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とーほくとー!

午後8時を過ぎた頃、店内に入ってくるも、店内をサラッと一周しただけで、買い物かごを元に戻して帰っていく人が何組か見受けられる
彼らの目的は、恵方巻きだったのだろう
残念!もう売り切れである
値引き品狙いで遅くきたのだろけど、今のご時世フードロスとかうるさいのだから、作り過ぎなんて…ハハッあるわけないじゃないか

2月3日は節分で、スーパーマーケットとしてはかき入れ時、目玉としては恵方巻きとなる
この日は毎年いつもの仕事のほかに、恵方巻き製造のヘルプに入ることになっている
いつものユニフォームの緑色のジャケットではなくて、生鮮部門用のユニフォームとエプロンを持って出勤する
恵方巻きのヘルプだけならユニフォームの下は楽な格好でいいのだが、当たり前のように、ヘルプの後にはいつもの仕事もこなさなくてはならない
早く出勤したならその分早く帰りたいものなんだけどな
と、いうことで
緑のジャケット着込めばすぐにいつもの仕事に移れるようにワイシャツネクタイを着込んだ上に生鮮部門のユニフォームを重ね着する
ヘルプが終わればすぐに通常勤務に移行できるように

しかしまぁ
何だって毎年毎年頼まれる仕事内容が違うのだろう?
去年は少しお高めの恵方巻きを1人で1つずつこさえる場を与えられた
一昨年は安価な恵方巻きをひたすら巻き巻きする量産部隊
だった
じゃあ今年はどうだっかというと
シャリを広げて海苔を貼り付けるというシャリ出しからの、シャリマシーンのオペレーター
恵方巻き製造とひとことで言っても、いろんな業務があるものだ…
同じく他部門からのヘルプ同士で談笑しながら作業を進めていると、店内放送がなる
「各部門へ連絡します。レジ応援の願いします。レジ応援お願いします。」
みどりさんの声がスピーカーから流れてくる
今すぐ、持ち場を放り出してレジ応援に向かいたい
しかし、今のボクは生鮮部門のガワを着込んだ人間!ここを離れるわけにはいけない
鉄の心で太巻き用のシャリを用意し続けた

午後4時過ぎた頃、巻き巻きする具材が底を尽きたらしく、シャリマシーンオペレーターとしてはお役御免となった
去年と同じく5時くらいまでかかるつもりでシャリ出しをしていたのだが、去年よりもハイペースで作業が進行していたらしく、うっかりシャリの方を過剰に作ってしまうところだった
とはいえ、お役御免となれば、ボクをこの場に縛る理由もなくなった
現場を指揮するデリカ部門社員のカクさんへと
売り場へ出ます
と、ひと言入れて、いったん更衣室へと入ると、重ね着していた生鮮部門ユニフォームを素早くパージして緑色のジャケットを着ると、意気揚々とサービスカウンターへと向かおうとすると、カクさんからお仕事を仰せつかった
8段カートラックいっぱいに用意されたパッケージ済みの恵方巻きを、お客をかき分け商品棚へと陳列せよとのこと
…これが終わらないとみどりさんの元へと馳せ参じることが叶わないらしい
意を決して、ボクは恵方巻きを携えて売り場に出る
ええ、わかっていましたとも、この役は、ゾンビ映画のモブ被害者さながらの状態になるということを

かなり体力を削られたが、ようやくサービスカウンターへと向かうことができた
レジは混雑して、カート・バスケットの配置はとても荒れている
チェックアウト社員のみどりさんもシロさんも恵方巻きを予約したお客様や、会計機エラーへの対応と大忙しだ
まずはカート・バスケットを片付けていると、レジ応援要請の店内放送が再び流れる
ちょうどお片付けが終わったところなので、サッとレジ応援へと潜り込む

レジの混雑が落ち着いては、カクさんのところへ戻り、恵方巻きを出し
恵方巻きを出し終えては、他部門の補充へと手を伸ばし、レジ応援の要請があれば応じて、カート・バスケットを片付けたりと店内を駆け回る
ま、年末のアレに比べればどうってことはないもんだ
そんなこんなで、混雑も落ち着いたあたりの午後6時頃、夜間担当のメイン業務、値引きによる売り切り業務へとシフトする
店長は恵方巻きが作りすぎなのではないかと気が気ではないようで、強い割引を急かしてくるが、まあ、ここは落ち着いて、数の多いものと少ないものとで値引率に勾配をつけてっと
ホイホイホホイと値引き機械を唸らせると
何ということでしょう…
夜8時前なのに、無くなっちゃった…
まー、店長も廃棄が出なくてホッと胸を撫で下ろしているようで何よりだ
うむ
これにて一件落着

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