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苦理済ます

あっ、書いていて前置きが長くなってしまったので先に書いておきますが、クリスマスケーキの話をしようと思って書き始めました。ということを先に書いておきます。

『キワモノ』というと、多くの人は「きわどい物」ということで「倫理的とか社会正義的にギリギリのところ攻めているモノ」という意味で捉えるのではないだろうか?
漢字で書けば『際物』と書く。
「際」という字の成立した時点での意味としては、[壁と壁との継ぎ目を表したもの]ということなので、「ギリギリオッケー/ギリギリアウト」の/を狙う。という意味ではその通りなのかもしれない。

しかしながら、ボクがここで取り扱いたい『キワモノ』は、『際物』本来の意味

「季節行事で必要になるまぎわになって売り出される一時限りの商品」

の事だ。例えば、クリスマスツリーやリース、正月飾りなどであるのだが…1ヶ月以上前から陳列してあるのを見ると、いや、雰囲気作りというか購買モチベを上げてくには必要なディスプレイなのかもしれないけどさ、際物ってなんだっけ?ってなる。いや、そもそもツリーやリースってクリスマス由来じゃない…って話は本筋じゃないからいいや。

ここでは、より際物の話をしよう。
もってギリギリになって、そのイベント周辺のしか店に並べないヤツ。
例えば、
桃の節句のさくら餅や甘酒
端午の節句の柏餅や菖蒲
彼岸のおはぎやぼたもち
十五夜の月見団子
クリスマスのケーキやターキー
正月のおせちやのし餅
地域や個人によって年中愛顧されていたりするので、今となってはスーパー行けば年中手に入ったりするものもあるのだが、
「季節の行事にひも付いた生もの」
となれば、文字通りの『際物』と言えると思う。

そして12月、今この時はクリスマス商戦真っ只中だ。いや、店内のシーズナルコーナーには樹脂製の鏡もちとキャラクターパッケージのシャンメリーが所狭しとひしめき合っていて、『劇場版ゲゲゲの鬼太郎』の様相を呈している。
そんな中、ボクは1年でもその日、その時、ひとときの感動を演出するキワモノのために練習をし始める。

なんかはみ出てますがまだ練習です。ご安心ください。

クリスマスケーキ…パート先ではベーカリー部門の目玉商品として、店内製造のケーキを販売する。なんか、色々とこだわりがあるらしい。ヤマザキのやつだって人の手でやっているのだから別にいいじゃないって思うのだが、店で作りたいらしい。と、言いつつもスポンジケーキはよそでできたのを送られてくる。ボクらがやるのはクリームを泡立て、フルーツをカットするところからだ。
「やっぱり手作りっていいわね〜」なんてことを言う人がいようものなら、「ならばご自身でどうぞ」と、買い物かごにクリーム、小麦粉、砂糖、卵、イチゴ、ついでにバターを放り込んでやりたい。
そんな本音は置いといて、ボクは本来店のケーキ作りは乗り気じゃない。ケーキ製造はベーカリー部門、ボクは後方部門、そして、予約ケーキの受け渡しはチェックアウト部門。
ボクはミドリさん指揮の元、予約品受け渡しの仕事をあたふたしながらやりたかっ…なにやら別のホンネが出てきてしまった。
とにかく、ボクは部門が違って、クリスマスともなれば本来の仕事の方もいろいろやることが多い。パーティー用の食品は空振りした時の値引きが忙しくなるし、何より、食肉部門のチキン、ターキー大量発注に毎年苦しめられる。足りなきゃ足りないで文句言われるので、少し余った方がマシではあるが。そして、クリスマスが終われば次の日から年末商戦本番なので、掲示物などなどの切り替えがたくさん発生する。
そんなこんなでタイミングで、路面凍結上等な季節に午前2時出勤でケーキ作りなんてやりたくはない。

けれども、ボクにやらせたい人は言う

「君はできるから」

出来ないところからスタートして、なんとかごまかしを覚えたくらいだ。

やった後にはだいたいこう言う

「ありがとう、次もよろしく」

あてにしてもらえて、大変光栄ですわ。

はいはい、やりますよ。
やるとなったらやりますよ。
クリスマスの楽しい思い出に華を添えられるようなケーキ…とまではいかなくても、せめて泥を塗らないよう頑張りますよ。
こどもを泣かせてしまうのは辛いから。

って、なんだこの干潟でムツゴロウがのたうっているような…
まあ、製造工程をなぞっておいて体に馴染ませておくだけでも、本番に役立つことだから、いいか。と、自分を納得させる。

イチゴが乗ればそれなりに見えるのだから不思議なものだ。
作ったものをいちいち自分で平らげていては健康を害するというもので、切り分けて個包装してからパート先に持っていく。これが結構時間がかかる。ひょっとしたら
切り分け個包装>準備>製造練習
という順番で時間をかけているかもしれない。

イチゴと洋なし
イチゴとチョコレートクリーム

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