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第22話 ボクの友だちの話をするよ 大好きなのは・・・

ボクには、友達がいなかった。

ママやしょうちゃんは家族だから友だちではないよね。

ヒモやボールで遊んでくれることもあるけど、イヌと人間はやっぱり違うんだよね。



ママと散歩をしてる時、向こうから違う犬が歩いてくることがあるよ。

ボクはその度に同じ仲間に話しかけて、遊びたいと思う。

だけど、ママは向こうの飼い主さんに遠慮してボクを遠ざけちゃうの。


ボクらがケンカになったらバツが悪いんだよね、きっと。


確かにね。

相性が悪い相手だと、吠えて威嚇し合ったりしちゃうんだ。


だけど、仲良くなれることもあるんだよね。

せっかくの機会を逃したくはないな。



ボクらイヌ同士がどんな基準で相手との相性を判断しているのかわかる?

それはね。


ボクの場合、ニオイとか外見なんだよ。

ボクは鼻が利くでしょ。

嗅覚がとても優れてるボクにとって、ニオイは相手を知るのにとても重要な判断材料なんだよね。


それと臭いも大事だね。

ペットショップにいた時に意地悪されたヤツと同じようなニオイだとちょっと警戒してしまう・・・・。


それに「性格」。

これも犬が相手との相性を見るには大切だよ。

遊び好きで、やんちゃな性格で、ボクの誘いに乗ってくれるワンコがいいな。

逆に大人しいイヌはキライじゃないけど、誘いに乗ってくれないから、どうしていいのかわからないんだよね、ボク。

お年寄りだとあまり動かないし、ボクの早い動きがうるさいみたい。



けど、とうとうボクにも気が合う友達ができたんだよ。

「クルミちゃん」っていうマルチーズの男のコ。

いつもパパと一緒で、とっても元気が良いいんだ。

クルミちゃんは、いつも大きくしっぽを振って歩いてるから遠くからでも良くわかる。

何回か会ううちに、ママがそーっとボクの歩みを止めた。



クルミちゃんはボクを見つけると、ますますしっぽを激しく振って急ぎ足で近づいてくるんだ。

ボクも思い切りしっぽを振ってそれに答えてクルミちゃんを待つ。

クルミちゃんがボクのそばに近づいてきたところで、とうとうママがクルミちゃんのそばに行ってもいいよって言ってくれたんだ。



ボクは思い切って、クルミちゃんのおしりのニオイを嗅ぎにかかったんだ。

そうしたら、クルミちゃんは、しっぽを上げてボクにニオイを嗅がせてくれたんだよ。

そうしてクルミちゃんも、ボクのおしりのニオイを嗅ぎにかかる。

ボクはもちろんクルミちゃんが嗅ぎ易いように、しっかりとしっぽを立てたよ。


ね!

これがお友達宣言。

ボクはうれしくて、クルミちゃんの周りをまわる。

クルミちゃんもそれに答えてボクの周りを回り出す。


だから、ボクらのリードは、こんがらがって、二人の飼い主さんは大慌て。絡まったリードを外しにかからなきゃ。



ようやく絡んだリードを外し終わって、もとに戻ると、ママはリードを短く持ってボクの動きを止めたんだ。

クルミちゃんも、飼い主さんに動きをコントロールされたんだよ。



これで、「お友達フェスタ」はおしまいだね。

でもボクは大満足!

ボクは興奮したまま、思わずママを見上げる。

怒られちゃうかな?

でも、ママは良かったね!と笑ってくれたんだ。



ボクは、ママの表情にホッとして、今度はクルミちゃんを見る。

クルミちゃんはまだしっぽを猛然と降って、ボクを見ててくれていた。

口からは赤い舌をちょっと覗かせて、まだ興奮してるカンジ。

ボクは振るのを一旦止めためたしっぽを、クルミちゃんに向かって、また激しく振って見せた。

そして、その場でクルクル回ってうれしさをアピールしたよ。


ママが、ボクのクルクルを制止して、クルミちゃんと飼い主さんにあいさつをする。

「クルミちゃん、ありがとね」

クルミちゃんのパパも

「ポッキー、またな~」

と言って、クルミちゃんを連れて、来た道を引き返していく。

クルミちゃんは、いつものように大きくしっぽを振って歩いていくけど、時々ボクの方を振り返りっている。



「また、クルミちゃんと遊びたいな。」

ボクはクルミちゃんを見送りながら、ママを見上げてそう言った。

ママは「良かったね」とボクを見てそう言って、歯を見せてにっこりを返してれた。


ママとボクも再び歩き始める。

歩きながら、ボクは耳をレーダーのように立てて後ろの方向のクルミちゃんの気配を探した。

ボクは、わずかに残されたクルミちゃんのニオイを胸いっぱいに吸い込んで、ママを見上げながらそれをそっと吐き出した。





今日も最後まで読んで頂きありがとうございます。

感想などお寄せいただけると嬉しいです。

また次回お会いできるのを楽しみにしております。















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