俺は父親から教わった通りに休むことなく木を切っている。これ以上ない数を切っていると思っている。これよりも多い数だなんて、一体どうやって。」
国の男は、木を切る男が狼狽えている様子を見て、また、自分が余計なことを言ったと悔いて、宥めるように言った。
「君は本当に良く働いているし、仕事も丁寧で、我々の要求通りの数を作ってくれている。非常に頼りにしている。これ以上の数をお願いしようと思っている訳ではない。君はいつも我々に求めるものも限られているし、何か追加で欲しいものがあれば持ってくる用意もある。数なんて気にしないでいいじゃないか。」

木を切る男は「あぁ・・・。そうだな・・・。」と返事をし、背筋を伸ばした。
国の男は「また次回。」と言って帰っていった。
その夜、木を切る男は、いつもより遅くまで眠れないでいた。



何が言いたいとかそんなんこともなく、いや、何かあったかも知らないけれど、書いたのは結構前だったから忘れた。自分で書いて下書き保存してたやつをコピペしただけだし。
旅に出るのも、止まるのも、どちらも正解なんだろうな。自分のしたいようにしたらいい。人に迷惑をかけちゃいけないとは思うけれど、多分居なくなっても迷惑はかかるまいて。二位のままでもかからない。情報によって選択肢が生まれただけ。

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