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ひと続きの終わりと始まり

日が上り、南中して、日が暮れ、夜になり、日がまた上
太陽の周りを地球が周り、地球自身も自転し続ける
天文学的には始まりも終わりもあるのだろうけれども
主観的にみれば、始まりも終わりもあったもんじゃなく、生まれてから死ぬまでずっと続いているものだ
けれども人はその連続性に区切りをつける
秒、分、時、日、月、季、年
まあ、色々あって暦を作る必要があったり
共通認識として数えられるもののしておいた方が便利だったりと色々あったのだろう
人が節目を設定して、その時その時を大切にしたところで、バスのように停まってくれることはなく、ただただ刻は流れ、連続していく
その連続性にただ身を委ねれば、古いも新しいも存在しない概念なのだろう
けれども、ボクらには1年という単位、1年を365日(厳密にいうと違うけど)とするという概念がある
12月31日を1年の終わりとし、1月1日を1年の始まりとする
その中で生まれた日が来るたびに、ボクらは歳をとる
記憶を重ね…
あれ?なんか前もこの考え方こすった気がするな?
いや、別の人の何か見たのだったかな?
うーん、まあ、いいや
よほど気に入ったのだな
前の時はどのような話に結びつけていたんだったかな?
とにかく、今回何が言いたかったのかというと
みどりさんへの想いを終わらせようとするたびに、新しく湧いて出てくるので、もう、そういうものとしてそのままにしておこうかな
という、まったくひどい居直りである



2023/12/30
毎年この時が1番緊張する
1人、明日のおもてなしメニュー受け渡し準備のために、売り場の一角「くつろぎコーナー」を予約商品の受け渡し会場へと作り替えている
28日が予約締切日なので、そこから各部門バタバタと31日の調整をして、なかなかに空気がピリついてくる
できればこうなる以前に各部門と31日の段取りをおおまかな流れだけでも事前打ち合わせしておきたかった
けれども、今年はボクの大きなやらかしがあってチェックアウト部門に声をかける敷居が高い
あれよあれよと29日になって、今年のおもてなしメニュー受け渡しチームの編成を聞かされることとなった
ボクも入れてもらっていた
そこから取り急ぎ、おもてなしメニューに関わる部門社員と話をしたところで、もっと早くにクロさんと動き出していた去年に比べれば、やはり詰めきれない部分が多い
不安で仕方がない
今年はうまくできるだろうか
ボクは何より、みどりさんからの期待に応えたい
大まかなセッティングを終えた頃
みどりさんと今年の受け渡しチームのリーダーシロさんやってきて、備品を揃えたり、動線確認したりと細かいところを詰めていく
会場設営はボクの手を離たので、ボクは夜間担当の仕事へシフトしようとする
店長が、そろそろ値引き業務に入れと催促してきた
もう、どの部門も気合い入れて作りすぎだから売り切りも大変なのだ
けど、できる限りの明日の準備はやっておく
受け渡しチームのおやつ用のケーキも仕事前に焼いておいた
帰ったら切り分けて、玄関先に置いておこう
明日は早い…クリスマスケーキの時に比べればなんてことないけど

2023/12/31
…!
7時20分!?
なんてことだ!
寝坊した…
いや、今日の出勤時間は9時30分
ぜんぜん余裕で間に合うのだか
本当はもっと早くに出発して早くから準備に加わりたかったのだが…
今から急いで支度して、到着は8時30分ころ
大晦日はいつもより1時間早い開店で、8時開店
その前には居たかったのに
ああもう、どうして時間は進むばかりなのだ

31日の駐車場はお客様でいっぱいになることが予想されるので、今日は店から走って5分くらいかかるところに停める
車からでて、全力疾走
なんとか8時30分、ユニフォームに身を包む
受け渡しチームの人からは
「早いですよぉ」
なんて言われたが…
ごめんよぉ
もっと早く来るつもりだったんだよぉ…
みどりさんに昨日言って用意してもらった
「時間別予約数量チェックリスト」をバインダーに挟み、リーダーのシロさんに業務開始を伝える
長い1日の始まりだ

業務としては、部門が作った予約用商品を時間ごとにバックルームで揃っているかチェック、揃っていたら順繰り受け渡し会場へ運び込む
冷凍の商品はお客様取りに来るまでは冷凍庫から動かせないので、受け渡しチームが会計を終えてからボクの方へ連絡が来て、適宜取りに走る手筈となっている
業務としては単純で、いえば簡単そうなのだけれど、まあ、予定通りになんてならない
部門の製造遅れ、不備不足、受け渡しチームの手違い
色んなことが起こる
起こるたびにボクの持つ内線端末が鳴る
内線端末が鳴るたびにボクは走る
日頃、やんちゃなお子様に
「店内は走り回るところじゃありません」
などと注意しているボクではあるが
いいかい?
ボクは走っていいの!
売り場でも、バックルームでも、駐車場でも
ところ構わず走り回る
休む間もなく走り回る
そうでもしたいと、とてもじゃないけど処理しきれない

あわやクレームもののトラブルをなんとか乗り越えてて、結果としては帳尻合わせのめどかたった頃、あとは従業員の予約分を残すのみとなり、受け渡しチームは解散となった
午後5時半、外はすっかり暗くなっていた
ヘルプに来ていたみどりさんの上司から、バイトさんたちに指示を出して受け渡し会場の撤収を依頼される

同時に店長からも、割と切迫詰まった感じに
「そろそろ値引きに入ってくれ」
との指示が下る
うーん
身体を2つに割れってことかな?
そんなことよりボクはヘトヘトだから一息入れたいのだが?
とにかく、仕事を終わらせないと始まるものも始まらないので、バイトさんたちにカートラックなどの片付け先を案内して、値引き機械の空きを探す
売り場の残り具合を見ると
確かに、切羽詰まった感じになるわな、という量の商品が残されている
けれども、各部門の方でうまく値引きして数量調整してくれる…はずだよね
会場撤収にめどが立ち
部門から値引き機械を譲ってもらったのが午後6時過ぎ
今日の閉店時刻は午後8時
売り場いっぱいに並んだ、刺身!肉!寿司!惣菜!弁当!ベーカリー!
えっ?
店長?えっ?あなた、これ?指を咥えて見てただけ???
あと2時間足らずで、これ売り切れっての?
絶望的な量が並んでいる
この店のフードロスを救うのはボクのこの手に委ねられた
オーケーシンデレラ
ここからが本来の専門領域だ

値引き機械と共に売り場を駆け回り
売るべきものは粗方お客様の手に渡った
閉店後の従業員販売に従業員価格で販売する分をちゃっかり残るように加減して
そういや、去年の31日とは店長違うから、閉店後の従業員タイム交渉しなきゃだった
首尾よく従業員タイムの許可を得て、店長及び各部門からの思い切った販売価格にする許可も得た
そのことをサービスカウンターにいるみどりさんに伝えると
みどりさんにお礼言われちゃった
へへ、役得役得
最後の一踏ん張りで、値引き機械と共にもう1周店内を回る
みどりさんが走ってお財布を取りに行く様子がなんとも可愛らしい
ボクはといえば、値引きを終わらせてバックルームに戻ったあたりで足をもつれさせて通路に1人突っ伏した、というのはここだけの話だ
チェックアウトの受け渡しは不備なく終わり
フードロスも限りなく抑えることができた
今年もなんとかやり切った
最後に、みどりさんとお話を…する機会があればよかったのだけれど、まあ、そんな余裕は無いと見越して、用意していた手紙を渡した

きっとボクは、このひと仕事をやりきって、色々なことに区切りをつけるつもりだったのだろう
けれども、区切ったところで終わるのではなく
また、新たに始まってしまうのだ
ご迷惑にならない限りは
ボクはそのことを以前よりも前向きに捉えてみたいと思った
来年度中に、社員であるみどりさんは転勤してしまうかもしれない
だとしても、きっと、このみどりさんをお慕いする気持ちは変わらないのだろう
成就を目指しているわけではなく
ただただ大切にしていきたいのだ
願わくばまた来年、この吐きそうになるくらいドタバタの年末を一緒に乗り切りたいものだ

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