ヤジリンが面白いから、解こう
こんにちは。盥です。
ペンシルパズル(以下ペンパ)が大好きです。
大好きゆえ、ペンパの楽しさをもっと色んな人に知ってほしいと思っています。しかし同時に、ペンパの楽しさを知ることのハードルは高いとも感じています。そして、そのハードルをなるべく下げたい!!!!!という欲望がさっき突然生まれました。大好きゆえです。
そんなわけでこの記事では、ペンパを全然知らない初心者の方々に向けて、代表的なペンパの一つであるヤジリンのルールと解き方をゼロから解説しようと思います。がんばります!レッツゴー!
0.はじめに
ゴーの前に、「ペンパとは何か」、「ペンパを解くとは何か」という前提の部分で誤解などあるといけないので、このふたつについて軽く話しておきます。
ペンパ(ペンシルパズル)とは、盤面に「書き込んで解く」パズルのことです。
一番有名なのはクロスワードでしょうか。これは文字を書き込むタイプのペンパになります。
じゃあ他にはどんなものがあるかというと、詳細なルールは省きますが、例えば
盤面を分割するタイプ
マスを塗るタイプ
一周する線を書くタイプ(ヤジリンはこれ)
など、たくさんあります。そして、それぞれのタイプにも超たくさんペンパがあります。しかも、今でも新しいペンパが考案され続けているのです!このことからもわかるように、ペンパ沼は超、超深いんです……
画像に出てきたペンパたちの解説記事もいつか書きたいですね〜
はい、次にペンパを解くとは、基本的には
ことです。若干諸説ある気もしますが、この記事ではこれでいきます。
文の後半は、まあ当たり前のことを言ってます。
太字はどういうことかというと、ペンパは理詰めで解くものだよという意味です。つまり、
ということを暗に示しているのです(例外的な問題もありますが)。一発で正解できる保証があるのは安心ですよね。何かとストレスの多い世の中ですし、こういったオアシスは重要です。
先程同様クロスワードの例をあげるなら、初手でいきなりカギも見ずド真ん中のマスにここはヌかな!とか言って書き込んだ場合、それはただの勘であり、ヌかどうかは全然確定していません。これは理詰めではないですよね。
もっと言えば、そのド真ん中のマスにアからンまですべての文字を書き込んでその全パターンを逐一検証し、最後まで破綻しなかったものをこれが答えだ!!とするような解き方も理詰めのひとつではあるのですが、普通のペンパの問題を解く上ではそんな重労働をする必要はありません。
今回の例なら、カギを見て分かる箇所から埋めていくのが通常の解法です。最近のペンパは、簡単な問題なら慣れれば1桁同士の足し算の暗算くらいの思考量でさくさく解けます。う〜んオアシス。
個人的にはペンパの最大の魅力は、この「理詰めで解けていく」ところ、つまり、ここは絶対こうだという確信とともに一手ずつ進んでいく心地良さにあると思っているので、ぜひそれを感じてもらいたいです!!
1.ヤジリンのルール
つい熱くなって前置きが長くなりました。本題に入ります。
ヤジリンが一周する線を書くタイプのペンパなのはそれとなく触れましたが、それ以外のルールも当然あるので、ここで説明します。
必ずしも解く前に完璧に叩き込んでおく必要はないですし、解いていくうちに自然に覚えられるようなルールなので、気楽に行きましょう♪♪♪
ではまず、ヤジリンの見た目から。
いや、マスも塗るんかい!!?!??!?!??と驚いたヤジリンガチ初見の人がどれくらいいたかは分かりませんが、じつはヤジリンは、「線を書く+マスを塗る」タイプというハーフなのでした。そう聞くとなんとなく難しそうに思えますが、単に線の通らないマスを塗っているだけで、主役は線です。じゃあなんでわざわざ塗るの?という疑問には、解き方を話す時に答えます。
次に、発音について。
僕も正確なことはわからないですが、アクセントの位置はヤだと思われます。「カナブン」とか「マカロン」と同じです。ヤジリン。
さて、それではルールを見ていきましょう。わかりやすいように、その下にもう一度ヤジリンの画像を載せておきます。
これで前半です。後半を読む前にここまでを一旦噛み砕いておく方が混乱が少ないです。下の画像と見比べて、確かにそうなってる!と思ってください。
❹の「矢印の方向」とは、そのマスから盤面の端まで一直線に続いた、幅1マスの範囲のことです。字が多いですが丁寧に二周読めば大体わかるはず。画像と見比べてイメージを固めましょう。
どうでしょうか。前半は解き手が書き込むもの(線と黒マス)に関するルール、後半は盤面に初めからあるもの(矢印付き数字)に関するルールでした(長くしたくなかったので省いたのですが念のため、線は分岐や交差はしません)。
まとめると、矢印付き数字と合うように、一周する線&隣り合わない黒マスを書いて全マス埋めるということです。
黒マスが隣り合わない、というルールが意外と大事です。どれくらい大事かは解き方の章で触れるとして、ルールは理解したから一度問題を解いてみたい!というチャレンジングな人のために、例題を2問用意しました。
勿論この段階ではまだ解けなくてもいいですし、不安な人は飛ばしても大丈夫です。日常生活には盤面に線を引くという場面があまりないので、ここでその感覚を知っておくのもおすすめです。
2.ヤジリンの解き方
さあ解き方です。先程の例題くらいならすんなり解けるように、ヤジリンを解く上での基礎基本の考え方をレクチャーしていきます。それらを駆使して確定する部分をじわじわ書き込んでいくと、いつのまにか全部埋まっている、というのがペンパの解けていく流れであり解き方の方針です。
レクチャーといっても、基本的にペンパの理詰めは「そんなん思い付けねえよ…」みたいなことをバンバン使わせてくるものではないので(よく誤解されますが、めっちゃ数学!みたいな感じもないです)、今から書くことはわりとすんなり頭に入るのではないかと思います。人によっては全部ほぼ自明に思うくらい単純明快なのです。
2-1.黒マスの四方には線が通る
考え方のひとつめは、黒マスに関するものです。
なんと、黒マスの四方には線が通るのです。
…まあ少し考えればわかりますね。つまり、
ということです。ふーん。
なので例えば、
▲こういう時には
▲この黒マス配置で確定して
▲これらのマスに線が通るとわかるわけです
これだけわかったところで何?と思うかもしれませんが、次に紹介する考え方とセットで使うことが多く、その汎用性は鬼高(おにたか)です。
「線が通るマス」を盤面に表現する際は、よく「・」を使うので、これに慣れておきましょう(リンク先では、マスをダブルタップすることで配置できます)。
また、線が通らないマスをわざわざ塗る理由は(恐らく)この考え方のためです。
矢印付き数字が黒マスの数を表している関係上、黒マスから先に決まることが多くあるので、塗る方がわかりやすいのです。
2-2.「・」の二辺が塞がれたら線が確定する
つづいては線に関する考え方です。これはさっきと比べると少し思い付きにくいかもしれません。
線は一周する輪なので、線が一つのマスを通る時はそのマスに「入って、出る」ことになります。
つまり線に通られるマス側の視点だと、上下左右の四辺中二辺を線がまたいでいくわけですね。
▲図です。一見の価値があります
このことから、
という考え方が導かれます。これは画像で見る方が100倍わかりやすいです。
▲ここまではいいですね
▲「・」のマスはそれぞれこうなります
知ってからだと、確かにそう通るしかないように見えるな〜と思います。
「二辺が塞がれている」という状態が理解できたでしょうか。二辺の塞がれ方は、本質的には
の2パターンしかありません。
外周や黒マス、矢印付き数字などによって、「・」のマスから線が進める方向が二つしか残っていないことは非常によくあります。
非常によくある状況に慣れてもらうために、もう一つ例をあげます。
▲2-1で出てきた形です。黒マスは隣り合わないから一個飛ばしで置いて、四方に「・」
▲これらの「・」が二辺を塞がれているので
▲こうなります。すると…
▲この二つの「・」の二辺が塞がれたので
(下方向に線を出すと三叉路ができてしまう)
▲こうなり、同様のプロセスで最上段の二つも…
▲線が引けました
たったひとつの矢印付き数字から、背骨みたいな形の線と黒マスが広範囲に確定しました。これ、結構びっくりじゃないですか?
僕はぽんぽんと黒マスを置くとしゅるしゅる線が発生するこの感覚だけでもう楽しいです。あー今ヤジリン解いてるわーって思います。
今の、3↓の決まり方を試してみたい人は下のリンクからどうぞ。
2-3.小ループ禁
次に紹介する考え方は、よく「小ループ禁」と呼ばれます。簡単な問題なら、ほとんどここまでのみっつの考え方だけで解けると言っていいでしょう。前ふたつの復習もかねて、例題その1を解きながら解説していこうと思います。
お気づきかもしれませんが、この画像に使用されている問題でした。
(一応注記:答え見せちゃっていいの?と思うかもしれませんが、答えを知っているからといってある時点で線や黒マスが確定しているかどうかはわからないので問題ありません。そもそも答えをただ写しても楽しくないですよね)
さあてとっかかりはどこかな〜と見ていくと、
上の方にある2から進展しそうです。つまり、
▲こうなります
「・」を通る線も確定するので、
▲これだけ埋まりますね
ここまでは復習です。ここからまだもう少し進むのですが、どう考えるのかというと、
▲注目してほしいマスを着色しました
青いマスは、四辺中二辺が塞がっています。今、そこに線が「入って」きた状態なので、「出る」ことのできる辺は残りひとつだけです。線は、その方向に行かざるを得ません。
まあ難しく言いましたが、上の青マスなら「この線は次、右に行くしかない」というのは見ればわかると思います。
また、これは最初からですが、赤いマスは三辺が塞がっています。入っても出られないので、このマスには線が通れません。よって、黒マスです。こういうことは中盤以降にもわりと起きます。
▲青マスのほうで使った考え方を連続で使用することで、ここまで進みました。じわじわ
さて、ここからは下を攻めていきます。
0が指す方向には、黒マスがひとつも入りません。線が通らないマスがひとつもないということは、全マス線が通るわけです。「・」が大胆にダダダッと打てます。
▲線が確定する「・」がありますね〜
▲確定させました
これによってまた新たに確定する箇所があります。どこかわかりますか?
▲そう、黄色くしたマスです
このマスの右方向に黒マスが1個必要なので、空いている唯一のマスを黒く塗るしかないですね。また、青マスに入った線が下辺から出てくるのは大丈夫でしょうか。
確定が確定を呼んで、問題もいよいよ終盤です。
▲1→の黒マスを塗ってからの流れも含めるとこんな感じになります
ここで、小ループ禁の考え方の出番が来ました。
現在の状況はこんな感じです。
ここで、こう引いちゃうとだめだよね、という線があります。
▲この灰色の二本です
これを引いてしまうと、線が勝手にそこで一周し、全体をひとつの輪にすることが不可能になります。俺達は全員で輪になるために頑張ってるのによォ!という他の線の怒号が聞こえますね。
この、
が小ループ禁です。奥が深いですね〜
で、これを使うともう解けます。
▲この緑のマスに注目
小ループ禁より、さっきの灰色の線を引かないようにすると、緑のマスにある線端の伸びる方向が確定します。
あとは楽勝です。GG!!!!!!!
▲正解しました
確定する最低限の部分を書き込んでいただけだったのに、いつの間にかルールを全て満たす盤面が完成、問題を解くことができました。
以上が、ヤジリンの初歩的な考え方です。これ以外にも難しい考え方はあるのですが、この記事の目標は「簡単な問題ならさくさく解けるようになること」なので触れません。それに考え方を自力で導く楽しみを損なうことにもなるからです。
では最後に、例題その2を解いて終わりましょう。
解説は最低限にとどめ、画像を中心に見ていくことにします。
▲こんな問題でした
とっかかりは、みっつ並んだ1↓です。
左図をご覧ください。
矢印付き数字の指す範囲は盤面の端まででした。なので一番下の1↓が指す範囲にある黒マスで、上ふたつの1↓に必要な黒マスも足ります。つまり間のマスにはこれ以上黒マスは入らないので、そこに線が引かれております。そこから決まる黒マスを補完したのが右図です。
▲あとはここまで一気に進みます
右下で、三辺を塞がれたマスが黒マスになる現象が起きていますね。
▲左が現在の様子です
ここで小ループ禁です。ちょっとだけ応用かな?紫色のマスにあるふたつの線端はどちらも、内側に折れた時点で、もう片方の線端と繋がるように伸びるしかなくなってしまいます(右図)。これを踏まえれば、線端の進路が確定します。
それにより上部で発生しかける小ループを回避しようとすると、この考え方の醍醐味ともいえるダイナミックな展開が訪れてラストを飾ります。
▲楽しい!!!!!
どうだったでしょうか。初めは解けなかったけど、記事を読んだら太刀打ちできるようになった!という進研ゼミの広告みたいな人が少しでも現れてくれたら嬉しいです。
「フ、簡単だな」と思った人も「ぐえー、難しかった…」と思った人も、慣れればこれくらいの難易度ならすいすい解けるようになるので、ヤジリンが持つ独特の楽しさにやみつきになってもらえたら嬉しいし、欲を言えばこれをきっかけに他のぺンパにも興味を持ってほしい!と思います!
3.おわりに
長くて拙い文章をここまで読んでくださりありがとうございました。
最後に、もっとヤジリンを解きたくなった人向けに、ヤジリンが無数に投稿されているサイトとヤジリンが無数に掲載されている本を紹介します。
サイト→Puzzle Square JP
国内最大級のペンシルパズルの投稿サイト。
無料で解けるペンパの問題が18000問以上、ヤジリンは2800問以上もある(2021年12月現在)が、全体的に中級者以上向けで例題くらいの難易度の問題は少ない
本→ペンシルパズル選書 ヤジリン
ヤジリンを生んだパズル誌『パズル通信ニコリ』と同じ会社が出版している、ヤジリンの問題だけを集めた本。大きめの問題も載っていて嬉しいし、難易度の上限がネットよりはるかに低いので、初心者にはこちらがおすすめ
ペンシルパズル Advent Calendar 2021 五日目の記事として書かせていただきました。
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