第3話 新しいところに着いたみたい ここは安全か危険か
車は停止した。
でも、キャリ
アケースの中にいるボクにはどんな場所に着いたのかよくわからなかった。
娘さんが、ボクをキャリアケースごと車から降ろし、地面に置いた。
辺りの匂いが変わっている。
「お母さん、その荷物は私が持つよ。母さんはこっち持って。」
「はーい」
二人は、どうやら車に積んである荷物を運び出そうとしているようだった。
それにしても、外って結構寒いんだな。ブルブルっと体が震えた。
ペットショップの中はいつも同じ温度にしてあったから寒さなんて感じなかったけど。
そのとき、ふとこんなことを思い出していた。
ボクがまだ小さいころ、こんな風に車で移動したことがあった。
最初は急にママと引き離されて、車に乗せられて、長い時間、揺られたんだ。
途中でお水はもらえたけど、お腹が空いてきて、寒くて、寂しくて、ほかの仲間も怖がっていた。
そうして、何処かに到着するたび、ご飯をもらってしばらくの間、そこで生活したんだ。
威張って脅かしてくるヤツには、なるべく近づかないようにした。
今回の移動は、今までに比べたら一番短く感じた。
それに、キャリアケースの中だから、誰にも意地悪されることはなかったしね。
思えば、ボクが最後にいたペットショップの店員さんが一番優しかった。
ボクのことを「ポメ」と呼んでは、色んなことを教えてくれた。
飼い主になった人は、素敵な名前をつけてくれることも。
そして、なかなか飼い主が決まらないボクの気持ちを慰めるように、背中をなでてくれた。
他の犬にいじめられると、そいつから離してくれたりもしたっけ。
娘さんがいきなりボクの入ったケースを持ち上げたんだ。
お姉さんとお母さんが、荷物を運び終えたようだった。
よくわからないうちに、ここまで連れて来られちゃったから、あの店員さんにちゃんとサヨナラを言えなかった。
それに、「ポッキー」という素敵な名前をつけてもらったことも伝えたい。だけど、もう会えそうにない。ママと別れたときと同じように。
そんなことを考えていると、次の瞬間、ボクの体は勢いよく宙に浮いた。
大きな四角い建物が見えた。でも、よく見ると同じようなお部屋がたくさん集まってるみたい。
しばらく待っていると、ピンポーンと音がして、扉が開いたようだった。
ボクたちは扉の奥に進んだ。
何だろう。この狭い空間は?
動いているようにも感じる。
やがて移動がスーッと止まった。
扉が開いてボクたちはそこから外へ出た。
カチャリと音がして、お母さんがまた別の扉を開けた。
二人ともあわただしく奥へ入って行った。
そしてボクは床におろされた。
ボクのことは忘れたかのようにあちこち動き回っている。
物が動く音や、水の音も聞こえる。
それに、他の人も何人かいるみたい。
そんな音ひとつひとつが、ボクを攻撃する準備なのではないかと不安に掻き立てられる。
危険を感じたら噛みついて逃げよう!
ボクは、キャリアケースの中でグッと姿勢を低くした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今日ははここまでですね。
ポッキー君。明日は、いよいよ部屋の中へ。
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ポッキー君。明日は、いよいよ部屋の中へ。
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