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第17回「こんなに悩む私ってヘンですか?」

 漫画の打合せをしていると、何度も具体論と抽象論を行ったり来たりします。

「何が面白いのか」「その為にはどんな主人公であるべきか」「サブキャラクターは?」「ページ数はこれで最適か」

…話すことは多岐に渡ります。
 ほぼ完成していたネーム(絵コンテ)を全て捨てて一から作り直す、なんてこともザラです。
 今まさに打合せしている作家さんから言われたのがタイトルの言葉です。
よくよく話し合い「主人公のキャラは今のままでいいのか?」「やはり目指すべき楽しさが違うのではないか?」と煮詰まった末に彼からポツリと出た言葉です。

先に答えを言いましょう。
全く変では無いです。
むしろ当然だし、僕は作家として頼もしいとすら感じます。

 商業連載は「描きたいものではなく、売れるものを」と良く聞きますが、僕はそうは思いません。
 「作家が描きたい、もっと言うと自分が読みたいと思えるもので尚且つ売れるものを」創る必要があると思っています。

 自分の欲求と他人の欲求を両立させることは矛盾しているようですが、それでもそんな無茶にそもそも挑んでいるんです。

 だから何度でも行ったり来たりします。
 いくつもある道を一つずつ、「このルートではなかった」と確認するような作業です。

 冒頭の言葉に僕は「そんなことないですよ」と言いつつ、考える事と喋る事を同時に出来ず、彼の問いにハッキリと答えられないまま、打合せが終わってしまいました。

 なぜハッキリ答えられなかったかと言うと「えー、ここまで出来たネームを捨てちゃうのは惜しい…」と僕が思ったからです。その瞬間、言葉が鈍ったし、アマチュアな自分の発想に後から落ち込みました。

結局、こうやって後から悩み、あの時どうするべきだったのか整理してます。

「全く変ではないし、むしろ作家として非常に頼もしく感じます。どの時点での擦り合わせがまずかったのか、もう一度整理させてもらえませんか?」

10年以上やってて、これです。
なんて面白い仕事なんでしょう。

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