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第17話 しょうちゃんも検査を受けるの?

ママとしょうちゃんは、最近真剣に話してることがある。

きっと大事な話なんだよね。

ボクはその度に耳をレーダーのように動かして二人の話を聞き逃すまいとする。

だけど、おやつに夢中で聞き逃しちゃうこともあるんだよね。



おやつの時は、大事な話はしないで欲しい。

ボクの事だったら大変だもん。

聞き逃したくないんだ。

せっかくここに慣れてきて安心してるのに、ボクをどこかへ連れて行く相談かも知れないよね。

そしたら、ボクはまた覚悟を決めなければならないんだ。



これまでも、ボクを別のところへ連れて行く時は、店長さんと店員さんが必ず真剣な話をしてたよ。

ここは、ボクをどこにも連れていかないでとアピールしておこう。

ボクは、今、食べてるチーズを急いで飲み込んだ。



ボクら、肉食動物の歯の役割は「引き裂く」こと。

噛むという習性はない。

食べ物を噛まないで飲み込んでも大丈夫なんだ。



ボクは二人の足元で激しくしっぽ振って見せた。

ママは必ずボクを抱っこするはず。

「抱っこがいいの?」

案の定、ママはそう言いいながら、足元のボクを片手で持ち上げて膝の上に置いた。

やったー。これで二人の話が良く聞こえるね。


抱っこしてもらえたら、二人が食べてる物をもらえることもあるからボクはこの手をよく使う。

でもママの膝の上では、テーブルの上が見えない。

ボクはテーブルに両前足をかけて立ち上がり、視線を高くした。

そして何かおいしいものはないか確認した。



おいしいそうな臭いに、ついつい興奮。

自然と呼吸がハアハア荒くなり、しっぽがパワー全開で振られてるのがわかる。

そしてボクは、抱っこをせがんだ目的をすっかり忘れた。



テーブルの上には何もない。

うっそー。

いい匂いがしてるのに。

わー!二人で何か食べたんだね。

ボクは、ママの口元の匂いを確認するために後ろを振り返った。


ママ、なんか食べたでしょ。


ママはボクの気持ちを察してか、ボクを片手で抱いたままキッチンへと向かった。

そうして、おやつの入った箱からジャーキーを1本取り出すと、自分の腰にジャーキーを押し当てて半分に折った。

そしてその半分になったジャーキーをボクの鼻先に差し出した。

ボクは、その臭いを確認してママを見上げる。

「これ、テーブルにあったものじゃないよね。」



「いらないの?」

ここで反応しないと、これさえももらえない。

ボクは大急ぎで、その半分のジャーキーをパクリとくわえた。


食べ物をもらうと、誰かにとられないようにその場を離れたくなってしまう。

これ、なんだろうねぇ。

イヌの習性なのかも。

ボクは体を激しくよじって、ママの抱っこからの解放を要求した。

床に下ろしてもらうや否や、部屋の隅に走った。

そこで、ホッとして、くわえたジャーキーを堪能し始めた。



でも、ボクは食べながらでも、ちゃんと聞き耳は立ててるよ。

食べてる時でも警戒は忘れない。

コレもボクらの本能だよね。



で、二人の話はこうだ。

何でもしょうちゃんは、これから近いうちに、ここからいなくらるらしい。

それはしょうちゃん本人が希望しいて、近いうちにそのための検査があるみたい。

ボクも前に、繁殖用として資格があるか調べられたことがあるけど、そんなカンジだね。



しょうちゃんも厳しい世界に生きてるんだな。

検査に合格して、新しいところに行ったら、ちゃんとご飯がもらえるのかな。

新しい服も、もらえたりするのかな。

ここにいれば、お洋服は買ってもらえないけど、ご飯はもらえるから行かない方がいいんじゃない?

今日生きられたんだから、明日も生きるためには、昨日と同じところにいた方がいい。

これはボクの哲学だ。

新しいところに行くには必ず危険が待ってるんだよ。


ボクの頭にはしょうちゃんが出かけるとき、いつも同じ服しか着ていないことが思い出した。

しょうちゃんはどこかに行くための検査に合格したいみたい。



ボクは繁殖犬になるための検査を受けたわけじゃない。

でも、しょうちゃんはどうしたいかを自分で決めている。

いいような悪いような・・・。

ボクの頭は混乱する、良くわからないけど。




ジャーキーを食べるのに、ボクは少し時間をかけた。

急いで飲み込んで、もう一つおねだりすることもできたけど、ボクの神経はそのことより二人の話の方が大切だった。


しょうちゃんは検査に合格したらここからいなくなるのかも。


ボクのことを連れてこようとママに言ってくれたのはしょうちゃんだ。

ママがそう言ってた。

ペットショップでボクを見た時、「悪魔」みたいでかわいいから、とボクに決めたんだって。

ボクは確かにかわいいからね。

「悪魔」ってかわいい生き物なんだね、きっと!



しょうちゃんはここからいなくなる自分の替わりにボクを連れてきたのかも。

ってことは本気でいなくなるつもり?



ボクは、ジャーキーがいつの間にかなくなってるのに気が付いた。

急いでボクは二人の方に目をやって、大きくひと吠えする。

「しょうちゃん!」

しょうちゃんが行きたいところは、ご飯がちゃんともらえるんだよね。

新しいお洋服も買ってもらえるんだよね。




ボクの声にしょうちゃんは返事した。

「ポッキー、おやつはもうおしまいだよ。」






きょうも、ポッキー物語を最後まで読んで頂きありがとうございます。

また次回ここでお会いできるのを楽しみにしております。











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